第156話 地下深くに眠らぬ者

「じゃ、開けるよ」


『はい。気をつけてくださいね』


 頷いてから扉に手を触れ、解錠コード『4725』でロックを解除。

 前回の帰り、開けっ放しにしといたらスケルトンが出てくるかもってことで、ちゃんと閉めなおしたんだけど……


「いないか」


「ワフ」


 ルピが大丈夫と一声。

 確かに気配感知にも変な感じはしない。


「〜〜〜♪」


「はいはい」


 左肩のスウィーが「ゴーゴー!」って感じで前進指示。

 俺をスーパーロボットか何かだと思ってないか、こいつ……


「あかりを」


 光の精霊にいつもの自動追尾な照明をお願いしてから前進開始。

 スケルトンの骨とか無くなってるな……

 普通のゲームならそうかって感じだけど、IROだとなんか微妙に気になるところ。


「よし、今日は下へ」


 真っ直ぐの通路を進み、右手に上り階段、左手に下り階段。

 上り階段の先は昨日行って、いろいろあって、また近いうちに行きたいところだけど。


 ゆっくり、慎重に階段を降りていくが、特におかしな気配は無し。

 上りの時と同じく1階分を降りたところで、西へとまっすぐ通路が延びていて……


「こっちもかー」


『エレベーターですね』


「こっちはさらに下へなんだろうなあ」


 上に行く分には平気だったけど、下に行くのはなんか気が重い。

 微妙に嫌な予感がしなくもなく……アンデッドって土の下から出てくるイメージがあるし。


「ワフ!」


「〜〜〜!」


「よし、行くか!」


 悩んでても何も解決しないし、さっさと行って何があるか確認しよう。

 一つだけあるボタンをポチッと押すと、上にあるのと同じように音がして開く。


 扉が開いてモンスターが! みたいなお約束はなく、エレベーター内は照明もあって明るい。で、やっぱりボタンは下へ行くやつだけか。


『ショウ君、また後ろが開くかもなので』


「あ、そうだった」


 どっちが開くかわからないし、横向いておくのが正解?

 左右のどっちかが開いたら笑うんだけど……


 チーン プシュゥゥ


 という音がして、普通に入ってきた側の扉が開いた。なんだよ……


「ん? なんか通路じゃなくて部屋か?」


 光の精霊の明かりに照らされたのは部屋の一部っぽい。

 そして……


「ウウゥゥ……」


「〜〜〜!」


 ルピが唸り、スウィーがフードの中へと隠れる。


「あかりを!」


 光の精霊に照明を強くしてもらうと、そこに照らし出されたのは大量のスケルトン……

 こっちにもいたのか!


『ショウ君!』


「加護を!」


 首にかかってる精霊石から放たれる淡い光。

 あれ? 緑だけでなく薄い青の光? って水の精霊のおかげか。MP大丈夫だよな?

 まあ、ただのスケルトンなら雑魚なので作業なんだけど……


「ワフ!」


「ああ、そうだな」


 油断するなとルピに怒られて気合を入れなおしたところに、


「キイィィィ!」


「うわっ!」


 ゴースト!?

 襲ってきたそれに思わず剣鉈を横に振るう。


「オォォ……」


 何もなかったかのように剣鉈が通り抜けたが、ゴーストは断末魔の声をあげ、光の粒となって消える。

 効いたみたいで良かったけど、これって加護があったからだよな。


 ガシャガシャと近づいてくるスケルトンたち、それをすり抜けて襲いかかってくるゴーストたちを倒し続ける。


『ショウ君、MP大丈夫ですか?』


「うん。まだ平気」


 多分、この前作った魔狼の牙のペンダントのおかげだろう。

 回復が早くなったわけじゃないけど、最大MPが増えたおかげで今のところは大丈夫そう。


「いつまで続くんだこれ……」


『撤退も考えてくださいね!』


「りょ」


 無限湧きとか洒落にならないんだけど。

 そう思ったあたりで、ようやっと近づいてくるゴーストがいなくなり、スケルトンの足音も少なくなってきた。


「もうちょっとのはず!」


「ワフ!」


 気配感知に引っかかる嫌な感じはほぼ無くなってきてて……ん?


「ルピ、気をつけろ!」


 何か今までよりずっと濃い気配が近づいてくる。

 そして、聞こえてくる重い足音……


「マジかよ……」


 見た目にわかる一回り大きいスケルトン。元の身長が3m弱ありそうな……巨人族のスケルトンなのか?

 手には長剣を持ち、身に着けているのはフルプレート……


【スケルトンジェネラル】

『スケルトンナイトの上位種。生前の卓越した剣技は肉を失ったことによって衰えている』


「おいおい、一足飛びでジェネラルはひどくね?」


 ブォン!


「くっ!」


 振り下ろされた長剣を避けて後ずさると、石畳と衝突した長剣から火花が散る。

 剣技が衰えてるおかげか、剣筋が全く見えないとかじゃなくて良かった。


『ショウ君、逃げた方が!』


「大丈夫、まだやれる。ルピ、頼む」


「ウォン!」


 マナエイドを発動したルピからMPをもらってほぼ全快に。

 相手が一体なら、これで十分戦えるはず。あとは……


 ガキッィン!


 袈裟がけの一撃を円盾で受け流す。


「はっ!」


 スケジェネが剣鉈の一撃を受け止めようとし、そのまま左手を砕かれる。

 こいつ、元々は盾持ってたのか? 手の動きが完全にそれだったんだけど……


「やべっ!」


 手を砕かれても全く怯まず、そのまま右手の長剣を横凪してくる。

 咄嗟に構えた円盾がそれをまともに受け止め……


 ガゴッ!


 そのまま吹っ飛ばされ、ごろごろと転がってようやっと止まる。


『ショウ君!』


「力強すぎだろ……」


 本当に痛いわけじゃないけど、吹っ飛ばされるとびっくりして「痛い」って思っちゃうな。


「ガウッ!」


「〜〜〜!」


 ルピがスケジェネの足を狙って何度かヒットアンドウェイを繰り返し、スウィーがそれを応援……って吹っ飛ばされた時に飛び出したのか!


「ルピ! スウィー!」


 慌てて起き上がって二人を呼び戻す。

 あいつさえ倒せればだし、あれを試すチャンスか。


 ゆっくりとこちらを向き直って、大股で近づいてくるスケジェネ。

 左腕の肘から先がないせいか、心なしか右に傾いてる……


「ワフ!」


「〜〜〜」


 ルピが戻り、スウィーがフードに隠れたのを確認。

 インベから魔晶石を取り出して左手に握る。

 しっかりとやつの歩幅を確認して……


「<掘削>!」


 踏み出した右足を下ろす場所に30cm四方、深さ1mほどの穴をあける。

 スケジェネが右足を踏み外してつんのめり、右手の長剣を手放して手をつくと、その頭部が目の前に……


「終わりっ!」


 <急所攻撃>で剣鉈を振り下ろすと頭部が砕かれ、全ての骨が接続を失ったようにガラガラと崩れ落ちた。


「ふう……」


【キャラクターレベルが上がりました!】

【盾スキルのレベルが上がりました!】

【精霊魔法スキルのレベルが上がりました!】


「ワフ!」


「〜〜〜♪」


『やりましたね!』


「うん。またちょっとズルだけど、勝ったから良しってことで」


 手に持った魔晶石はせっかく溜めてあったMPを全部使い切ったっぽい。魔狼の牙も多分空になってるかな、これ。

 前にキャラレベ上がった時のBP、結局、隠密のこともあって割り振ってなかったし、MP重視でINT多めにしないとだな……

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