第131話 詳しい人に聞いてみる

 南西側の森に出たところのセーフゾーンに来るのも久しぶり?

 そういえば、コプティのヒールポーションをまだ作ってないし、これもやることリストに追加しないと。


「〜〜〜♪」


 フェアリーたちはあっちこっちをふらふらと飛び回ってるんだけど、一定以上の距離には離れない感じ?


「ワフ」


 ルピが小声でそう伝え、俺の方を見た後に茂みの向こうの方に目をやる。

 何かがいるってことだろうけど……


「あれか……」


『鹿ですね』


 30m以上離れてて、ここから弓で当たるかは微妙。

 向こうを向いているのでもう少し近づけるはずだけど……


「ここでちょっと待っててくれ」


 フェアリーたちに小声で告げ、気配遮断をしっかり掛けつつ前進。

 グレイディアまで20mぐらい。もう少し近づけそうな気もするけど、最初に見つけた時は逃げられた苦い思い出が。

 まあ、やってみるか……

 静かに短弓を構え、骨鏃の矢を番える。


 ヒュッ!


 スキルアシストの効果で少し上めに放たれた矢が、緩やかに下降しつつ飛んでいって、グレイディアの胴体に刺さった。

 次の瞬間、いつの間にか近寄っていたルピが襲いかかって引きずり倒す。


「ナイス!」


 ダッシュで駆け寄って、ルピの手伝いを少ししただけで、


【弓スキルのレベルが上がりました!】


 ふう、上手く行って良かった。


『やりましたね』


「うん。結構、近寄れたのが良かったのかな?」


 ミオンに答えつつ、グレイディアを解体。

 皮が一番嬉しいかな。きっちり洗ってベッドに敷こう。

 あ、肉は保存庫に移して、保存庫の本はキャビネットに戻さないと。


『ショウ君、気配遮断って今どれくらいですか?』


「え? 確か、この前あっちに行った時に上がった気がするから……いくつだ?」


 ステータスを開いてみると、


――――――――――――――――――――

Name:ショウ Lv.12

HP:366 MP:360


STR:46 DEX:40 AGI:30

INT:32 VIT:32 LUK:10


元素魔法:5 短剣:6 解体:6

鑑定:5 投擲:5 木工:7

石工:6 気配感知:7 気配遮断:MAX

応急手当:1 調薬:3 採集:6

料理:6 調教:5 罠作成:6

罠設置・解除:7 罠発見:3

陶工:5 素材加工:7 裁縫:7

弓:3 鍛治:5 採掘:4 細工:5

精霊魔法:3 斧:5 伐採:6

水泳:3 潜水:3 大工:6

農耕:2 園芸:2


残りSP:28 残りBP:0

島民:14名

――――――――――――――――――――


『すごいです。最大になってますよ』


「え、なんで最大……。ああ、マントとブーツのおかげか!」


 素で7あって、マントで+2、ブーツで+1の合計10か。

 そう考えると、いい素材で大工道具とか作れば、大工スキルにプラス補正掛かったりするのかもだよな……


『もっと近づけたんでしょうか?』


「どうだろ。グレイディアも気配感知みたいなのを持ってるだろうし、それと相殺してとかじゃないかな?」


『なるほどです』


 気配遮断が最大レベルとはいえ、視界に映らないように隠れてたらだよな。

 目の前まで行っても気づかれないとかだったら、確実に壊れスキルだし……

 おっと、それはそれとして、


「おーい、もう大丈夫!」


 茂みの向こうで待ってたフェアリーたちに手を振ると、なかなかのスピードで飛んできて、そのまま奥にあったグリーンベリーの木へと。

 グレイディアも食べてたみたいだし、この森の人気ナンバーワン?


「ワフ」


「ん、ルピにも」


 さっきのグレイディアの肉をスライスしてご褒美に。

 矢が刺さったまま逃げられたら、追いつけたかどうか微妙だったし、せっかく作った矢がもったいない。


「さて、あとはレクソン、ルディッシュ、チャガタケあたりを……」


「〜〜〜」


「え? 何?」


 フェアリーたちが揃って、これを見ろ的な身振り手振りの先には……1mにも満たない若木。いや、さらにその枝先?


「あー、新芽が食われてるのか」


『さっきのグレイディアですか?』


「だね。実じゃなくて、新芽を食べてたのか。なんか、リアルでも鹿が増えすぎて山から木が無くなるとかあるらしいよ」


『そうなんですね』


 新芽だけじゃなくて、冬には樹皮も食べたりするっていうもんな。

 もちろん、その食われた木は枯れてしまい、土壌を支えるものが無くなって、地滑りを起こしたりするらしい。


「えっと、これをどうすりゃいいの?」


「〜〜〜」


 言葉が通じないせいか——こっちの言葉はわかってる?——ジェスチャーを始めるフェアリーたち。

 この若木を? 引っこ抜く? え? ああ、ちゃんと根から掘り出して? 運ぶ?


「ああ、はいはい。これを持ち帰って、山小屋がある盆地の方に植え替えろってか」


「〜〜〜♪」


『いいですね。あそこなら鹿もいませんし、増やせばフェアリーさんたちも遠出しなくて良くなりますし』


 俺もちょっと薬味が欲しい時に取りに行けるのは嬉しいかな。

 というか、他の野菜も持ち帰って植え替えて増やすか。いや、それよりも……


「ちょっと待って。若木を植え替えるのはやるけど、他にも木の実だったり野菜だったりとか知らない?」


 何度かあちこち回って鑑定してきたけど、やっぱり見落としがある気がしてる。

 特に見たことがない草木に関しては、鑑定そのものをせずに素通りしてそうなんだよな。


『他にも採れるものが?』


「うん。フェアリーの方がよく知ってそうな気がするから、教えてもらえないかなって」


 俺の言葉に円陣を組んで話し合い? を始めるフェアリーたち。

 しばらく様子を見ていると、どうやら心当たりがある1人がすいーっと先導してくれるようなので、その後をついていく。


「え? これ?」


 ぱっと見、ただの草に見えるんだけど、とにかく鑑定。


【ペリルセンス】

『小さい白い花と粒の実をつける多年草植物。

 料理:実は調味料として利用可能。素材加工:実を絞ることで油になる』


「あ! 荏胡麻えごまか!」


『ごまですか?』


「あー、うん。ごまでいいのかな」


 荏胡麻とごまは違うはずだけど、多分、一緒にされてる感じ?

 どっちにしても、調味料にごまが増えるし、ごま油が確保できれば揚げ物だって可能になるはず!


「〜〜〜」


「あ、うんうん、それね」


 茎と葉の根元に濃い緑の袋があり、それを割ると……


「ほら、これ」


『ごまです!』


「ありがとう。他にもあったら教えて」


 そうお願いすると、今度は別のフェアリーが「はいっ!」って感じで手をあげて、また先導してくれる。

 これは……なんだか一気に食材が増えそうな予感!

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