第99話 二人だけの秘密
「……ってことがあったんだけどさ」
『お義母様、すごい人だったんですね』
「いや、それはいいんだけど」
連休初日ってことで、さっさと宿題を終えたい俺。
ミオンと二人、バーチャル部室で宿題を終わらせようとしている。
なお、ベル部長と
「セスが言う通り土木スキルがアンコモンかレアだったとして、どうやったら取れると思う?」
『セスちゃんが言う、土の精霊でしょうか? どうやって仲良くなれるか分かりませんけど』
「やっぱ、まずはそれかなあ」
光の精霊は光苔を育てることで、近くの魔晶石に宿ることは確定。
俺が光苔を適当に増やして、たまたま近くに魔晶石があったから宿ってくれたのを、ちゃんと検証してくれた結果らしい。
「こんにちはー」
「どもっす」
『こんにちは』
ヤタ先生が現れて席に着く前に、俺たちの手元を覗き込む。
「いいですねー。宿題は早めに終わらせておきましょうねー。ギリギリで慌てるなんてことの無いようにー」
と、視線はベル部長の席に……
まあ、高一になって初めての連休ってことで、宿題の量も少なめ。
明日、明後日とやれば終わるだろうし、そうすればあとは気兼ねなくIROの世界に入り浸れる。真白姉が帰ってこなきゃだけど。
「今日はこれくらいでいいかな」
『はい。あ、先生、ちょっと質問が……』
何かわからないとこでもあったのかなと思ったら、さっきの土木スキルについて質問するミオン。
顧問の先生だから間違いでもないんだろうけど。
「はー、そうなんですねー、うーん……」
と人差し指を顎にあてる。
「なんか別の条件って思い当たったりします?」
「その土の精霊という話以外ではー、純粋に前提が必要とかはどうですかー?」
前提っていうと、ベル部長が見つけてた基礎魔法学とかああいうやつか。
そういえば、あの山小屋にあった本は地学関係の本もあったし、何かヒントがあるかもしれない……
『ショウ君』
「あー、うん、山小屋にあった本だよね」
『はい』
「気にはなるけど、まずは改築かな。それが落ち着いたらゆっくり読めると思うし、他にもいろいろあるし」
あの謎の妖精とかっていう部分は言外に。
ミオンも察したのか頷いてくれる。
『そうですね』
「じゃ、IRO行くよ」
『はい』
「先生は見させてもらうのでー、楽しんできてくださいー」
とにこやかに送り出してくれるのはいいんだけど。
「ところでヤタ先生はなんで部室に?」
「ベルさんが宿題せずに遊んでないか確認にですよー」
あ、うん、はい……
***
「さて、まずは草刈りからかな。ルピは遊んでていいぞ」
「ワフ」
そう答えて元気よく泉の方へと走っていくルピ。
モンスターもいないし、散歩にはいい場所だよな。
『ショウ君、草刈りの前に園芸か農耕のスキルを取りませんか?』
「ああ、そいやそうだね。どっちも面白そうだし、両方取っちゃうかな。SPは余ってるし」
前にバグ報告でもらった3SPがありがたい。
両方とも必要SP1だけど、エリアボス単独討伐の褒賞もあって、SPはまだ20も残ってるし。
「じゃ、晩飯までに綺麗にするか」
………
……
…
『ずいぶん綺麗になりましたね』
「さすがに疲れたかも……」
草刈りだけだとすぐに生えそうだったので、くわで延々と根っこから駆除。
どうせこの上に石畳を敷くし、ちょっと斜面になってるのを、できるだけ水平に均した。
それだけで、農耕と園芸のスキルが1ずつ上がったのはラッキー? まあ、雑草駆除も重要だもんな。
『まずは石壁を敷く感じですか?』
「そうなんだけど、その前にちょっとね」
そこまでする意味があるのかって話だけど、一応、四方に杭を打ってロープを渡す。
ロープの長さをきっちりと合わせて、ちゃんと長方形にしたい。角はちゃんと直角にしておきたい。完全に趣味だけど。
<マメですねー>
『きっちりしてますね』
「雑に作ると
こう「母上の仕事をバカにしておるのか?」とか言われそう。
<そういえばー、土木には測量も重要ですのでー、ショウ君には向いてるかもですねー>
測量って道でたまに三脚に乗せた機械で測ってるアレだよな。
子供の頃はちょっとかっこいい感じで憧れはあったけど、将来そういう職に就きたいとかはまだなあ。
「よし。じゃ、休み休み石壁敷いていくよ」
『はい。MPには気をつけてくださいね』
山小屋と同じぐらいの広さに石壁を敷いていくんだけど、それらは当然、石壁の魔法で作っていくので、MPをガンガン消費する。
50cm四方の石壁を作って、置いて、踏んで、作って、置いて、踏んでの繰り返し。
やっぱり結構MP持ってかれるな……
「うん、休憩。これは結構かかるかも」
『でも、もう1/3は終わりましたよ』
「なんだけど、このペースで壁もやってかないとなんだよな。ベル部長が手伝ったあの防壁とか、よくあんなに作ったもんだよ、ホント……」
あれって街を一周してるんだよなあ。
門とかもあるんだろうけど、そこ以外は全部あの高さに揃えるつもりだろうし。
「ワフッ」
「お、ルピ、おかえり」
地べたに腰を下ろした俺の足の間に入ってくる。
心の休憩ってことで、ルピを撫でてやると……
「え?」
『ルピちゃん、光ってます』
これってひょっとして、とステータスを見ると、
「うわ、MP半分ぐらい回復した……」
『この前習得したアーツ、<マナエイド>でしょうか』
「うん、多分」
アーツ好きに使っていいって言ったけど、これは本当に助かる。
「ありがとな、ルピ」
「ワフン」
そう答えてスンスンと……おやつ欲しいのかな?
インベから兎肉を取り出したら、ふるふると首を横に。
ん? なんだろ……
『グリーンベリーじゃないですか? ほら、あの……』
「ああ……」
ミオンが歯切れの悪い言い方をするのはヤタ先生が見てるからだよな。
ルピが例の妖精に持っていきたいのか、持ってこいって言われたのかわからないけど、多分そういうことなんだろう。
「これ?」
「ワフン!」
それそれって顔なので合ってるっぽい。
渡すのはいいんだけど、どうやって持たせよう……ああ!
「ちょっと待ってくれ」
ベルトポーチから笹ポを抜いて、そこにグリーンベリーを5粒ほど入れる。
あとは革紐でルピの首にぶら下げてやれば……
『すごく可愛いです』
「首輪なんかつけなくてもいいかって思ってたけど、こういうのならありかもだよな」
「よし、いいぞ」
「ワフッ!」
嬉しそうに駆けていくルピの向かう先は、やっぱりあの妖精がいたあたり。
「やっぱり?」
『だと思います』
<あらあらー、二人だけの秘密ですかー?>
教師がそういう言い方するのどうかと思うんですけど……
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