第119話 楽しみ方は人それぞれ

 ベル部長、セス美姫、ナットたちがいる南西部も、レオナ様がいて『白銀の館』がある北西部も、モンスターの襲撃をしのぎ切れたと思う。

 あとは帝国と公国と共和国……はないんだっけ、聖国がどうなるか次第かな。


「ベル部長たちは後片付け?」


『はい。ライブの視聴者さんとやりとりしながらみたいですね』


 相変わらずというか、すごいよな。

 俺は、前回のライブとか、チャットはほとんど見れてなかった。

 特に質問タイムに入った時とか、名前すら認識できてなかったと思う。


「ヤタ先生は慣れとか言ってたけど、あれ真似できる気がしないんだよな」


『大丈夫ですよ。私が見ますから』


「うん、よろしく」


『はい!』


 んじゃまあ、ミオンがネタにできるように、頑張って壁板張りの続きをしよう。


 ………

 ……

 …


【ワールドクエストが終了しました】


「おお!?」


『終わったみたいですね』


 あれから1時間弱。

 両サイド、山側の壁板を張り終え、海側を張り替えていたところに、急にアナウンスが表示された。

 初めてのワールドクエストだったけど、かなり盛り上がったし、また続きがいつからか始まるんだろうな。


「ベル部長たちのライブもそろそろ終わり?」


『はい。もうすぐ9時半ですし』


 開始が8時前ぐらいだったし、結局、いつものライブよりちょっと早く始まって、ちょっと早く終わるってぐらいか。


「また見にくるのかな?」


『どうでしょう? 白銀の館があるところも気になってそうですけど』


「ああ、そりゃそうか。ホントならそっち優先だったはずだもんな」


 ライブ終わったら、そっちに移動してから打ち上げとかするのかな?

 そういうのはちょっと羨ましいんだよな……


【ハルネ聖国が滅亡しました!】


『「えっ?」』


 ハモってしまって、思わずライブカメラの方を見てしまう。

 滅亡って……モンスターの襲撃に耐えきれなかったとかそういうオチ?

 俺がインターセプトする形でフェアリーを救出しちゃったせいだったりするのかな。


『フォーラム見てみますね』


「あ、うん、お願い」


 キリもいいところだし、ちょっと休憩にしてワールドクエストの方を確認しよう。


「ワフ」


「お、ルピ、おかえり」


 改築の間はルピには好きにしてもらってる。

 フェアリーたちの護衛をしたり、一緒に遊んでたりするし、退屈はしてなさそう。


 玄関の階段を降り、草むらにあぐらをかいて座ると、ルピが自分の居場所ができたとばかりにその足の間に収まってくる。

 ……もう収まるにはギリギリなぐらい育ってるよな。


「えーっと……」


【ワールドクエスト:生存圏の拡大】

『各国の開拓地を襲ったモンスターの氾濫は、一部被害を出したものの、人類側の勝利に終わった。

 だが、新たな生存圏の獲得は、新たな種族との出会いを生み、新たな争いの火種にも思えるのであった。


<リザルト>

・グラニア帝国:成功:貢献率25%、被害率9%

・ウォルースト王国:成功:貢献率41%、被害率2%

・パルテーム公国:成功:貢献率22%、被害率17%

・ハルネ聖国:成功:貢献率8%、被害率46%

・マーシス共和国:途中棄権:貢献率4%、被害率0%

・その他:評価なし

※所属国家に応じた特殊褒賞が配布されています』


 俺はこの『その他』扱いなんだろうなあ。


『戻りました』


「おかえり。これ、リザルトらしいよ」


『なるほどです。ショウ君は……その他ですよね?』


「多分ね」


 フェアリーを助けた件では微妙に参加してる気もするけど、ワークエの目的に直接関係があったわけじゃないよな。


『王国と帝国と公国の人はワールドクエスト成功で5SPずつもらったみたいです』


「おおー、ベル部長たちも頑張った甲斐があった感じかな。って共和国と聖国は?」


『共和国の人たちは1SPだそうです。聖国の人についてはわかりませんでした』


 ああ、そりゃそうか。国が滅亡したっていう……


「聖国の滅亡の話って何かわかった? リザルト見る感じだと『成功』ってなってるから、防衛には成功したと思うんだけど」


『はい。えっと、最後の襲撃でかなり危ない状況になったんですが、それを共和国から来た兵隊さんたちが蹴散らしてくれたそうです』


「へえー……ってひょっとしてそのまま……」


『です。そのまま共和国の兵隊さんたちから、降伏勧告を出されたそうです』


 ……ひでえ。

 いや、でもまあ、助けてくれた上でだからマシな方なのか? 蹂躙された後で来ても良かったわけだし。


『それでその……兵隊さんたちを率いてたのは、氷姫アンシアさんだそうです……』


「マジかー!」


 さすが氷姫って感じなんだけど、えげつなさが半端ない。


「ゲームドールズの人たち、よくそれで納得したなあ」


 企業系バーチャルアイドルが個人バーチャルアイドルに屈するとか、いくら相手の方が格上——チャンネル登録者数的に——でも抵抗しそうなもんだけど。


『それが……ユニッツの人たちがもう先に懐柔されてたそうですよ』


「心折るのが上手すぎる……」


 ユニッツと建国の時に揉めてなければ……、いや一緒か。

 その時はその時で別の策略を巡らせるのがアンシア姫だろうし。


「結局、聖国の防衛してた開拓拠点って、共和国の一部になるってことだよね? ひょっとして……」


『はい。アンシアさんが領主だそうです』


「シミュレーションゲーム始まっちゃったな……」


 アンシア姫のファンってシム系経験者がどっさりいるから、内政には困らないんだろうなあ。

 なんなら、レベル上げほったらかしてでも、内政プレイだけしてそう……


「今のところは王国まで遠いからいいけど、将来的に絶対に魔女ベルにちょっかい出してくるんだろうな」


『そう思います……』


 しかし、MMOでそんなことされると、ベル部長だけじゃなくて、セスやらナットやらいいんちょまで巻き込まれるのがなあ。


「そいや、降伏したゲームドールズの人とかファンの人とかってどうしてるの?」


『詳しいことは分かりませんが、ゲームドールズの人たちはログアウトしちゃったそうですよ』


 きっつい……

 しかも仕事だもんなー……


『ファンの人たちはスッキリしたみたいで、そのままそこでプレイする人が多いみたいですね。

 アンシアさんがお金を出すので、ゲームドールズの人たちとプレイヤーズギルドを作って回して欲しいという話が出たそうです』


 スッキリって……

 防衛戦ですっかり疲れ果てて、抵抗する気も起きないんだろうな。

 で、そこにすかさず飴を持ってくるあたりがまた。


「まあ……本人たちが楽しんでるならいいかってやつだよな」


『ですね』


 俺たちがそれ言うのかって話だけど……

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