第83話 新たな発見

 さて、BPも振り終わったし、まずは……


「飯にしようか」


「ワフン!」


『今日のご飯は何を?』


 うーん……せっかく採ってきた大根——ルディッシュで一品作りたいところ。

 俺の中で大根っていうとおでんなんだけど……しょうゆがないと無理だよなあ。

 となると……


「兎肉と大根で塩煮込みを作ってみるかな」


『塩煮込み?』


 料理酒とかもあるといいんだけど、ないものはしょうがない。素材の味を活かすってことで。

 ルディッシュを輪切りにし、皮を剥いて面取りをして……軽く切れ込みを入れておくかな。

 土鍋に水を張って塩を適量。干しチャガタケにさっきの大根、フォレビットの兎肉の角切りを入れて煮込む。


「もう一味何か欲しいんだけど……」


『ショウ君、この間のライブで海苔を使ってなかった気が』


「ああ、それだ!」


 昆布のかわりってわけじゃないけど、塩味メインの出汁に海苔は合うはず。

 最後に千切ってパラパラとまぶす感じで……


「できた! 兎肉と大根の海苔塩煮込み」


【料理スキルのレベルが上がりました!】


 お、ラッキー。これで料理もレベル6か。一人前ってことでいいのかな?


「ワフワフ」


『すごく美味しそうです……』


 兎肉、フォレビットの方が脂身が多いのかコクがありそうだし、干しチャガタケのうま味と海苔塩味がマッチしてそう。


「ちょっと待ってな、ルピ」


 ルディッシュ、大根よりかなり辛かったので一応味見してから。

 煮物があっという間に出来るの本当助かる。リアルでもこうならもっと煮物作るんだけどな。

 箸を入れてほろりと解けた熱々のルディッシュを一口……


「おお、美味い! すっごい甘くなるし、出汁をよく吸い込んでて海苔塩味が染みる」


「ワフ! ワフ!」


「おっけおっけ。ルピ、熱いから火傷するなよ」


 平皿に盛れば冷めるのも早いから大丈夫だよな。

 ……ルピって大根平気なのかな?


