第152話 上限突破とは?

『他の道を見に行かないんですか?』


「うん、今日はね。その前にやっときたいことがいくつか……」


 リアル夕飯がポークだったので、ゲーム内の夕飯はチキン、パーピジョンで。

 キトプクサを挟んだネギマ、いくらでも食べられるよな、これ。


「ごちそうさま」


「ワフン」


 さて、思い立った時にやっとかないとだよな。


「ルピ、ちょっとお母さんの形見、預けてくれるか?」


「ワフ」


 お座りして首のポーチをどうぞと差し出してくれる。


『あ、ルピちゃんのためにネックレスを先に作るんですね』


「うん。せっかくだし、あの魔銀ミスリルを使おうかと思って」


『なるほどです!』


 希少な魔銀ミスリルだけど、アクセサリに使うなら量も少なくて済むし、何より軽い方がいい。


「〜〜〜♪」


「ワフ!」


 ちょうどスウィーとフェアリーたちがやってきて、今から南西の森へと遊びに行くんだろう。


「よし、行こうか」


 ………

 ……

 …


『グローブも作るんですか?』


「うん。今日、クリムゾンエイプを十数匹撃ち落としたんだけど、あれ指が辛くて……」


『あ、そうですよね』


 正直、辛いを超えて痛かった。

 さすがに打てなくなるほどでもなかったけど、あの倍の数がいたらと思うとかなり嫌になるぐらいには。


「ナットもちゃんとグローブをつけてたし、装備品としてちゃんとあるんだろうなって、今ごろになって気づいたよ」


 素手で持つ方がフィット感があっていいんだけど、モンスターと戦う時は手のガードも必須だろうし、早いうちに作っておいた方がいいだろう。


『素材は何を使うんですか?』


「レッドアーマーベアの革がまだ少しあったからそれかな」


『でも、鍛冶場で作るんです?』


「うん。先にルピと俺のペンダントを作りたいし、こっちにはグローブのサンプルがあるから」


 鍛治場に入って最初に手に取るのは、鍛治用の耐熱グローブ。


『なるほどです!』


「まあ、こんなにゴツいグローブにするつもりはないけど、参考にできる物があった方が多分捗ると思う」


 盾や弓を持つ左手と、剣鉈を持ったり矢を番える右手で、ちょっと作りも変えたいところ。

 いい感じのグローブを作って、ちょっと流行らせたい気がしなくもない、かな?


 ………

 ……

 …


「え……、これってまた『やらかし』?」


【魔狼の牙のペンダント】

魔銀ミスリルと幻獣マナガルムの牙でできたペンダント。マナを保持する力に優れる。最大MP+183』


『す・ご・い、ですよ』


「あ、うん……」


 MP+183って魔晶石(中)一個分ぐらいだっけ? それをこのペンダント一つで持てるって。

 これが島のストーリーに沿ってるんだとしたら、この装備が必要なレベルの敵がいるってことだよな……


『ルピちゃんもMPが増えると、マナエイドもすごくなりそうですね』


「よし、もう一個作って良い方をルピに渡そう」


 壊れ性能っぽいのは今さら考えてもしょうがない。しょうもないのができるよりはよっぽどいいんだし。

 もう一つの牙を採寸して、同じようにホルダーを作成する。


【鍛治スキルのレベルが上がりました!】


 あとは牙をきっちりはめた後に、こぼれ落ちないようにガードを溶着させ、ランジボアの革紐を編んで通して出来上がり。


【細工スキルのレベルが上がりました!】


 どうかな?


【魔狼の牙のペンダント】

魔銀ミスリルと幻獣マナガルムの牙でできたペンダント。マナを保持する力に優れる。最大MP+187』


「うん。やっぱり牙と魔銀ミスリルの組み合わせがすごいんだな、これ」


『ショウ君の鍛治スキルや細工スキルもすごいからだと思うんですけど』


「うーん、白銀の館には俺よりスキルレベル高い人もいそうだしなあ」


 師匠なんか陶工スキルが9になったらしくて、生産系スキルMAX一番乗りになるのではって話らしい。さすが師匠。


「ワフ!」


「ルピおかえり。ちょうど良かった」


 スウィーやフェアリーたちを送ってきたのか、ダッシュで駆けてきた。

 俺が作業してたのを見て、ちゃんと直前で止まってお座りする賢さ。


「これ、俺とお揃いな」


 ポーチを外して魔狼の牙のペンダントをかけてあげる。

 俺はさらに光・樹・水の精霊石もぶら下がってるそれを身につけて、これでおそろに。


「ワフ〜」


「あはは、くすぐったいって」


 大喜びでジャレついてきたルピを見ると、ホント、作って良かったな。


『私とのお揃いも忘れないでくださいね』


「はい」


 忘れないように手続きしておこう……


 ………

 ……

 …


「よし、こっちも完成」


【赤鎧熊の良質なグローブ】

『レッドアーマーベアの革から作られたグローブ。しなやかさと柔軟性を持つ良品。

 防御力+8。気配遮断+1』


 うん、またかって感じ。


『すごいですね。今もう最大だったと思うんですけど、それを装備するとどうなるんでしょう?』


「そいやそうだ。さっそく装備……の前に、ちょっと確認」


 MPを消費する作業でない分には、マントは外してインベに放り込んである。

 つまり、今はブーツだけ補正がかかってるので、


「ブーツだけだと、気配遮断のスキルレベルは8。素が7だから+1されてだよな」


『そこにマントを羽織ると+2ですよね』


「うん。マントを羽織ると……上がった。気配遮断のスキルレベルはMAXって表示になってるね」


『はい』


「ここで、グローブをはめると……」


【ワールド初のスキルレベル上限突破者が現れました!】


【ワールド初のスキルレベル上限突破(ALL):5SPを獲得しました】

【ワールド初のスキルレベル上限突破(気配遮断):3SPを獲得しました】

【隠密スキルが獲得可能になりました】


「あ……」


『おめでとうございます!』


「はは……。ミオンごめん、ちょっとフォーラム見てきてくれる?」


『はい!』


 スキルレベルがMAXの10だと突破はしてなくて、11なら突破してる判定なのかよ!

 最大になった時に何も出なかったから完全に油断してた……


「ワフ?」


「ルピはいいこだよな」


 とりあえずルピをモフって癒されよう。

 それと、隠密スキルてのも気になる。

 どれだ……ってキャラレベル上がったのにBP振ってないままだな。いや、それは良くて……


「あった。隠密スキル、必要SP9ってことはレアスキルか」


 今の残りSPがさっきの褒賞で14に増えたんだけど、ここで9を使って取るかは微妙な線。

 そもそも隠密って言葉のイメージからして、人の多いところで役に立ちそうな雰囲気だから、俺がここで取って意味あるのかなっていう。

 またスウィーに人のいる場所に連れて行かれたりされたら考えよう……

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