月曜日

第110話 妖精さんがやってくれました

「ふう……」


 連休で出された宿題を終えて、ほっと一息。

 隣のミオンはまだもう少しあるっぽいかな?


『終わりました』


「お疲れ」


「二人とも偉いですねー」


 とヤタ先生が褒めてくれるんだけど、そのニッコリのまま視線はベル部長の机に……

 その机の上には「ちょっと様子を見て、大丈夫そうなら戻ります」というメモが。


『ショウ君、IRO行きますか?』


「あ、その前に明日出す動画って大丈夫? まだなら手伝うんだけど」


『大丈夫ですよ。もうできてますから見てもらって良いですか? 先生もお願いします』


「りょ」


「はいー」


 編集してる時間、どうやって作ってるのか不思議だよな。

 今日とかだとやっぱり午前中? 俺は掃除、洗濯、買い出しと時間使っちゃったけど、そういう間にってことかな。

 中身は例のエリアボス、レッドアーマーベアとの戦闘の一部始終。ちょっともたついてるあたりはしっかり端折ってあって、10分弱に収まっている。


「よくまとまってますねー。良いと思いますよー」


「うん。土曜にライブで説明したし、バッチリだと思う」


『はい。じゃ、忘れないうちに予約投稿しておきますね』


 普段は学校があるので、午後4〜5時ぐらいに投稿してるんだけど、その時間と大きくずれないようにって感じかな。


「そういえばー、チャンネル名は考えましたかー?」


「まだっす……」


 昨日は布団に入っていろいろと考えてるうちに……寝てた。


『いくつか考えてますが、もう少し……』


「はいー。まあ、鉄の楯は最初ですし、デフォルトのままにしておくのもありかもですよー。今のペースでいけば、次の銀の楯ももらえると思いますよー」


 銀の楯がチャンネル登録者数50万人、その次が金の楯で100万人。プラチナ、ダイアモンドと続くらしい……

 ちなみに、ベル部長はもうすぐ銀の楯をもらえるぐらい。雷帝レオナ様や氷姫アンシア様といった四天王は金の盾をクリアしてたはず。

 クリアしてるのが四人だから四天王なんだろうけど、もう一人増えたら五天王になるんだろうか……


『予約終わりました。行きましょう』


「あ、うん」


「いってらっしゃいー。先生も見せてもらいますねー」


 見るのは全然良いんですが、ヤタ先生、連休のお昼から暇してて良いのかな……


***


 さくっとルピとご飯を済ませ、荷物を持って階段を登ってる途中。

 調理道具だけはまだあっちに残すけど、採掘のためのツルハシや、ロープにする前の蔓、未加工の皮、干しチャガタケなどなど……重い。


<引っ越しできそうなんですかー?>


『山小屋のリフォームが終わったら引っ越しですよね?』


「うん。あっちで寝起きできて、石窯も作れたらかな。あの山小屋がセーフゾーンになってくれると良いんだけど」


 セス美姫やナットに聞いた話だと、開拓地に家を建てて住み始めるとその家の分だけセーフゾーンができたらしい。

 で、そこから街に壁を巡らせると、そこに向かってセーフゾーンが徐々に広がるんだとか。


「ワフッ!」


 出口の明かりが見えて駆け出すルピ。元気だし可愛い。


 まずは荷物を蔵へと。

 うん、でかく作っといて正解だったな。それでも、立てかけておけるようなハンガーっぽいものを作らないと空間が無駄になる。


<これを一人で作ったんですねー>


『一晩たってどうですか?』


「うん。特に問題はなさそうかな。雨が降ってみないとって話もあるけど、山小屋を改築してる間は天気が続いて欲しいし」


『そうなんですよね』


 確かじいちゃんが「大工殺すにゃ刃物はいらぬ。雨の三日も降ればいい」とかことわざを言ってたよな。諺っていうか川柳? あとでヤタ先生に聞こ。


「よし。やるか」


『ショウ君、今日の予定を教えてください』


「おけ。えーっと、まずは左手側に土間を作る予定。これは蔵ほど大きくはしないから、すぐ終わるはず。

 次に木材を先に集めておこうかなって。余分にあって困らないし、4、5本分は確保して、その加工で大工のレベルが上がってくれればなお良しって感じ」


 そのあとは、まず屋根を外して下ろしてから、壁板を外してってぐらいかな。

 四方の柱は壁板外してから大丈夫か確認し直し。外側から見る分には大丈夫そうだけど、虫食いになってるかもしれないし……


「ワフ」


「あ、うん。気をつけてな」


 いつものっぽいので、グリーンベリーを5つ、ルピの首にぶら下げてあるポーチに入れる。

 楽しそうに走っていくし、俺が遊んであげれてないのもあるからなあ……

 さっさと改築終わらせないとな。


 ………

 ……

 …


【大工スキルのレベルが上がりました!】


「ふー、これでやっと3か……」


『おめでとうございます!』


「さんきゅー」


 左手側の土間はあっさりと終了。

 蔵の床と同じで石畳を敷くだけで、今回はマントのおかげもあってサクサク。

 途中で元素魔法が5になったんだけど、石壁の魔法で上がるとなんかこう。


 なお、ベル部長はいったん戻ってきたところで捕まった模様。

 ヤタ先生がにこやかに退出していきましたとさ……


 そのあとは、木を切り倒しては加工して木材にっていう作業を5回。

 だいぶ手慣れてきて、1本30分ペースぐらい? ってことは、もう夕方のはずで……


「今って5時前ぐらい?」


『はい。もうすぐ5時ですね』


「やべ。そろそろ夕飯の支度しないと」


 まあ、今日は炒飯チャーハン青椒肉絲チンジャオロースなんで、ぱぱっと作れるか。


「洞窟戻らないとだな。って、ルピどこ?」


「ワフ」


「ああ、ごめんごめん」


 いつの間にか足元にいたルピ。

 ほっぺを両手でわしわしがお気に入りなんだけど……


「クゥ〜」


『いつもと違います?』


 いつもなら目を細めてくれるんだけど、いやいやモード?


「えっと、どした?」


「ワフ」


 手を離すと、前足でポーチをちょいちょいと揺らす。

 グリーンベリーは先に渡したと思うんだけど、ダメなやつが入ってたとかかな?

 一回取り出して確認を……


「え?」


『それって昨日の魔晶石でしょうか?』


「あ、ああ、それか。でも、なんか色が……って鑑定だ」


【精霊石(極小):樹】

『樹の精霊が宿った魔晶石。

 精霊魔法:MPを消費して樹の精霊を使役することが可能』


「は?」


『すごいです! あの妖精さんがくれたんですよね!』


「そうなのかなあ。これって俺がもらっていいの?」


「ワフン」


 とドヤ顔のルピ。

 妖精から取り返したとかではないよな? グリーンベリー渡してたから、お礼ってことか。いや、これからもよろしくって意味かな……


「でも、まいったな」


『どうしてですか?』


「樹の精霊を宿らせる方法がわからないから、ベル部長に報告できないんだけど……」


 そのまま『妖精さんがやってくれました』ってわけにもいかないし。

 ルピについて見に行っとけば良かった。


『あの、ショウ君。樹の精霊を宿らせる方法は、もう一般的に広まってることなので』


「え?」


 ミオンの話だと、樹齢100年を超えるぐらいの古い樹に、魔晶石を添えれば良いらしい。ただし、園芸か農耕のスキルが5以上必要なんだとか。


「ひょっとして、それ見つけたのって『白銀の館』ギルドの?」


『はい。ディマリアさんだそうですよ』


 マジか。すげぇ……

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