第151話 精霊の加護とは?

「ふう、こんなもんかな?」


『はい。ずいぶん綺麗になりましたよ』


 古代遺跡から出た場所。多分、展望台だったところまで戻ってきて草刈りを。

 剣鉈にしたおかげで、雑草を刈るのも楽ちんなんだけど、本格的にってなるとクワを持ってきた方がいいよな。


「〜〜〜♪」


「ワフ〜」


 二人とも刈った草をせっせと運んでくれてて、その姿がまた可愛い。

 ルピは母親のことも引きずってる感じはなくて、ちょっとホッとする……


「さて、どこにするかな。あんまり崖崩れの場所に近いのもな」


『ルピちゃんに聞くのはどうですか?』


「あ、そっか。ルピ〜?」


 嬉しそうにかけてきてお座り。


「お母さん、どこがいいかな?」


「ワフ」


 なるほど。南端で島を一望できる場所か。

 ルピが前足で土を掘り始めたのでお手伝い。

 掘削の魔法を使ってもいいんだろうけど、ちゃんと手で掘った方がいいよな。


「じゃ、安らかに……」


「ワフ……」


 一つ一つ骨を置いて、そっと土を被せる。

 間違えて踏んでしまわないように、最後に盛り土を。


「〜〜〜♪」


「ありがとう」


 スウィーがいつの間にか探してきた白い花をそのたもとに添えてくれる。

 あの洞窟から出るまで、ずっと寝てたと思ってたんだけど、実はちゃんと聞いてたのか……


 手を合わせて拝むんだけど、こっちって宗教は別だよな。

 ルピのマナガルムは蒼空の女神様の使いだって言ってたし、そこへ行ったに違いない。


「ワフ」


「ああ、帰ろうか」


 4時はもう回ってると思うし、そろそろ落ちて夕飯の準備をしよう。

 拡幅した抜け道から戻って……大丈夫かなこれ? 念のため転圧の魔法かけておくかな。


 ごそごそと穴を潜って古代遺跡の中に戻ってくる。

 帰りはあのエレベーターで帰れるんだよな?


『この崩れた先には、ここからしか行けないんでしょうか?』


「あー、そうだった。結局、制御室ってところに行けてないんだよな。でも、さすがにこの崩れたのをどうにかは……今は無理だと思う」


 土木スキルが上がったりしたらどうにかなるのかな。

 いや、二次災害になったりしたら、誰も助けてくれないわけで……


『他のルートを探した方がいい気がします』


「かな。最悪、展望台の方からあたりをつけて掘削していけば、崩落現場の向こう側に出れるかもだけど、他にもまだ行ける場所あるし」


 とりあえず、他に行ける場所がなくなったら考えよう……


 ………

 ……

 …


***


 今日の夕飯はポークチャップ。

 簡単に言うと『ケチャップ味のポークソテー』って感じかな。


「うむうむ、美味!」


「そりゃ良かった。ちゃんとキャベツも食えよ」


「わかっておる」


 あぐあぐと美味そうに食ってくれるのはいいんだけど、ケチャップソースが口の周りについてて中3には見えない……


「そいや、昼のうちに古代遺跡に再チャレンジしたのか?」


「それが、メンバーがうまく集まらんでのう……」


 美姫の話だと、今日はレオナ様がいないのでなしだったらしい。

 なんか、フルダイブ格ゲーの大会予選があって、そっちに出てるんだとか。


「毒の粉とかの対策は?」


「それものう……。ゴルドお姉様が忙しいようで、ヒーラーが足らんのだ」


「あらら」


「5月の連休中ともなれば、沖縄は観光客も多いそうでな」


 ため息一つ、コンソメスープを飲む美姫。

 民宿を経営してるって話だし、連休は稼ぎどきだよな。


「白銀の館に他にヒーラー……シーズンさんがヒーラーだったよな?」


「姉上に連れ回されておって、今は王都のクエストを片っ端からやっておるようだの……」


 真白姉……


「あ、いいんちょ……ポリーさんは?」


「む? ポリー殿を参加させるのは良いが、それが対策になるのか?」


「いや、精霊の加護って毒の粉は防げそうな気がしたんだけどな」


 今回は豚ロースで作ったけど、ヒレで作ってもいいかもな。ミオンにご馳走するときはヒレにするか。

 ……ん?


「どした?」


「精霊の加護とはなんだ?」


「え? 精霊の加護もらうとバフかかるじゃん。今日、光の精霊と樹の精霊のバフもらってアンデッド楽に倒せたぞ」


 キャベツの千切りも、ポークチャップのタレとマヨネーズが混ざってなかなかいい感じ。

 と、美姫が急にご飯をかっこみ始める。


「どした?」


「あにょうえあ、ああかしとうじょかくがたらう!」


「……言いたいことはなんとなくわかったから、落ち着いて食え」


***


「ばわっす」


『ショウ君』


「また、やら……すごいことを見つけたそうね」


 午後7時半。

 いつもより早いんだけど、ミオンがいつものように出迎えてくれ、その向かいには半目のベル部長。


「兄上! 早う動画を見せよ!」


 セス美姫が自分の席へとダッシュしてせがむのは、


「ミオン。今日、スケルトンと戦った部分、二人に見せてあげてくれる?」


『はい』


 お昼のアーカイブを取り出し、例の『解錠コード』の扉を開けるところから再生開始。

 スウィーに指摘されて、精霊石に助力を願うと、淡い緑の光が全身を覆う。

 戦闘自体は単調という感じだけど、こう見るとルピが的確に俺をサポートしてくれてたんだな。


『最後までスキップしますね』


 ミオンがそう言って戦闘終了まではスキップ。

 最後に俺がステータスを確認し、精霊の加護が表示されてるところで停止してくれた。


「って感じですね」


 あ、ベル部長、フリーズしてる。

 セス美姫はというと「うーむ」と唸って考え中。


「精霊の加護ってそんな珍しいもんです? 光の精霊も樹の精霊もエルフなら持ってそうなんですけど」


 身近なとこだといいんちょがそうだし。


「……少なくとも私は見たことないわよ」


「え?」


 フリーズから復活したベル部長がジト目でそう告げる。


『気づいてる人がいない?』


「そうよの。さらに二つ以上の精霊の組み合わせが必要かもしれぬ」


 とセス。

 ああ、一種類の精霊だと無理ってことか。

 二種類以上持ってる人もいるけど、加護っていう使い方に気づいてないか。


「これは検証が必要よの。まず、兄上は光と樹の精霊の加護がかかっておって、アンデッドに対して効果があるのは間違いなかろう。

 もう一つは消費MPよの。兄上のあのマントがあって維持できておる可能性が高い」


『ショウ君のマントはすごいですもんね』


「確かにアレがないとキツいと思う」


 よくよく考えたら、精霊が張り切りすぎて俺がMP枯渇してダウンしてた可能性もあったのか。気をつけないとだけど……


「いずれにしても、精霊の加護も精霊によって効果が違いそうな気がするわね。そうであった方が自然だと思うわ」


「うむ。幸いなことに、ポリー殿は兄上と同じ精霊を使えるのでな。検証に協力してもらおうぞ」


「ええ、そうね」


 じゃ、あとはいいんちょに任せちゃっていいかな。

 検証結果だけ教えてもらうことにしよう。


『同じじゃないですよ。ショウ君はこの後、水の精霊も使えるようになりましたから』


 あ、そうだった……

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