日曜日

第75話 予期せぬ出会い

「ちわっす」


「良き良き」


 ライブ明けの日曜日。

 多少寝坊はしたものの、午前中に買い物も終えて一安心。

 昼飯を食ってから、バーチャル部室に来たところなんだけど、


『ショウ君、セスちゃん』


「こんにちはー」


 ミオンとヤタ先生の二人。ベル部長は……IROもうやってるっぽいな。

 で、二人はというと、ミオンは動画の編集ではなさそうだし、ヤタ先生もなんか書類を作ってるっぽい?


「どうしたんです?」


 なんか申請とか必要なことってまだあったっけ? 投げ銭の関係とか?


『宿題してます。ちょうど先生もいますし』


「ああ、うん。ヤタ先生は?」


「連休向けの宿題作りとー、開けてすぐに中間テストがありますのでー」


 そうか。もう週末から連休だし、それが明けたら中間テスト……


「ふむ、もうそのような時期だったか。兄上、連休中はどうするのだ?」


「どうって。別に予定もないし、親父と真白姉が戻ってくるかもってぐらいだろ?」


 一応、親父は月に一度は様子を見に帰ってくる。

 母さんは仕事で大変そうだけど、親父は主夫してるので時間はあるみたいだし。

 それでも、母さんを一日ほっとくのが怖いらしくて、顔を見たら用事もそこそこに行っちゃうんだけど。

 真白姉はいつ帰ってくるとか連絡してこないだろうしなあ……


「ふむ。まあ、今年はIROのおかげで退屈はせんですみそうよの」


『ショウ君は宿題はもう終わらせたんですか?』


「うん。土曜のうちに終わらせてた」


 なんかこう「これ終わったら宿題しないとな」ってのがあると、微妙に気になって集中できない、柔らかメンタルなので……


『もう少し待ってください。すぐ終わらせます』


「いやいや、別に慌てなくていいよ」


 で、セスは先にIROに行っていいぞって言おうとしたら……


「そこはこう……この方が作者の心理を窺えるのではないか?」


「なるほどー、いいですねー」


「おい、やめろ。お前が監修すると洒落にならん」


 その宿題かテストか俺が解けなかったら、今さらだけど立ち直れなくなる。

 ちょっとは兄を立てることを覚えてくれ……


「しょうがないのう。では、IROに行くとするか。

 ああ、兄上、今日はナット殿やポリー殿と狩りに出かける予定だが見ていくか?」


「お、マジか。ちょっと見たいな。いいんちょは弓が上手いらしいし、他の精霊魔法もどうなのか気になってるし」


「うむ。では、ここに限定配信を流しておくことにしよう」


 そう言い残してIROへと向かうセス。


「あ、それここで見るとミオンの勉強の邪魔になるよな。ごめん、ちょっとリアルビューに……」


『いえ、大丈夫です。今終わりましたし、私も見たいです』


 それを聞いて一安心。

 俺も土日の宿題はこの時間に消化するかな。いつもってわけじゃないけど、ヤタ先生がいてくれるなら、わからなくても聞けばいいし。


「っと、来た来た」


 セスから送られてきたメッセを開き、配信を大きく映し出す。


『兄上、聞こえるか?』


「ああ、聞こえるぞ」


『大丈夫ですよ』


 俺たちの返事にサムズアップで返すセス。場所は宿屋の一室?

 部屋を出て、そのまま外へと出ると、目の前に広がるのは絶賛開拓中って感じの広場。


「ここって王都の北西だっけ? そのアミエラ子爵が担当してるってあたり?」


『うむ。ここが開拓拠点だな』


 待ち合わせをしているという中央広場(仮)に向かいつつ、状況を説明してくれるセス。

 アミエラ子爵領は元々、ウォルースト王国の北西の端にあって、人口1万人ほどの街。そこから更に北西側に広がる森を開拓という話らしい。


 今のこの場所はその街から半日ほどの場所。

 この辺りまでモンスターは駆逐できてるそうだが、肝心の拠点作りが間に合ってないらしい。


「そうなんだ。結構、切り拓かれてるみたいだけど」


『そこは金曜、土曜と立ち上げたギルドが奔走したゆえな』


 マジか……


『二日でここまで進むんですね』


『兄上たちも会った生産組のメンバーが、フル回転でギルド業務をこなしておるゆえの。

 ここで調達した素材は加工されて王都へと向かっておるし、それをまた別の方面の開拓組が購入することで、十分黒字が出ていると聞いたぞ』


 うへ、すげえな。

 そりゃまあ、ロープだったり木箱だったりはいくらあっても足りないだろうから、余った端から王都へって感じなんだろうな。


『む、あれだな。ナット殿、ポリー殿』


『お、セスちゃん、ちっす』


『こんにちは』


 で、カメラを見てサムズアップするセス。多分というかパーティーを組んだんだろう。


「お二人さん、ういっす」


『こんにちは』


『お、ショウにミオンさんか。昨日は大盛況だったみたいだな』


『……今日は先生はいないわよね?』


 ごめん、いいんちょ。いるんだこれが……

 なんかミュート印のマスクつけて、【私はいません。精霊の話に】ってフリップ出してるけど。


『ポリーさん、光の精霊は取れたんですよね?』


『え、ええ。セスちゃんのおかげなんだけど、いいのかしら?』


『気にすることはないぞ。悪く言えば「実験台になってもらった」といったところだしの』


 国語教師こえーな……

 まあ、それはそれとして、いいんちょは二つ目の精霊を使役できるようになったと。

 キャラ作成で与えられてたのは樹の精霊だっけ。ミオンいわく、モンスターを拘束できたりする当たりの部類らしい。


『あら、セスちゃん。これからモブ狩りかしら?』


『む、ベル殿もか? 良ければ同行せぬか?』


 おい、セス。そのベル部長が現れるのは完全に仕込みだろ?

 そして、完全に予想外のプレイヤーがもう一人……


『ベル、知り合いかい?』


 銀髪ショートの長身美女、雷帝レオナ様……マジか。

 ナットは二人を知ってるからか完全に硬直してるし、いいんちょはよくわかってないのかナットの様子におろおろしてる状態。


『ええ、最近知り合って、よくメイン盾に入ってもらってるセスちゃんよ。プレイヤーズギルド「白銀の館」のギルドマスターでもあるわ』


『セスという。二人は我の友人でナット殿とポリー殿だ。おっと説明いただかずとも存じておるぞ。雷帝レオナ殿』


『はは、面白い娘だね』


 楽しそうに握手する二人。

 ホント、度胸座ってんな、セスの奴……


『で、ボクも混ぜてもらっていいかい?』


『あー、知人に限定配信しておるので、それでも良ければだが』


『全然かまわないよ』


 マージーかーよー!

 って、またカメラにサムズアップするセス。

 だと思ったよ。わかったわかった……


「ども、ショウです」


『ミオンです』


 その言葉に珍しく驚いた顔になる雷帝レオナ様。

 そして……


『あはははは! こんなところで話題の無人島ペアと知り合いになれるなんてね!』


 それはこっちのセリフです……

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