第142話 扉の向こうへの準備
「ワフッ!」
外の明かりが見えてきたところで走り出すルピ。
こっちの出たところにある草原がセーフゾーンなのは変わらずなので、特にやばいモンスターも湧いてないかな?
「〜〜〜♪」
スウィーは草原に出たところで肩から離れ、色とりどりに咲いている花の周りをふらふらと。実にフェアリーっぽい感じ。
「スウィーが女王って言われてもなあ……」
『でも、神樹の
「まあ……気にしたら負けか」
とりあえずはポーションの材料、コプティや仙人笹をせっせと採集。
「ワフッ」
「お、ルディッシュ。ありがとな、ルピ」
テスト期間の間は採集もほとんどしてないし、食材も揃えていかないとだよな。
………
……
…
「フギャアッ!」
「ふう……」
久しぶりのまともな戦闘はランジボアが相手。
突進してきたところを石壁で止めて、手斧でバッサリで倒せたんだけど、
「……小盾作ろうと思って忘れてた」
『そうですね。今日の夜に作ってみたらどうですか? あの扉の向こうに行くにしても、もう少し準備した方がいい気がします』
「確かに。小盾と斧も……この手斧、枝を払ったりするのはいいんだけど、戦闘には使いづらいんだよな」
なんだろう。こう、斧で受けるってあんまりやらないよな?
剣とか刀だったら、刃の部分で受け流す的な動作があるけど、斧はなあ。
『別の武器を作ってみるとかどうですか?』
「別の武器か。ミオンは何が良いと思う?」
『斧よりは剣の方がかっこいいかなって。あ、今でもかっこいいですからね!?』
あ、うん。
でも、俺もこれで小盾持ったらドワーフとかバイキングっぽい。
どっちもかっこいいけど、ちょっと今の俺じゃ横幅が足りないし……
「でも、剣も長いやつはちょっと違う気がするんだよな」
『そうなんですか?』
「なんか西洋の剣って切るよりは叩いて砕くみたいな感じっぽいよ」
ナットが持ってる両手剣とか、あれで枝打ちとかはできないだろうし。
となると……
「鉈って短剣扱いでいいのかな?」
『なた?』
「あ、うん、ごめん。えっと……」
なんとも説明しづらくてどうしようと思ってたら、
『あ、これですか。すごく物騒な感じですね。……あの、ホラー映画が出てきたんですけど』
「あー、画像検索したんだ。ホラー映画のやつは西洋の鉈だから。日本の鉈はなんかこう……でっかい菜切り包丁みたいなやつ」
『なるほど、こっちですね。これもすごく物騒な気がします……』
物騒じゃない刃物って? って気もするけど、鉈が危ない刃物なのは間違いない。
「長さ的には短剣な気がするんだよな」
『でも、これだと突いたり、投げたりは今のナイフと違いますね』
「ああ、そっか。じゃ、剣鉈の方がいいのかな」
剣鉈は文化包丁って感じだけど、たしか
『けんなた……、これは短剣に見えます。ちょっと調べてきてもいいですか?』
「あ、うん、お願い」
てか、剣スキルと短剣スキルの違いってなんなんだろ。
長さかな? ナットの大剣って剣スキルじゃなくて大剣スキル? 剣スキルから派生して大剣、細剣みたいなのもありそうだしな。
「ワフワフ」
ん? ルピが何か見つけたのか、ここほれワンワンを……
おおお、これは!
【仙人筍】
『仙人竹の筍。
料理:小さいものはえぐみも少なく美味』
これは嬉しい! 炒め物に入れてもいいし、煮物もいいなあ。
ともかく、スコップで周りを掘ってから採集が正解だよな。
『ショウ君、わかりました。片手で効果的に投げられるものが短剣に属するのではという話でした』
「ああ、なるほど! じゃ、剣鉈も多分短剣かな。ナイフ投げはできると思う」
ダガーよりもSTRは必要になるだろうけど、そこはもう上げてあるから大丈夫のはず。
……剣鉈投げると武器なくなるから、最悪の時だけだろうけど。
「よっと、これ!」
『え? たけのこですか?』
「そそ。炒め物とか美味しいと思うよ」
『うう、ずるいです……』
メンマとか作れるといいんだけど、あれも醤油が必要だった記憶。
やっぱり、真面目に醤油作りを考えないとダメかな……
………
……
…
「ただいま」
「ワフン」
あれやこれや採集したし、ランジボアも仕留めて肉やら皮やらゲットしたし、鍛治場も採掘場も変わりないのを確認してほっと一息。
ルピも久々のお散歩にロフトベッドの下の寝床へと。
そしてもう一人……
「〜〜〜」
ルピのお腹を枕にして大の字のスウィー。
別にいいんだけど、本格的にここに住むつもりなら、つる籠でも編んであげた方がいいのかな。
「食材はこれでまたしばらくは大丈夫かな。海の幸もまた取りに行きたいけど、まずは剣鉈と小盾か……」
『短剣スキルなら、今の斧よりもずっといい物ができそうですね』
「だといいなあ。あの扉の向こうって、確実に次のエリアだよね」
『そう思います』
となると、今いる場所よりも強いモンスターが出てくるはず。
問題はどんなモンスターが出てくるかだけど……
「今って3時過ぎぐらいだよな。あと、やらなきゃいけないことってなんだっけ……」
『土間からの排水の話が途中でしたし、応用魔法学<地>と土木スキルが気になります』
「あ、それだ」
ゲームは1日1時間だったせいで、結局、側溝作りは後回しにしてたんだった。
せっかくそれ向きの魔法を習得したし、さっそく試さないと。
今のところ、野菜くずとか魚のわたとかは、別に穴を掘って捨てている。
あれ? 今まで普通に捌いてたけど、あれって解体すれば良かったっていう……いやいや、そうすると頭とか骨とか消えちゃうからもったいないな。
「コンポストとか作った方がいいのかな?」
『はい?』
「あ、いや、生ゴミを処理して肥料にするのって、ありなのかなとか」
『?』
ミオンがよくわかってないっぽいけど、俺もバッチリ知ってるわけでもないからなあ。
ばあちゃんがやってたのを知ってたぐらいで、うまく行くかどうか微妙……
「ああ、そうか。聞けばいいんだ」
『えっと、どなたにですか?』
「確か『白銀の館』に農業と園芸が得意な……ディ?」
『ディマリアさんですね』
ああ、その人だ。
「リアルでも詳しいんじゃないかなって。ゲーム内で肥料が使えるようになれば、農作物ももっと良くなるかもだし」
『すごいです! 部長に知らせないとですね!』
いや、なんかもうやってる気がするから、どういう感じなのか聞きたいだけなんだけど……
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