第126話 そろそろ仕上げ

「さて、今日の天気は……良かった。晴れてる!」


「ワフ!」


 あの後、真白姉は美姫のレクチャーを受けつつ、IROのキャラメイクをするそうで、そっちは任せた状態。

 部長はまだ少し宿題が残ってるとかで……

 ヤタ先生のチェックも通った明日公開予定の動画は、ミオンが予約投稿して準備完了。


『ショウ君、カードの登録は済ませました?』


「うん。帰ってすぐやったよ」


 今はオフレコってことで、今日の話をしながら小川の方へと足を運ぶ。

 久々にフラワートラウトを食べたくなったので、仕掛けてあったかご罠を確認に。


『登録のやり方は知ってたんですか?』


「あー、うん。ほら、こっちの家は今、俺が家計を管理してるから……」


 俺と美姫しかいないので、当然、買い出しなりなんなりする俺が財布を握ってる形。

 美姫でも良さそうなもんだけど、あいつまだ中学生だしな……


『なるほどです。母から確認しておくようにと。わからなかったら、椿さんに聞こうかと思ってました』


「そうだよな。っていうか、俺に預けて良かったの? ミオンが持ってて、必要なときに使えば良くない?」


『私は利用者登録もしてないですよ。そのカードの口座のお金を出し入れできるのは、ショウ君の他には母と椿さんだけです』


「……」


 どんだけ信用してくれてるんだよって話なんだけど、まあ、借入ができるわけでもないからいいのか。

 配信の売上の入金は『月末で精算して翌月末』らしいので今のところ0円。

 収益化後の配信で、30万ぐらい入るだろうなってのはわかってるんだけど……ちょっと怖い。


「よっと!」


 結んでいたロープを引っ張ってかご罠を引き上げると、結構な重さが手に伝わる。

 ロープ、もう少し太いのにしないとまずいかもな、これ。


「お、6匹!」


「ワフ!」


【罠設置・解除スキルのレベルが上がりました!】


 うわ、このレベルアップ、上がりやすくなったせい?

 あ、再計算されてるって話だったから、もう上がる直前だったのかな。


『おめでとうございます』


「さんきゅ。まあ、最近はルピがいてくれるから罠もそんなにだけど」


「ワフン」


『今日は焼き魚ですね』


「うん。大根おろしも手に入ったしね」


 焼きたてホクホクの白身にどっさりと大根——ルディッシュおろしを掛けよう。

 その上からグリーンベリーをギュッと絞れば……やっぱ醤油欲しいなあ……


 ………

 ……

 …


「ん、ルピは遊びに行っていいよ」


「ワフ!」


 フラワートラウトを美味しくいただいた後は、いよいよ山小屋リフォームの仕上げに。

 地下から盆地に出たところで、ルピはフェアリーたちのところに遊びに行かせた。

 これから、ガッツリと屋根を張る作業の予定で、できれば今日のうちに終わらせたい。


『いよいよ屋根ですけど、気をつけてくださいね?』


「りょ。一番危ないのは最初だからね。慎重にやるよ」


 とはいえ、インベントリがあるおかげで、屋根板を抱えて登り降りとかしなくていいのは楽ちん。

 さて、頑張りますか!


 ………

 ……

 …


「ふう、屋根板終了」


『お疲れ様です」


 2時間弱の作業で、まずは屋根板の張り替え完了。

 片流れ屋根で良かった。切妻屋根とかだったら、もっと面倒だったに違いない。

 大工スキルも上がって6になったことだし、いったん降りてちょっと休憩かな。


『この後はどうするんです? 前と同じで樹皮を敷き詰める感じですか?』


「ううん、石壁の魔法で屋根を敷くつもり。でも、その前に……」


 インベから取り出したのは、サローンリザードの革。


「これで屋根板の隙間を塞いでからかな。雨漏り嫌だしね」


『すごいです!』


 さすがに屋根全体を覆うほどの皮は用意できなかったので、継ぎ目にテープのように貼っていく予定。

 その上から、瓦がわりの石壁を敷き詰めていけば完成のはず。


「今何時くらい?」


『10時前です』


 あと1時間。いや、もうちょいかかるかな?

 まあ、黙々と作業を続けてれば終わるんだけど……


「ミオン、退屈してない?」


『全然ですよ。ショウ君を見てるの楽しいです』


「あ、うん。じゃ、もうちょっと頑張って、屋根は今日終わらせるよ」


『はい!』


 ………

 ……

 …


「完成!!」


『おめでとうございます!』


「いやー、思った以上に綺麗にできたな」


 瓦を薄い石壁で作ってみたのは、見た目的には大成功。

 問題は雨が結構降った時にどうなるかだよな。前に敷き詰められてた樹皮で瓦代わりになってたなら、そんなめちゃくちゃ降ったりはしないんだろうと思うけど。

 ま、雨漏りするようなら、ちゃんとした瓦を焼くか。陶工でできる気がするし。


「ワフ!」


「〜〜〜♪」


「お、ルピおかえり。フェアリーもいるんだ」


 玄関下にやってきたルピとフェアリーが興味深そうに見上げている。

 後は玄関と勝手口の扉だけど、まずはちょっと休憩かな。


「よっと」


 降りて草むらに腰をおろすと、すかさずルピが足の間に収まってくる。で、フェアリーは肩に。


「もうちょいって感じだけど……」


『もう11時をまわってますよ』


「あ、ごめん。じゃ、片付けしないと」


 連休中だし続けてもいい気がするけど、ミオンを付き合わせるのは申し訳ない感じ。

 あと、真白姉がちゃんとIRO始められたのか気になる……


「明日は玄関と勝手口の扉。あとは窓かな」


『中にあった家具はどうしますか?』


「あー、さすがにベッドは廃棄して新しくするよ。机と椅子は……鑑定してなかったし、その結果次第かな?」


 ベッドはさすがに再利用はパス。解体して焚き付けにでもしよう。

 あとは、石窯もこっちに作り直し。どうせなら、もっと大きな窯にしておきたい。


『石窯ができればお引っ越しですね』


「うん。ってその前に土間の屋根も作んなきゃだった」


 外で食事ができるようにテーブルも置きたいし、排水周りも考えないと……明日かな。


「ルピ、帰ろうか」


「ワフン」


 そう言って立ち上がると、フェアリーがすいっと離れて「またね」って感じで手を振って去っていった。

 すっかり仲良くなったみたいで何より。


***


「ただいま」


『おかえりなさい』


 真白姉と美姫がいるかもと、部室に戻ってきたものの、いるのはミオンだけ。

 ベル部長も……3人ともまだIROやってるっぽいな。


「まあ、待たなくてもいいか。どうだったかは明日の朝にでも聞くかな」


『ショウ君。チャンネルの名前、このどっちかにしようと思うんですけど』


「あ、助かるよ。えーっと……」


 ミオンが渡してくれたテキストに目を通すとそこには、


【ショウ&ミオンのゲーム探検記】

【ミオンの二人のんびりショウタイム】


「うう、悩ましい。どっちも良い……」


『はい』


「んー、でも1番だと、ミオンの服が今ので固定になっちゃいそうなんだよな」


 今まで『ゲームミステリーハンター』って言っちゃってるけど、それぐらいならネタで済むだろうし、衣装を変えて別のっていうのはありかなとか。


『他の服装ですか?』


「うん。今日着てた服とか可愛かったし」


『は、はい……』


 今思えば、スーツ姿は割とありだったのかな。実況だし。

 さすがにアイドルっぽいフリフリは……あれはあれで良かったけど……

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