第132話 ルピ
「ひとまずこんな感じで大丈夫?」
「〜〜〜♪」
南西の森でフェアリーにいろいろと新たな食材を教えてもらい、そのお礼というか、グリーンベリーの若木を盆地の泉の近くに植え替えた。
【農耕スキルのレベルが上がりました!】
【園芸スキルのレベルが上がりました!】
「おわ、両方か」
『おめでとうございます』
「さんきゅ。でも、これスキルの違いってなんだろな……」
勝手なイメージだけど、農耕は食用、園芸は鑑賞用の植物を扱うんだと思ってたけど……グリーンベリーは両方だから?
「ちょっと水やりしとくか……」
浄水の魔法を唱えようとしたところで、偉そうなフェアリーが目の前に飛んできてバッテンを作る。
『魔法で出した水はダメなんでしょうか?』
「ダメってことはないと思うんだよな。普通に飲めるんだし」
どういうつもりなんだろうと思ってると、偉そうなフェアリーが何やら他のフェアリーに指示を出してるっぽい。
泉の方に3人のフェアリーが飛んでいき、その手前にまた3人、さらに手前に3人。バケツリレーでもするのかと思ったら……
「おお〜!」
『すごいです!』
手を繋いで輪になった真ん中を、湧き上がった泉の水が生き物のようにくぐって行く。
最後に、偉そうなフェアリーと他2人が水を散らして、グリーンベリーの若木にしっかりと水が行き渡る。
「〜〜〜♪」
「あ、うん、すごいのはわかったから」
わざわざ目の前でドヤ顔しなくても、ちゃんと褒めるって。
それよりも、だ。
「今のって水の精霊魔法?」
「〜〜〜♪」
ドヤ顔のまま俺の肩に座って、うんうんと頷く偉そうなの。
「むう、ちょっと羨ましいな……」
『そうなんです? 元素魔法で水を出せてますけど』
「出せるんだけど、流水にならないから洗い物がね」
『なるほどです』
じゃーっと流れてる水で洗いたいっていうだけ。
水道というか蛇口っぽいものを、どうにか再現したいところ。
「うーん、俺にも使える?」
インベから極小の魔晶石を取り出して、偉そうなのに見せるが……首を横に振られた。
教えてくれないというよりは、無理って感じなのかな。
『ショウ君、水の精霊の獲得方法は判明してますけど……』
「あ、そうなんだ? ごめん、教えて」
『川の水源地に近いところまで行く必要があるそうです。そこに魔晶石を浸せばいいそうですよ』
「あー、そういう……ってことは、この泉は違うってことになるんだけど……水源地ってどこだ?」
「ワフッ」
「え? ルピ?」
ルピが見上げるのは島の中央。
斜面を登った先がどうなってるのかはわからないけど、あそこに水源地があるってことか……ん?
「ルピってこの崖の上から? ひょっとして、あのアーマーベアと一緒に転がり落ちてきたとか……」
「ワフ」
真面目な顔でそう答えるルピ。マジか……
そりゃ怪我もするだろうし、アーマーベアの方も実は弱ってて、だから早めに形態変化したのか?
『そこに行かないとですね』
「うん。もう少ししたら行こうな」
「ワフッ!」
具体的には中間テストが終わるまで待ってもらうってことで……
………
……
…
「今って10時前ぐらい?」
『はい。9時50分です』
「りょ」
思い出した時にやらないとまた忘れちゃうし、今のうちにやらないと。
「明かりを」
光の精霊に明かりを出してもらい、1階へと降りる。
『食材の整理ですか?』
「それもあるけど本をね」
魔導保存庫を開けて本を取り出し、肉やら肉やら肉やら……あと野菜も入れる。これは明日のライブの飯テロで使う予定。
「えーっと……これだ!」
『図鑑ですか?』
「そそ。これにルピのこと載ってないかなって」
何冊かある図鑑のうちの一つ。
動物について書かれてるっぽいそれを確保。かなり分厚い。
『なるほどです。ショウ君、その前にスキルを取らないとですよ?』
「あ、そうだった。えっと……」
スキル一覧を開いて検索……あった!
「動物学スキル取れる!」
『やりましたね!』
必要SP4だけど、さっそくポチっと取得!
さて、どうかな?
「ワフ?」
隣にお座りしてるルピが「何?」って顔で返事してくれるんだけど。
「あれ? 【狼?】のままだ……」
『やっぱりちゃんと読まないとダメでしょうか?』
「あ、まあ、そうか。上がってちゃんと読むよ」
他の本はちゃんとキャビネットに戻し、図鑑を持って上がる。
椅子に座り、テーブルに置いた本をそっと開くと、名前順にこの世界の動物についての説明が簡単な挿絵とともに書かれていて興味深い。
「結構あるんだけど、どうやってルピを探せばいいんだろ」
『前から見ていくしかないですかね?』
「まあ、そうか。とりあえず挿絵を頼りに見ていくかな……」
細かい解説は後回し。
パラパラとページをめくって、狼っぽい動物を探していく。
「やっぱりドラゴンとかいるんだ……」
それも結構な種類がいるっぽい?
気になるところだけど、今は保留……
【動物学スキルのレベルが上がりました!】
「はやっ!」
『ざっと見ていくだけでも上がるんですね』
上がったことで何のメリットがあるんだろ。
あ、これ……は違うな。アッシュウルフは普通に灰色の狼と。
「うーん、もう終わりそうなんだけど……あ!」
『見つけました?』
「これじゃないかな。『マナガルム』
えーっと……幻獣……蒼空の女神の従者。狼の王……」
ルピを改めて鑑定。
【マナガルム:ルピ:親愛:自由行動】
『幻獣マナガルム。別名マーナガルム。黒地毛に金毛を持ち成体は体長1mを超える。
古代より蒼空の女神の従者として仕えた狼。全ての狼を従える狼の王。
アーツ:<マナエイド><ハウリング><急所攻撃>』
「……」
俺の足元に寝転がってるルピを撫でると、スッとお座りして尻尾を振る。
さらに頭をもしゃもしゃと撫でると、嬉しそうに目を細めるルピ。かわいい。
体長1m超えてもかわいいままなんだろうな。
『内緒にします?』
「どうしよ……」
多分、ルピってめちゃくちゃ強くなるよな、これ。
他のプレイヤーが「優遇しすぎ!」とか言い出すパターンな気がするんだけど。
そもそも、「そんなバランスで大丈夫か?」っていう……
『隠してもいずれ視聴者さんが気づきそうな気がします』
「そうなんだよなあ」
動物学スキルがアンコモンで習得に4SP必要。しかも本が必要なわけだし、今のところ取ってる人がほとんどいないんだろう。
でも、この先、SPが余って取る人も出てくるはずで……
「話すか。あとあとになってバレるよりもだよな」
『はい。どのタイミングかはショウ君に任せます』
「おけ。あとフェアリーも来るかもしれないし、その時はあっち行ったこと以外は話すよ」
ノームとか他の種族が登場し始めてるし、多分、今がバラすタイミングだよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます