第82話 GMルーム

「ばわっす」


『ショウ君』


 夕飯終わって、いろいろとかたして午後8時すぎ。

 いつもの時間にバーチャル部室なんだけどミオンしかいない。


「あれ? セス美姫とベル部長はもうIROへ?」


『はい。レオナさんから、エリアボスに心当たりがあるって連絡があったそうで』


「へえー……」


 まあ、死ぬギリギリまで攻める人だし、未開地でやばい敵に何度か遭遇はしてそうだよな。

 俺もあの時ばかりはデスペナ覚悟したし。


『それと部活の時にあげた短編動画ですが、もう10万再生を超えました』


「……は?」


 部活中に間に合って速攻上げてから、3時間弱しか経ってないんだけど?

 しかも「完全に予想外だったので、勝てたはいいけど何もわからないです」的なことを書いておいたのに。


『フォーラムを見てきたんですが、みなさん、アーマーベアを見たことがある場所に確かめに行ってるみたいです』


「うへ、マジか」


 おかしなことにならなきゃいいんだけど……って、


「コメント欄、荒れてない?」


『はい。みなさん、ショウ君を褒めてますよ。あと、完全版が早く見たいという人が多いんですが……』


 うーん、悩みどころだよなあ。

 けど、正直、この短編に入ってない部分って、俺が苦戦してるぐらいだし。


「一応、予定通り来週火曜でいいんじゃないかな。ヤタ先生が来たら聞いてみるってことで」


『はい』


「じゃ、俺も行ってくるよ」


『はい、いってらっしゃい』


 そういや、昨日はレベルアップとかいろいろ放置したままだったな。

 ちゃんとその辺済ませとかないと……


***


「えっ?」


 目が覚めて洞窟の天井が見えるはずが、なぜか謎空間にいた。

 大理石っぽい床があって、周りは何もなく、淡い光の壁だけがある感じ。


「ようこそお越しくださいました。ショウさんですよね?」


「うわっ!」


 あちこち見回してたら、いつの間にか目の前に女性が立っている。

 服装はなんというかコンパニオンっぽい感じ。これはひょっとして……


「驚かせたようですいません。ここはGMルーム、私はゲームマスター統括の雑賀ちよこ、GMチョコです」


「あ、どうも」


 GMチョコってアップデート配信ライブに出てた人だよな。

 偉い人が出てきて直接対応とかするんだ。


<ショウ君?>


「あ、すいません。ちょっとウィスパー来たので待ってください」


 いつもは1分以内に配信始めてるし、そりゃ不思議に思うよ。

 とはいえ、ここでは配信できないっぽいし、というかメニューがそもそも見当たらない。

 気分的に後ろを向いてからミオンにウィスパーを返す。


<ごめん、ミオン。今、GMと話してるのでまた後で>


<あ、はい。わかりました>


「すいません、大丈夫です」


「いえいえ、急にお呼びしてしまってすいません」


「えっと、用件は?」


「昨日、報告いただいた件についての報告させて頂こうと思います」


 報告? ああ、あれか!

 エリアボスの件で慌てて短編作ったりしてたせいで、すっかり忘れてた……


「あ、はい」


「報告いただいた2件ともバグだと判明しました。どちらも修正適用済みです」


「あ、そうだったんですね。……どういうバグだったか聞いても?」


 何がどこまでバグだったのかは気になるところ。

 アーマーベアが早々に形態変化したのもバグだったのかとか……


「はい。まず、カメラが水中に入らなかったのは、水面のコリジョン設定……つまり、地面と同じような設定になってたからですね」


「なるほど」


 これは予想通り。セス美姫が言ってたやつだな。


「アーマーベアに関しては、前回のメンテナンス終了直後にポップして徘徊しているはずが、なぜかポップしておらず、それに気づいたGMが手動でポップさせたところ……」


 と、めちゃくちゃ申し訳無さそうに話すGMチョコ。

 うん、まあ、はい。俺のリアルLUKパラメータならしょうがない。

 それよりも、


「割とすぐに第二形態になったのはバグじゃないんですか?」


「いえ、それはバグではないです。HP低下だけが形態変化の条件とは限らない、ということだけお伝えしておきます」


「はあ……」


 やっぱりルピが強かったからとか?

 ただ、俺はもう確認する機会が無さそうなんだよな……


「さて、バグ報告のお礼ということで、こちらから褒賞を選んでいただけますか?」


 その言葉に、俺の目の前に現れるウィンドウ。そこには、


『女神褒賞:3SP』

『女神褒賞:300,000アイリス』

『女神褒賞:魔晶石(中)3個』


 女神褒賞って名前でお金があるのに違和感が……

 でもまあ、これは俺にとってはほぼ一択。


「3SPでお願いします」


「わかりました。褒賞はゲームに戻ったところで授与されますので。その他にご質問はありませんか?」


「えっと、このことは他の人、プレイヤーに話しても?」


「はい、もちろん構いません。この部屋は配信はできませんが、他の方が来られたこともありますよ」


 なるほど。っていうか、クローズドベータの時にあるよな、そりゃ。


「じゃ、以上で」


「はい。バグ報告、および、本日はありがとうございました」


 その言葉とともに、だんだんと暗くなっていく部屋。

 これは目を瞑ってた方が良さそうな感じ……


 ………

 ……

 …


「ん、戻って来れたかな」


【女神褒賞:3SPを獲得しました】


 おお、なんか嬉しい。

 これでまたスキル3つぐらい取れるし。


「ワフッ!」


「っとと。ルピ、おはよう。ちょっと待ってくれ」


 飛びついてきたルピを膝に座らせて、いつもの様にミオン限定配信をオン。


【ミオンが視聴を開始しました】


 と出て、すぐに、


『ショウ君、何があったんです?』


「えっと、昨日、お問い合わせに報告した件で、直接話があっただけ。だけっていうか、どっちもバグだったから、報告したお礼ってことで3SPもらえたよ」


『すごいです!』


「他にも300,000アイリスか、魔晶石(中)3個かだったけど」


 どう考えてもお金って選択肢はないよな。

 俺が無人島にいてお金が意味ないのは知ってるんだろうけど、規則か何かでそうなってるんだと思う。


『魔晶石(中)を選ばなかったのはなぜですか?』


「ああ、レッドアーマーベアを倒して、魔石(中)が手に入ってたから」


 インベにしまったままだったそれを取り出してミオンに見せる。

 小サイズから一気に大きくなった気がするけど……あれ? 小サイズってゴブリンリーダーのやつだっけ。


『なるほどです。それなら、大きな精霊さんでも中に住めそうですね』


「ああ、それいいね。精霊探しもそのうちやらないとなあ。けど、その前に……」


 ステータス画面を開くと、BPがガッツリ溜まってる。

 9から10で20BP貰えて、11、12でそれぞれ10BP。合計40BPを振らないと。

 あと、エリアボス単独討伐で10SP。さっきの女神褒賞で3SP。未使用が23SPまで復活した。


『BPはどう使うつもりですか?』


「うーん、SPが減ってきてたし、10はBPのままにして、いざというときの保険にしようと思ってたんだけど……」


『SPがまた増えてますね』


 レアスキル(9SP)を2つ取ってもまだ5余るし悩むんだけど……


「やっぱ、全部ステータスに振るか」


『全部ですか?』


「うん。今の時点で、島でのんびりするためのスキルはだいたい揃ってるかなって。それと、島の残りも探索するってなると、もっと強い敵が出てきそうな気がするし……」


 レッドアーマーベアだって、多分、俺がキャラレベ10超えてからを想定した相手なんだろうな。


『そうですね。ショウ君、これからもいろいろと褒賞がもらえると思いますし』


「そうかな?」


『だって、次のエリアボスも一人で倒さないとなんですよ?』


「あ……」


 エリアボスがあいつだけって線は……ないな。

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