第118話 防衛成功と終了待ち

「ばわっす」


『ショウ君』


 早めの夕飯、早めのログイン。

 美姫のためであって、俺は別に急がないので、ちゃんと洗い物をして7時過ぎに部室へ。


「今日ってベル部長のライブの日だよね。いつから開始するんだろ」


 まずはミオンの隣に座って気になってたことを。美姫の話だと、まだはっきりとは決めてないらしい。

 いつもは8時か8時半スタートだけど、今日はそれだと襲撃の途中からって感じになりそうだし。


『さっきIROに行かれる前に聞きました。襲撃が始まったら開始するそうです。今は予定地のままですし、まだ始まってないと思います』


「なるほど」


 時間的にはそろそろ始まっても良さそうだけど……


「まあ、あっちばっかり気にしてもしょうがないか」


『はい。それよりも今日公開になったレッドアーマーベア戦の動画、すごい勢いで再生されてましたよ』


「あ、忘れてた……ごめん」


 よそ見してて、足元の石につまづいたみたいで恥ずかしい。

 ミオンが見せてくれた動画を見ると、もう50,000再生を超えてるし。

 プレイヤー視聴者は今日とかずっとIROで防衛戦してるはずなのになあ。


「変なコメントはなさそう、かな」


『はい。みなさん、ショウ君を褒めてます』


「ははは……」


 苦し紛れだったし、褒められることでもないと思うんだけどな。


「んじゃ、俺もIRO行くよ」


『はい。何かあったら伝えますね』


 昼と同じくレオナ様のライブも伝えてくれるとのことだし、俺はまた聞きながら作業にしよう。


***


『あ、始まりました』


「おおー、人は揃ってそう?」


『はい、昼間よりもずっとたくさんですね。ナットさんもいますよ』


 人数足りてるなら大丈夫かな。

 そういや、セス美姫は「これがラストであろう」とか言ってたけど……


「あ」


『どうしました?』


「あ、いや、ワールドクエストの達成率って俺も見れるんだったと思って」


 メニュを開いて確認すると……


「94%だって。やっぱりこれで終わる気がするな」


『勝って終わって欲しいですね。あ、モンスターが近づいて来ます』


 ミオンの実況を聞きながら、俺は俺で作業開始。

 まずは一番奥の壁からだけど、ここには勝手口をつける予定なので、間柱を追加予定。

 梁との接続には鍛治で作ったL字金具の出番。


『普通のゴブリンやオークたちですね。また数が増えてますけど』


「どっちも?」


『はい。レオナさんのところもですね』


 ミオンも特に慌ててないし大丈夫なんだろうな。

 玄関扉の両脇にあった間柱は、蹴破った時に破損したので取り替え予定で外してある。それと同じ長さで作れば問題ないはずっと。


 実況を聞きつつ、木材から間柱を作る作業。4本作ってはめてみて、微調整したのちに金具と釘でしっかりと固定。

 それぞれの扉は後で別途作ることにして壁板を優先。あ、木窓も後回しだな。


 ………

 ……

 …


「よしよし。それっぽくなってきた」


 間柱の交換と追加を終え、奥の壁板も勝手口部分以外全部貼り終えた。

 1階へ降りる階段がある場所が、足場を置きづらくて面倒だったけど、そこ以外はサクサクと。大工レベルのおかげっぽい。


『裏口は外でお料理するためですか?』


「そそ。玄関の石階段は正面に降りるけど、勝手口の階段は土間の方に降りる向きにするつもり」


 そろそろ、部屋ができた後のことも考えていかないとだよな。

 石窯は当然土間に置くんだけど、あんまり家の近くには置きたくない。火事が怖いし。


『あっ!』


「ん? 何かあった!?」


『モンスターが一斉に動き始めました。先頭のオークが大きな木の盾を構えてて……奥の方には強そうなゴブリンやオークが結構な数見えます』


「うわ、マジか……」


 組織的な行動ってことは、当然、指揮官クラスがいるってことだよな。


『矢と魔法を掻い潜って、壁に取り付きそうです……』


「え……」


 大丈夫なのか? ってか、セスやナットはどうするつもりなんだ?


『あ、ノームさんたちが……すごいです!』


「え? え!? 何が!?」


 ああもう、いったんログアウトして見に行こうかな。


『ごめんなさい。ノームさんたちの精霊魔法で土壁ができて、そこを乗り越えようとした敵に矢や魔法が』


「おお!」


『セスちゃんが土壁の場所を指示してるみたいですね。あ、ナットさんたちが迎撃に出ました』


 それを聞いてほっと一安心。

 セスが想定してたことなら、その時の対処もしっかり考えてるはず。

 ナットがいてくれれば、セスの智略を活かすこともできるし。


『あ、向こうからも魔法が! 大丈夫でした!』


「え? 魔法をどうやって?」


『部長が魔法障壁っていうのを出して、途中で全部迎撃しちゃいました』


「すげえ。ってか、そんな魔法あるんだ……」


 ミオンの話だと、なんか透けた壁みたいなのが出て、飛んできた火球を途中で迎撃&爆発させたらしい。

 当然、そのあたりにいたザコモンスターに被害が出るので一石二鳥。話を聞く分には、めちゃくちゃ優秀なカウンターマジックな気がする。


『押し返し始めました!』


「勝ったかな?」


 と思わずフラグを口にしちゃったが、どうやらその心配は不要だったっぽい。


『最後に残ったのは「ウルク」っていう、部長たちが前にレオナさんと倒したボスモンスターだそうです』


「なるほど。限定オープン組なら勝てるけど、制限解放からプレイしてる人にはちょっと辛いかもか」


『部長もセスちゃんもナットさんたちに任せるみたいですよ』


 ここで手柄を奪うのもって感じなのかな。

 ベル部長としては魔法障壁ってので良いところは見せられたんだろうし、ここでまたってなると印象悪くなりそうだもんな。


「レオナ様の方はどう?」


『あ、はい。こちらも終わりそうですね。昼の翼が生えてる人たちが……連携はしてないみたいですがモンスターと戦ってます』


「……なんなんだろ一体」


 確か「命令されて来た」みたいな話をしてたそうだし、前回何もせずに帰っちゃったのを怒られたとかそういう?


『部長たちの方は終わったみたいですよ』


「開拓拠点も無事だし、ノームとも仲良くなれたし、大成功ってとこかな。あ、達成率も96%になってるし終わりも近そう」


 レオナ様のところ、帝国の北側、公国の西側、聖国でちょうど100%? って97%になったな。


『レオナさんのところも終わったみたいです。最後は同じウルクだったので、レオナさんはパスしてました』


「あー……」


 まあ、あの人の場合は『もう勝てる相手とはやらない』だろうなあ……

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