第84話 地下のつながり
「ん、ありがとう」
光の精霊にお願いして、洞窟の広間で使ってるのと同じような明かりを。
俺の頭の上を追いかけるようにお願いしたので、それなりに奥まで見渡せる感じに。
『気をつけてくださいね』
「りょ」
気配感知にしっかりと意識を向けつつ、ゆっくりと奥へと。
方角的には東に向かってるはずで、俺の予想が正しければ……
「あったか」
『これは、あっちの洞窟にある扉と同じですか?』
「多分ね。この先で繋がってる気がするんだよな」
『あの行き止まりの扉がこれなんですか?』
「ううん、距離感的にあの開かない扉じゃないと思う」
潜っちゃうとよくわからないんだけど、体感的にはまだ島の西側。
これを開けて、もっと東へと進めばなんだろうけど、そんな単純かなとも思うし。
「よし、開けるか」
両開き、中央にある取っ手に手をかけると、前と同じ問いかけが現れる。
【祝福を受けし者のアクセスを確認しました。解錠しますか?】
「はい」
固く閉ざされていた扉がふっと軽くなったのを確認して、そのまま押し開ける。
その先は見たことのある古代遺跡の通路。石でできた床、壁、淡く光っている天井。
『なるほどです。あの開かない扉に続いてそうですね』
「だといいんだけど」
『新しいワールドアナウンスが出ませんでしたし、きっと続いてますよ』
「ああ、そういやそうか」
ここがあっちと繋がってない、完全に別の古代遺跡ならワールドアナウンスが出るし、褒賞SPも貰えるよな。
「ワフ」
「ん、行くか」
ひとまず危険を感じるような気配はない。
ゆっくり、真っ直ぐと東側へと進んでいくと、やがて左側、すなわち北側に分岐路が現れた。
『これは……北側へですよね?』
「かな。ちょっと奥までは見えないけど、真っ直ぐ続いてそう」
『どうしますか?』
うーん、悩ましいところなんだよな。
真っ直ぐ東へと進めば、あの開かない扉の反対側までいけそうな気がするんだけど。
「ワフ」
「ん? ルピ、わかるのか?」
スタスタと真っ直ぐ、つまり東へと向かう通路に行こうとするルピ。
俺よりも距離とかの感覚は鋭いだろうし、ここはついていくべきだよな。
『ルピちゃんにはわかるんでしょうか?』
「なのかな。まあ、俺よりはわかってると思うし」
あの扉に続いてるなら、後ろから来られてもダッシュで走って逃げて、扉を開ければ逃げ切れるはず。開けばだけど。
ときどき後ろを振り返りつつ前進すると、しばらく歩いたところで見えたのは、いつもの扉。
「ワフン」
「ルピ、賢いなあ」
ドヤ顔してるのを撫でてから扉に手をかけると、いつもの問いが来たので「はい」と答えて押し開ける。
「うん、この左手に降りるのは採掘場へ続くやつかな」
『これで海岸を経由せずに西側に来れるようになりましたね!』
「だね。西側の方が美味しい食材も多いし、木も加工しやすいやつが多いし」
ジャングル系の木はログハウス作りには向いてない気がするんだよな。基本曲がってるし。
さて、まだ10時前だろうし、あと1時間は余裕がある。となると、
「あの北側への道まで戻るか」
『ショウ君、その扉は開けっ放しにしますか?』
「うん、そのつもり……ってモンスターが流れ込んでくるかもなのか」
『です』
セーフゾーンには入ってこないって言われてるモンスターだけど、ログインして起きたらセーフゾーンの側にいるのは嫌だな。
「とりあえず開けとくけど、ログアウトするときは広間の方の入り口を閉めてからにするよ」
『なるほどです』
扉は他と同じ。開き切るとそこでしっかり止まってるようで、やっぱり開けておけってことなんだろうと思う。
ルピと二人、来た道を戻ってくると右手にさっきの分岐路が見えてきた。
道としては幅も高さも全く同じで真っ直ぐ北へと続いているので、これを超えた先が北側なんだと思うけど……
「よし、行くか」
「ワフ」
………
……
…
「うーん、また扉に今度は上への階段か……」
『扉、少し違いませんか?』
「あれ、そうだっけ?」
左手には上へと向かう階段があり、正面にはいつもの扉、とはちょっと違う?
ぱっと見は同じかと思ってたけど、ミオン曰く、模様が少し違うらしい。
となると、まずは鑑定かな?
【古代魔導扉】
『古代魔法によって施錠されている扉』
「うーん、結果は同じだし、とりあえず開けてみるか」
取っ手に手をかけると、
【祝福を受けし者のアクセスを確認しました。解錠コードを入力してください】
「え?」
解錠コードって……わかるわけないんだけど。
『解錠コードって何でしょう?』
「いや、さっぱり。なんか合言葉みたいなものかな。……『開けゴマ!』」
……そんなので反応しないよなあ。
「ワフ?」
「ごめん。開かないっぽいんだ」
ルピの「何してるの?」って顔に思わず謝ってしまう俺。
『ふふ、ショウ君、可愛いかったですよ?』
「ううっ……」
思わず『開けゴマ』とか言っちゃった自分が恥ずかしすぎる。
でもまあ、ここが開かないなら、さっきの階段を登るしかないか。
その『解錠コード』ってのを、今探索できる範囲で探すのがゲーム的なお約束だろうし。
「開かないなら、向こうからモンスターが来ることはないよな、多分。よし、階段登るぞ、ルピ」
「ワフン」
気配感知をしっかり意識はしてるけど、特に反応はないのでさくさく登っていく。
真っ直ぐ西に登り、踊り場があって右に北側に続いてる階段をまた登る。さらに踊り場があって左に西に続く階段を見上げると、
「お? 外かな?」
天井の明かりではない、外の光が見える。
「ワフッ!」
「あ、おい、ルピ!」
一気に駆け上がっていくルピを慌てて追いかける。
「ワフッ!」
登り切ったルピに追いついたところで目の前に現れたのは、
「うわ、すごっ!」
かなりの広さの、これは盆地でいいのかな? 崖に囲まれたスタジアムぐらいの大きさの場所。
この出口がちょっと高い場所にあるおかげで、いい感じに全体を見渡せる。
『そこって屋根があるんですか?』
「あ、うん。多分、階段に雨水が流れ込まないようにだろうけど、地下鉄の入り口みたいになってる」
出口の左右と後ろに低い壁があり、その外側に4本の支柱。これは石柱でいいのかな? その上の屋根も石でできてるっぽい。ちょっと怖いな。
確か今は西を向いてるはず。
屋根の下を出て、振り向けば東側、島の中央の山が見えるはずで……
「えええええ! この島って火山島だったのかよ!」
『噴煙があがってますね』
見上げる先には急峻な山と、その頂上付近から立ち登る煙……
いかにもって感じだけど、万一噴火してってことは考えたくないなあ。
今のところ地震を感じたことはないから、すぐ噴火なんてことはないんだろうけど。
『ショウ君、北側に何か建物が見えませんでしたか?』
「え?」
そう言われて北側を見ると、崖の麓に広がる樹々の手前に小さな家……山小屋のようなものが見える。
「なんか、ホラー展開っぽくて嫌なんだけど……」
『私もです……』
超苦手ってわけでもないけど、普通に廃屋とかやめて欲しいんだよな……
「じゃ、今日はこの辺で」
『はい。帰る時間もありますもんね』
意見が一致しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます