第103話 実況見分ライブ!
「ばわっす」
『ショウ君』
「こんばんはー」
午後8時。ライブまであと30分。
バーチャル部室に待ってくれてたのは、ミオンとヤタ先生。
ベル部長はというと、生産組と会議だとかいう話をセスから聞いている。
グラニア帝国とパルテーム公国の動きが不穏なので、これからのギルド運営をどうしようって話し合いだそうで。
ギルマスのお前がいなくて良いのかよって聞いたら、「子供には難しいことはわからぬのう」とか言いやがるし……
「もう準備万端って感じ?」
『はい!』
「いつでもいいですよー」
今日もヤタ先生がついててくれるのが頼もしい。
徐々にフォローも減らしていきますよとは言われてるけど、まあまあ夏ぐらいまではいて欲しいところ。
「りょっす。じゃ、IROに」
『はい。いってらっしゃい』
「うん。いってきます」
だから、ヤタ先生、ニヤニヤしないで……
***
<ショウ君、昼のアーカイブ見ました>
<あ、うん。あれ確実にやばいよね?>
<どうでしょう? もうそういう装備を持ってる人もいるんじゃ無いでしょうか?>
あ……そうか。
俺が気づいてないだけで、実はみんなそういうの持ってるかも?
<今度調べておきますね>
<う、ごめん、お願いします>
マイホームの洞窟の広間から、古代遺跡を通って西側、セーフゾーンの草原へと向かう途中。
ミオンとこそこそウィスパー中。ヤタ先生にならバレてもいいかなとは思うものの、急にベル部長やセスが戻ってくるかもなので……
<今はいてるブーツなんだけど、これライブで突っ込まれると思う?>
<大丈夫だと思います。もし聞かれても、鑑定結果さえ出さなければいいんじゃないでしょうか?>
<りょ。そうするよ>
それにしても、歩いてるだけでなんとなく気配遮断にプラス補正が入る理由がわかる。
だって、足音が明らかに小さい気がするし。
「ワフッ!」
西の出口が見えたところで駆け出すルピ。
元気で何よりだけど、病気とかしないよな? IROは妙にリアルなところがあるから怖い。
医術のスキルがあったら取っておくべきかもしれない。
調薬はできるわけだし、自分で診断して自分で薬を出すっていう……
『ショウ君、あと5分です』
「おけ。草原で座ってればいい?」
『はい』
このセーフゾーンの草むら、すごく座り心地がいいんだよな。
セーフゾーンっていうか、安眠ゾーンって感じ。雨さえ降らなければ……
ルピは楽しそうに草むらを走ったりジャンプしたり……バッタか何かを追いかけてるのかな?
『ショウ君、チャットのウィンドウを』
「あ、やべ。ごめんごめん」
慌てて前回設定したチャットウィンドウを開く。
【ヤタ】「こっちも見えてますか?」
「うっす。チャット見えました」
<はいー、そろそろですよー。ちなみに5000人以上待ってますー>
マジか……。前よりも確実に増えてる、よな?
<10秒前……、5、4、……>
『みなさん、こんばんは。ゲームミステリーハンターのミオンです。よろしくお願いします!』
【ベアメン】「初見よろしく〜ヽ(´▽`)/」
【ブルーシャ】「キャー♪───O(≧∇≦)O────♪」
【ガーレソ】「キマッテタ!」
etcetc...
滝のように流れていくコメントに目が追いつかないんだけど……
そして、
【デイトロン】「<祝!二回目!:5,000円>」
【ルーランラン】「<収益化おめ!(遅):1,000円>」
【ブルーシャ】「ナイス!x2」
【キンコジ】「<ジュース代:300円>」
etcetc...
あわわわわ……
『あ、ありがとうございます!』
そこからも次々と飛んでくる300円前後の投げ銭。大丈夫なの、これ?
<はいはいー、落ち着きましょうねー>
『はい。えっと、じゃ、さっそくですがエリアボスを初めて、しかもソロで討伐したショウ君につなぎますね』
おっと、呆けてる場合じゃないな。
ちょっとはシャキッとした顔を……今さらか。
『ショウ君、ルピちゃん、こんにちは』
「ようこそ、ミオン。あれ? おーい、ルピ!」
虫か何かと戯れていたルピが嬉しそうにダッシュして、俺の腕の中に飛び込んでくる。
「ほい。ご挨拶」
「ワフン!」
【ルコール】「かわよ〜」
【ナーパーム】「これは悶えますね……」
【ガフガフ】「あああああ! もふもふしてえ!」
etcetc...
うん、まあ、ルピが可愛いのはしょうがない。
「で、今日はミオンからもリクエストがあった話をライブでやる予定す」
『はい。「エリアボスとの対決、あの時何が起こったか!」です!』
【マツダイラ】「実況見分ktkr!」
【ガーレソ】「やべえ、超面白そう」
【イザヨイ】「今いる場所からスタートです?」
etcetc...
あ、良かった。
そんなことより飯テロはよとか言われたらどうしようかと。いや、飯テロはいつでもできるけど。
『はい。では、まず今の場所について説明お願いします』
「りょ。えーっと、この草原全体がセーフゾーンで、あのアーマーベア……レッドアーマーベアを倒してできたセーフゾーンかな」
あたりをぐるっと見回して、視聴者のみなさんにも見えるように。
と、まずはあれかな?
「あの洞窟は中で古代遺跡に繋がってて、前に開かなかった扉の反対側に。ちゃんと開けて、今はそれを使って行き来してる感じ」
【シェケナ】「あの気になってた扉開いたんですね!」
【ノンノンノ】「出入り口が二箇所あるダンジョンって珍しい」
【カリン】「ゲームっぽい都合なのか、意味があってそうなのか気になる〜」
【マットル】「ってことは、この島の地下全体に遺跡が張り巡らされてる?」
etcetc...
なるほど。
確かに北に行く道があったわけだし、地下全体に広がってるのかもだな。
「ちなみに、コプティが自生してたりと、ちょっとズルいセーフゾーン」
【レーメンスキー】「お座り採集してた俺にクリティカルヒットww」
【イマニティ】「共和国に売りにきてくれないかなあw」
【チョコル】「笹ポの存在教えてくれたし無問題ですよぅ〜」
【ティーエス】「ほんそれ!」
etcetc...
思ってたよりもずるいと思われてない感じ?
意図的じゃなかったけど、仙人笹がポーションになるのは広まってるようでなにより。
『そういえばショウ君はチュートリアル受けてないんですよね?』
「うん。所持金も0。まあお金持っててもしょうがないし」
【ガフガフ】「金銭交渉が通じない相手!w」
【フリテー】「いくら持ってても買い物する場所ないよね」
【モルト】「いっそ炉でインゴットに戻す方が役立つぞい」
etcetc...
ああ、確かにインゴットに戻すってのはありかもだよな。
それで何を作るかって話だけど……ルピにメダルでも作ってあげるとか?
『では、まずは最初の現場にお願いします』
「うん。ルピ、行こうか」
「ワフッ!」
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