第178話 裏側からだと透けて見える
「さすがにこれ以上は無理かな」
『たくさんですね!』
バックパックにもインベにもいっぱいいっぱい。
STRがあるから重いって感じはあんまりしないけど、バックパック分の重さでバランスが……
「ワフッ!」
「お、ルピ、さんきゅ」
バイコビットも久々な感じ。ちゃんと2匹狩ってくるルピは優秀。
なんだけど……解体は後にして、手で持って帰るか。
「よっし、帰ろうか」
「ワフン」
戻って送る分のドライパプを作って、手紙書いて送るとちょうどいい時間ぐらい?
洞窟の扉を閉め、古代遺跡を戻っていくんだけど……
「なんかこう、台車とか作った方がいいのかな?」
『あ、そうですね。北側で育てた野菜とかも運びますし、平らな通路を行き来するだけでも楽になりそうです』
「だよな」
ちょっと落ち着いたら台車作ろう。
木製でいいかな? 重くて潰れるようなら鉄製で作り直せばいいか。
『ショウ君、採掘ポイントを確認しませんか?』
「あ、
『はい!』
「ルピ、ちょっと待ってて」
「ワフン」
バックパックとバイコビットを置いて階段を降りる。っと、あかりを出して、上の方を照らしてもらうと……
「うーん、復活してないな」
『かなり時間がかかるんでしょうか?』
「まあ、希少度から考えるとそうなのかな。本土でもたまに採掘できたりするんだっけ?」
『はい』
この島から
「まあ、また1週間後ぐらいに見にくるか」
『ですね』
走って戻ってバックパックを背負い直す。
ここに入ってる分のパプの実は今日のうちに加工してしまいたい。
『ショウ君、そろそろ曜日ごとでやることを決めませんか?』
「そうだなあ。その方がいいかも……」
あれやってこれやってが行き当たりばったりすぎる気はしてる。で、新たな発見があって、またやること増えての繰り返し。
それはそれで楽しいんだけど、家もできたし、島の探索もある程度進んだし、週に二日三日はやること固定化してもいい気がする。
『北側と家のそばの畑仕事、南側をぐるっと回って採集と採掘、この二つは曜日を決めてもいいんじゃないかと』
「南側をぐるっとは結構いろいろありそうだけど、1日で足りるかな?」
『そこはその日の気分でどうですか? 採集、採掘、海や川の魚採りのどれかです』
「なるほど」
フォレビットとかバイコビットはルピが狩ってくれるし、グレイディアなりランジボアは見つけたら、罠に掛かってたらかな。
砂浜も潮の満ち引き次第なところあるからタイミング合えば。
フラワートラウトは釣りでもいいし、かご罠はもう少し頑丈なのにして、水かさが増えても流れないようにすればいいか。
「うん、良さそう。ちょっと来週からそんな感じにしてみようか」
『はい!』
………
……
…
せっせとパプの実を『とろとろ干しパプ』にしてると、料理スキルが8に上がった。
嬉しいっちゃ嬉しいんだけど、素のスキルレベルは木工と料理がトップっていうのはどうなんだろう……
「〜〜〜♪」
「スウィー、たくさんあるからいいけど今はちょっと待って。これ贈答用だから」
「〜〜〜!?」
そう釘を刺すと「なんで!?」みたいな顔に。
ベル部長が王国でも流行ってるとか言ってたし、大したものじゃないはずだけど、美味しいと言って食べてくれるんなら贈らない理由はない。
正直、多少の見返りがあればなーっていう打算もあるし……
「で、あとは手紙を書かないと」
『ワールドクエストの話は聞きますか?』
「うーん……。俺は関係ないし、ネタバレ先に聞くみたいで嫌だな」
『そうですね』
普通のプレイヤーが今ごろ「どうにかして竜族とコンタクトする」のに必死になってるところで、既に連絡を取れてる状態でもあれなのに……
「こっちの要望って言っても、見つけた魔導具の使用許可と、島か古代遺跡の地図ぐらい?」
『1階の転移魔法陣と対になってる方の話を書きませんか?』
「そうだった。その対になってる方をもらえるといいんだけどな」
とろとろ干しパプの対価としては高すぎるよな。
この先一年分の代金みたいな交渉はできないかな。他にも新作の甘味を融通しますよとかで……
『あとメートル原器の魔導具とかもらえないでしょうか? この島や古代遺跡の地図を作るためにということで』
「あるとめっちゃ嬉しいなあ。それで地図スキル取れるようになるんだっけ?」
『はい。斥候をやる人はみなさん取ってるそうです』
地図スキルが高ければ高いほど、ちゃんとした地図を描けるってことで、世界地図を作ろうって人たちもいるんだとか。
伊能忠敬だっけ? なんか、そんな感じっぽい……
「じゃ、優先はメートル原器の魔導具の方でいいかな? 1階の転移魔法陣の対になってる方は『もしあれば』ぐらいで」
『いいと思います。対になってる方は見つかってないかもですし』
「あ、そうか」
あの記録とアージェンタさんの話からすると、暴走の中心部は大惨事だった可能性が高そう。
瓦礫に埋もれて土の下とかそういう? いや、でも爆発したとかじゃないっぽいし、そのまま残ってる可能性もあるか。
「ま、あったらいいなぐらいで書くよ」
『はい』
「で、スウィー。食べきれないからって、余ったの持ってかないように。贈答用だって言ったよな?」
そんなうるうるした目で見てもダメだから。
もうちょっと女王っぽい振る舞いをしてくれよ……
***
「ただいま」
『お帰りなさい』
バーチャル部室で迎えてくれたのはミオンだけでなく、
「おかえり! 兄上!」
「連日ごめんなさいね」
ログアウトする前に呼び出しがっていういつものやつ。
「なんかあったんです?」
「アミエラ領の古代遺跡の話。遺跡の手前にある放棄した場所にNPCのドワーフたちが現れたのよ……」
「『え?』」
現れたのは十数人。
勝手に放棄した場所に住み着こうというわけでもないらしい。
「その一団のリーダー、グラド殿から丁重な挨拶と説明があっての。曰く、鉱石が掘れる古代遺跡があると聞いて来たそうで、彼らにも使わせて欲しいということらしい」
「はあ。でも、あそこって……」
「もちろん、私たちが有翼人たちから言われた条件や、その後の交渉のことも話したのだけど、そこは自分たちの責任でやるって言うのよ」
なんだろ。すごくいい話に思えるんだけど……
『それに問題が?』
「ワールドクエストに関連があると思わぬか?」
「ああ、そりゃ、あるだろうなあ。そのドワーフたちに竜族の話もしたのか? 有翼人のバックについてるとかいう……」
「もちろんしたぞ。だが、彼らは特にそれを恐れておらんようでな」
このゲームのドラゴンは『聡明で温和だけど怒らせると怖い』方っぽいし、怒られるとしたら有翼人の方って思ってるとかかな?
いや、これって、アージェンタさんが密かに手を回した可能性……
「ワールドクエストに島は関係ないけど、気になることがあったら教えてちょうだい」
「りょっす」
うん、黙ってよう。
内緒だって約束したし……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます