第143話 実践、土木魔法!
肩の力を抜いて、深呼吸を一つ。
初めて使う魔法はどれくらいMP消費するかわからないのがなあ。
IRO、変なところにこだわりあるよな。
「じゃ、やってみるか」
『はい』
「<
側溝予定の場所に『これくらい』って感じのイメージで新たな魔法、掘削の魔法を掛けると……
「おお、すごっ!」
『すごいです!』
そのサイズに地面が掘削され、取り除かれた土が周りに積まれた。
消費MPは石壁と同じぐらいかな? 多分、俺の体と同じ体積分を掘削して100ちょいは持って行かれる気がする。
「これ、土間の柱立てる前に知ってれば……」
基礎埋めるための穴掘り、めっちゃ楽だった気がするな。
『ショウ君、これって石や岩にもできるんですか?』
「一応、そう書いてはあったけど、硬いほどMP消費するっぽい。あと、鉄とか金属とかにやると危ないらしいよ。MP枯渇するかもって」
『それって……中に金属が埋まってたら怖いですね』
「あ、そうかも……」
やってることは『土を削って解して外に出す』なんだろうけど、削ったり解したりのところに金属が入ってるとまずいとか?
まあ、しっかり調査してからやれってことなのかな。
『気をつけてくださいね?』
「うん、まあMP回復の時間も必要だし、ある程度のサイズを掘削して、出てきた土を避けて、また掘削してみたいな感じで進めるよ」
まずは外に出た土を避ける。これ、後で家庭菜園に使うか。
で、続きの掘削の前にもう一つ試しておかないと。
「ふう……。<
その魔法とともに、足元にズシという感じの重低音が響く。
『え?』
「ぱっと見だとわかんないかも。えーっとね」
しゃがみこんで掘った溝に顔を寄せる。
で、その側面を軽く叩いてみると……
「すげー、想像以上にカチコチで岩みたいになってる。機械よりもすごいんじゃないか、これ」
『ショウ君、どういうことですか?』
「ごめんごめん。削った後の土とかって、そのままだと崩れやすいんだけど、叩いて空気を抜いて密着させると固くなるんだよ。それを更にすごくした感じかな」
これもまあ土木スキル的には基本的なことなのかな?
本当はもっと科学的な根拠があって成立してるはずで、土の粒子と水分量がいい感じでないとダメだったはず。
『なるほどです。この前、ノームさんたちがやってた精霊魔法も同じでしょうか?』
「ああ、あれか! 確かにそうかも。っていうか、ツルハシで掘るのが異様に早いのも、精霊魔法で掘削と同じ効果が出てたのか?」
『小さいのにすごかったですもんね』
うーむ、精霊魔法侮り難し。
それでいて消費MPも少ないんだもんなあ。
「まあ、土の精霊石もいつかは探さないとだよな。……もう見つかってたりする?」
『土の精霊石はノームさんからもらえることがあるそうですよ』
「あー、うん、まあ、そうだよな。っていうか、いいんちょはもらえそうな気がする」
この島にもノーム……どこか探せばいないかな?
あ、でも、クッキー作る材料がない……
『あと風の精霊さんは条件が全くわからないままで、火の精霊さんについては存在するかどうかもわからない感じですね』
「さんきゅ」
火の精霊っていうとサラマンダーだけど、IROなら妖精になるのかな。人型なのかトカゲなのか気になるところ。
この島って火山島だし、火口付近に行けばいたりするかな? ちょっと怖いけど……
「じゃ、時間まで側溝作るよ」
『はい』
………
……
…
『ショウ君、もうすぐ5時です』
「おっと、ありがと。もうちょいだけど、しょうがないか」
土間の調理台から続く側溝は、山肌に沿って泉の手前ぐらいまで到達。
土木スキルが早々に3になり、元素魔法スキルは7に上昇。
ここらで1m四方の浄化槽をってところだけど、タイムアップか。
『続きは夜ですね』
「うん。あとは浄化槽と泉へ繋ぐとこだけだし、1時間もあれば終わると思う。住んでるのが俺だけだし、汚水っていうほどのものも出ないと思うけど」
料理した時のあれこれや、皮のなめし処理をした後のパプの果汁ぐらい? そもそもトイレの必要性がないからなあ……
プラスチック製品とか合成洗剤とかもないし、まあ、気分的な問題かな。あの泉、綺麗だったし。
「ワフッ!」
「お、ルピ。スウィーを送ってきたの?」
「ワフン」
ドヤ顔を思わず撫で回すと、嬉しそうに尻尾を振る。
そういや、ルピのポーチももうちょっと可愛いものにしてあげたほうがいいかな……
***
今日の夕飯は鰹のたたき。
帰りにちょっとスーパーに寄ったら、いい感じの初鰹があったので思わず。
明日は休みなので、ニンニクスライスも挟みつつ、ポン酢でさっぱりと。
「ほうほう、掘削に転圧とな。実に土木向きの魔法だが、それ以外の攻撃魔法の類はないのか?」
「あるぞ。地面から突き出す土槍に、足を拘束する石鎖……は妨害系か。あと、ちょっと洒落にならんのが一つ」
ガツンとくるニンニクを、ネギ、みょうが、青じそが和らげつつ、初鰹のあっさりとした旨味。ご飯が進む。
「どういうものなのだ?」
「落石」
「……まさかメテオか?」
「それは隕石だろ。単純に相手の頭上に石を出して自然落下させる」
もちろん、MP消費を多くすれば、その分大きな石というか岩が落とせるやばいやつ。
さすがに試すのは躊躇われるのでやってないけど。
「ふーむ、それなら石壁の応用でできそうなものだがのう」
そう言いつつ、ガッツリと二切れに薬味をたんまり乗せる美姫。
俺も最初はそう思ったんだけど、実はからくりがある。
「実は石壁や土壁には安全装置が入ってるんだよ。あまり遠くに出せない。真下に自分がいると出せない。下に空間がありすぎると出せない。この3つかな」
「ほほう!」
応用魔法学<地>の本によると、落石の魔法はそのうちの『真下に自分がいると出せない』って安全装置だけ残してあるらしい。
「面白いのう。魔法に安全装置が組み込まれておるとは」
「想像なんだけど、火球なんかも自分の近くで爆発しないようにとかなってるんじゃないのか?」
「確かにの。味方がたまたま魔術士の前を横切って、フレンドリーファイヤーからの味方全滅は洒落にならん。いや、それを狙った悪質行為もあるやもしれんしのう……」
わざと射線に入って攻撃喰らってからのPKか。
IROはそのへんの判定とかどうなってるんだろうな。
「掘削にしても、相手が踏み出す足元にかけるだけで結構危ないしな。盛る方と違って、確実に転ぶだろうし」
「いや、それよりも城壁や街壁に穴を開けてしまえるのではないか?」
「あー……。なんとなく、魔術士ギルドとかに置いてない理由がわかってきたな」
「そうよのう」
こんなの一般に流通してたら、魔術士がやばくなりすぎる。
俺の場合、これに気配遮断MAXが加わるし……いやいや、そもそも島から出るつもりはないから関係なし!
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