第104話 ちょっと再現してみよう

「その日はもちろん南側から来たんだけど……。お、掛かってる!」


 いつものレクソンが生えてる場所に来たら、仕掛けた罠にかかってるのはグレイディア。

 肉もうまいし、毛皮はルピの寝床にも。あ、引っ越ししたらベッドの敷き毛布として使うのもありだよな。


「ワフ」


「ん、いいぞ、ルピ」


【イザヨイ】「え、ルピちゃんが相手するの?」

【ギシサン】「罠かかってるし大丈夫でしょ」

【ルコール】「ルピちゃん、がんばれ!」

 etcetc...


「ヴヴヴ……バウッ!」


 前回と同じく首筋に噛み付いて引きずり倒すので、押さえ込むのをお手伝い。

 程なくして、おとなしくなったグレイディア。後日、ありがたくいただくことにしよう。


「偉いぞ、ルピ」


「ワフン」


【ルコール】「ドヤ顔かわよ〜」

【クサコロ】「強え……」

【ラッカサン】「かっこいいよなあ」

【リュウズ】「<ルピちゃんGJ:500円>

 etcetc...


 ご褒美は取れたて新鮮な肉を切ってあげる。


「ここに罠の確認に来てて、えっと……あそこだ」


 崖のそば、ルディッシュが生えてるところに足を運ぶ。

 今日もしっかり生えててくれたので、それを抜いて、


「これ。まあ見たまんま大根なんだけど、これを見つけてテンション上がってたところに……」


『いきなり近くに現れたんですよね?』


「うん。短編のコメントにも書いたけど、バグだったらしい」


【ガフガフ】「なんというクリティカルw」

【レーメンスキー】「糞ポップかと思ったらバグだったのかw」

【ブルーシャ】「エリアボス隣湧きは酷い……(^◇^;)」

【フリテー】「うちらの場合は隔離されるっぽいけど、ここはそもそも隔離されてるんでしたねえ」


 ああ、そっか。

 普通は隔離された場所ができてからポップするから大丈夫だったのが、無人島はそもそも隔離された状態だからなのか……


『あの時は本当にビックリしました。ショウ君は戦うって言うし……』


「あの瞬間はもう逃げられる距離でもなかったし、いずれ戦わないとと思って用意はしてたから」


「ワフ!」


「そうそう、ルピもいたしね」


【ルコール】「主張かわよ〜」

【カリン】「熊ってめっちゃ足速いっていうよね〜」

【ドウミン】「背を向けず、にこやかに後ずさるのがいいらしい」

【マツダイラ】「実際戦ってるところ全編見たいな」


『あ、編集はもうすぐ終わりそうですから、次の火曜には公開できると思います』


【シャルラン】「へ?」

【ニレノ】「ミオンちゃんが編集してるの!?」

【ミザール】「まさかのバーチャルディレクターでもあった!」

【チョコル】「ちょっと男子〜」

 etcetc...


「はい、全部ミオン任せです。ごめんなさい」


 俺は無力だよ……


 ………

 ……

 …


「で、ここにこれくらいの石壁を出して、追っかけてきたあいつがそれを飛び越してきたのを避けて……」


『海に落ちていったんですよね』


 ぐるっと振り向いて崖下を覗く。

 あの時はテンション上がってたけど、冷静になって見ると高いよな。


【アルデ】「なるほどー」

【コックリ】「熊、落ちる前に両手広げてそう\(´(ェ)`)/」

【ナメーン】「すげえ! 最初から狙ってたの?」

 etcetc...


『最初からそういうつもりだったんですか?』


「いや、これはホント思いつき。第二形態?になってから、完全に頭に血が上ってるみたいだったし」


 さすがにこれがうまく行かなかったら、なんとか逃げるって方針転換してたと思う。


【ユイオン】「ショウ君、そのあと飛び込んだの?」

【トネン】「短編動画だと水中戦してたっぽいよな」

【ドウミン】「熊は普通に泳げるぞー」

 etcetc...


『そうなんです。そのまま「トドメ刺してくる」って……』


「いや、まあ、追いかけるでしょ。せっかく倒せそうなんだし」


【ガーレソ】「飛ぶよなあ」

【ティーエス】「岸に戻ってくるところを待ち構えれば良かったんじゃ」

【ガフガフ】「よし、ちょっと再現してみよう」

【キンコジ】「押すなよってやつだな!」

 etcetc...


 あれ? なんか俺が飛び込む話に進んでるような?

 いやまあ、いいんだけど。


「じゃ、飛び込んでみるかな」


『ショウ君、無理にやらなくても』


「どこに飛べばいいかわかってるから大丈夫。バグ直ってるか確認したいし。あ、ルピはあっちで待ってて」


「ワフ」


 ここからちょっと南側、例の岩棚で先に待っててもらう。


【ガフガフ】「マジか!」

【ブルーシャ】「無茶しないでー」

【フリテー】「いや、結構高くね?」

【デイトロン】「<チャレンジ代:5,000円>」

 etcetc...


 ……うん、やっぱり頭からは怖いので足からだよな。


「せーのっ!」


 足から着水し、その勢いのまま全身が水中へと。

 これ、リアルだったらびっくりするほど冷たいんだろうけど、ゲームだからかそういう感じはほとんどしない。

 で、配信のカメラってちゃんと水中に来てるのかな? って喋れないし! カメラ、カメラどこだ? あれか! 手を振ってみると……


『水中でも見えてますよ〜』


 ミオンの声が聞こえて一安心。サムズアップしておく。

 ついでだから何か探すか。サザエとかアワビとかウニとかないかな……


【潜水スキルのレベルが上がりました!】


 あ、潜水スキル取ってたんだった。


『多分、貝とかを探してるんだと思います』


 うん、ほどほどにしよう。

 コメント見る余裕ないし、ミオンもルピもほったらかしにしちゃってるみたいで良くない。


「ぷはっ!」


『大丈夫ですか? 寒くありません?』


「うん、平気。とりあえず岩棚まで泳ぐよ」


 落ち着いたところでないと話もしづらいので、さっさと移動。

 今日はレッドアーマーベアを引いてないんで軽い軽い。


「ふう。今日はもうバグ直ってて水中も映ってたみたいだけど、あの日はカメラがついてこなくって」


【コックリ】「えー……( ´Д`)」

【ラカン】「じゃ、完全版にも水中戦は映ってないのかー」

【カナカン】「もうショウ君をデバッガに雇おう」

【マッチルー】「無人島専属デバッガーですねー」

 etcetc...


『そうなんです。なので、水中で何があったのか説明してもらえますか?』


「うん。って言っても、喉に刺さってた麻痺ナイフが見えて、あれちゃんと刺さってないのかなって思ったから、石礫の魔法を当てて押し込んだんだよ。

 それがうまく当たったからなのかはちょっとわからないし、当たって麻痺が通ったのかもわからないんだけど」


『なるほどです』


 ただまあ、あれが決め手だったのは間違い無いと思う。


<あと15分も無いですよー>


『じゃ、あとは質問にしましょうか?』


「おけ。ここじゃなんだし、砂浜まで歩きながらで」


『はい!』


【ブルーシャ】「質問タ〜イム♪───O(≧∇≦)O────♪」

【マッデル】「いろいろ聞きたいことありすぎる」

【ノンノンノ】「最近作ったご飯のレシピ!」

【シェケナ】「ミオンちゃん、ご飯作ってもらえた?」

 etcetc...


 今日のライブ、自分もミオンも楽しかったし、見てる人たちも楽しそうだし、良かった良かった、かな?

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