『うう、動画にするときもう一度見ることになるんです』


「ごめんごめん。まあ、本当に俺の作った料理が食べたいなら言ってくれれば」


『本当ですね!?』


「あ、うん」


 まあ、美姫とも随分と仲良くなってるみたいだし、うちに来てくれるんならいつでもなんだけど。


「ワフン!」


「ルピ早いな! ちょっと待ってくれ」


 あっという間に平らげたルピにおかわりをよそいつつ、自分も煮込みを堪能する。

 んー、また海苔を取りに行かないとだよな。この前、レッドアーマーベアを引き上げた岩棚のところ、結構良さそうだったし、また行ってみるか。


 俺とルピで綺麗に平らげ、川まで来て食器を洗ってるところで、


<こんばんわー、短編の動画の再生数がすごいことになっていたのでー、少し見に来ましたー>


『あ、先生』


「良かった。どうしようかと思ってたんで」


<はいー、プレイしながらでいいですよー>


 とのことなので、食器をかたして広場へと戻る。


『完全版を急いだ方がいいんでしょうか?』


<その前にお問い合わせの返事は来ましたかー?>


「あ、来ました! っていうかGMルームに連れてかれました」


 その時の話をヤタ先生に説明する。

 報告のお礼として3SPもらって、内容も別に話してOKということも。


<ではー、あの短編にミオンさんがその内容のコメントをつけて、先頭に固定しておきましょう>


「なるほど」


 急にポップした件と水中での戦闘が映ってない件はバグで、次のアプデで治るってことは周知して良さそうだもんな。


『完全版を急ぐ必要はありますか?』


<いえー、そのコメントをつけてー、完全版を出す予定日を書いておけばいいかとー>


『わかりました。ショウ君、私、ちょっとそっちに行ってきます』


「おっけ。俺とルピはゆっくりと西側の様子見に行くから」


『はい。すぐ戻りますね!』


 うん、まあ、そんな急がなくてもと思うけど……


 ………

 ……

 …


 洞窟前の広場からいったん海岸まで出て、そこから西の森へのいつものコース。

 なんだけど……


「あれ? なんか随分とのどかな感じがするな。これってやっぱりエリアボスを倒したからか?」


 あの時たしか、【セーフゾーンが追加されました】と【島南部エリアを占有しました】とか出たんだっけ。

 島の南側では俺が一番強くなったって感じなのかな? あのレッドアーマーベアがまた出たら、それはそれで苦戦しそうだけど……


「ワフッ!」


 ルピが一足飛びにジャンプし、草むらへと飛び込むと、


 バサバサバサバサッ!


「うわっ、鳥いたんだ!」


「ワフン」


 ルピがドヤ顔で仕留めたそれを置いてくれる。

 黒味がかった紫の羽が綺麗な野鳩っぽい? まずは鑑定を。


【パーピジョン】

『豊かな森に住む野鳥。紫の羽が特徴的。

 料理:肉は甘くコクがある。細工:骨・羽を素材として利用可能』


 おおお! 鳥肉! それに羽でやっと矢が作れる!


『ただいまです』


「おかえり。見て、これ」


 パーピジョンとその鑑定結果をミオンに見せる。


『鳥ですか!』


「うん。多分、野鳩みたいなやつかな。ルピが捕まえてくれた」


「ワフン」


「えらいぞ〜」


 ドヤってるルピをしっかり撫でてあげる。褒めて伸ばす方針で。

 で、いざ解体すると、肉、骨、羽と手に入れることができた。羽の枚数は矢を20本は作れそうな感じかな?


『なぜ、急に鳥がいるようになったんでしょうか?』


「それなんだけど、あのエリアボスだった熊がいなくなったからじゃないかな? 今日ここに来たときに思ったんだけど、雰囲気が随分と緩くなってるよ」


『あのボスがいなくなったから、平和になったということですか?』


「多分ね。島南部エリアを占有しましたって通知あったし、この辺にもう脅威なモンスターはいないのかも」


『なるほどです』


 アクティブなモンスターが全般的にいなくなるとちょっと困るけど、さすがにそこまではないよな。

 ランジボアはもう1匹ぐらい仕留めて、今度はブーツ新調したいし。


 そんな話をしながら、今まで行けてなかった側、島の中央に向かう奥へと進む。

 ヤタ先生は固定コメントをつけた後、しばらく様子見して、問題なければ落ちるそうで。ホントご苦労様です。


 気配感知に特に反応はないし、ルピと二人、軽い足取りで進んでいくと……


「あ、こっちにも広場?」


 樹々が途切れ、見えてきたのはテニスコート半分ほどの広さの草原。草原っていうか草っ原って感じだけど。

 それ以上に重要なのは、全体的に薄く淡く光っていることで、


「うん。この場所全体がセーフゾーンになってる」


『あ、そういえば通知がありましたね』


「そそ。一体どこだろって思ったけど、ここだったんだな」


 でも、ここって奥は崖になってるし、こんなところにセーフゾーンが追加されてどうしろって……ここに家を建てろってことか?


「ワフワフ」


「ん、どした?」


 ルピがこっちこっちって感じで呼ぶので、奥の崖の方に行ってみると、


「あ、洞窟……」


『ルピちゃん、ナイスです』


「ワフン」


 岩陰に隠れるように、ぽっかりと開いているそれは、広場の奥の洞窟の入り口に似ている。

 あれ? ひょっとして、徘徊してるアーマーベアとは戦わず、見つからないようにここにたどり着くのが正解だったとか、そういうこと!?


「ごめん、今って何時ごろだっけ?」


『はい。9時半前です』


「よし。じゃ、行ってみるか」


「ワフン!」

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