第67話 もう一手何かが必要
「ルピ、なんか珍しいものあったら教えてな」
「ワフン」
海岸を後にし、西の森の罠を確認に。
最短距離なら10分ちょいぐらいだけど、見つけたいものがいろいろあるので、ふらふらしながら進んでいく。
『鳥、見かけませんね』
「いるけど、見つけられないのかなあ」
実際にリアルで山の中に入ってすぐに鳥を見かけることってないと思う。
でも、鳴き声ぐらいは聞けそうなもんだけど。
『海岸沿いの方がいるかもですね』
「え?」
『かもめさんとか』
「ああ、そっか。東の海沿いの崖とか見た時に全然気にしてなかったけど、いたのかもしれないな」
ちょっと盲点だった。
かもめ、うみねこ、あとはサギとか?
「ワフ」
「お、チャガタケ。ありがとな」
適度に採集してバックパックに放り込む。せっかく作ったし。
その他にも、キトプクサやらレクソン、そして、
「これは……ゆず?」
『でも、小さいですね』
「だよな。とりあえず鑑定っと……」
【グリーンベリーの実】
『グリーンベリーになる小さい果実。酸味が強い。
料理:皮、果汁を飲料、調味料として利用可能』
調味料きた!
名前的にはブルーベリーとかに近い方なのかな。
「酸味ってどれくらいなんだろ? まあ、食べてみたらわかるか」
『大丈夫ですか?』
「調薬に反応してないし、大丈夫でしょ」
小指の先ぐらいのそれを1つもいでパクッと……
「〜〜〜〜っ! すっぱっ!!」
『ショウ君?』
「あー、酸っぱかった。でも、最初だけだな。そのうち甘くなってきて美味しい」
レモンに近いかな? 酸っぱさはさらに上だけど。
あー、これはあれだ。フラワートラウトを焼いたやつにぎゅっと絞ると超美味しい気がする。
土曜のライブは飯テロするか……
「ワフ」
『え、ルピちゃんにはちょっと……』
「かなり酸っぱいけどいいのか?」
「ワフン」
うーん、本人が欲しがってるならいいのかな。
まあ、毒があるわけでもないし、食べてダメなら吐き出すよな。
「ダメならぺってしろよ?」
手のひらに小さいのを一粒だけ乗せて差し出すと、それを躊躇なくパクッとするルピ。
「クゥ〜〜」
『ルピちゃん、大丈夫ですか!?』
ぎゅっと目を瞑るルピに心配するミオンだけど……
「ワフッ!」
「大丈夫みたい。っていうか、結構好きなんじゃないかな」
酸っぱさが終わって甘くなってくると美味しいのは同じっぽい。
とはいえ、こればっかり食べてると口の中が麻痺しそうだし、適度に摘んで帰って、肉や魚の味付けに使わせてもらおう。
「さて、そろそろ罠の場所な気がするけど……」
『気をつけてくださいね?』
返事の代わりに頷いて、気配感知を見逃さないように集中する。
その気持ちが伝わったのか、ルピが足音を消してスルスルと先行し始めた。
………
……
…
「あー、やられちゃってるな……」
罠があった場所は盛大に荒らされて酷い状態に。
スネアトラップに使っていたロープが途中でちぎれていて悲しい。
『逃げられました?』
「いや、多分、奴に獲物取られた……」
『アーマーベアですか?』
「うん」
なんか明らかに、鹿でも猪でもないでかい足跡があるし。
多分だけど、罠にかかったグレイディアを横取りして持ち帰ったんだろう。
「ワフッ!」
「ああ、いい加減、あいつどうにかしないとだよな」
『戦うんですか!?』
「もう少し準備したらね。武器はこの手斧が強くなったし、次は鎧かな。ランジボアの革があるから革鎧にして、鉄板もつけて硬くしてからだけど」
あと、できればキャラレベルをもう1つ上げたい。
ナットに聞いた話だと、キャラレベ10になった時はBPが20貰えるらしいので、それも全部ステータスに突っ込む予定。
装備とステが整ったら、また作戦を考えないとだよな。
サローンリザードの麻痺毒が効けばいいんだろうけど、ゴブリンリーダーに麻痺がかかってた時間を考えると微妙。
新たな切り札になりそうなのは精霊魔法だけど、今のところいい使い道が思いついてないし……
とりあえず残されたロープを回収してバックパックに詰める。
この場所はしばらくは罠は置けそうにないかな。
「よし、戻るか」
「ワフ」
***
「ふう、お疲れさま」
『お疲れ様です』
リアルに戻ってくると、ベル部長はまだIRO中。
ヤタ先生は明日の授業の準備をしてるのかな?
「二人とも時間前に終わってくるのはすごいですねー」
『ちょうどキリがいいところでしたから』
洞窟に戻ってから採集したあれこれを整理。
キャラがデフォで持ってるインベントリ内は時間停止なので、兎肉と猪肉と野菜を詰め込んである。外に出しとくと腐りそうだし。
日持ちのする形に加工したいところなんだけど、やっぱり燻製とかにしたほうがいいのかな。そうなると塩が必要なんだよなあ……
唯一、チャガタケは放り出している。放り出してるっていうか干してる感じ。
本当は洞窟の外で干したいけど、ログアウト中に雨に降られる可能性もあるので、洞窟内の風通しの良い場所に石壁ブロックを積んで、その上に転がしてある。
これだけであっさり【干しチャガタケ】になってくれたのはラッキーだった。味も良くなったし、シイタケまんまって感じだ。
『ショウ君?』
「ああ、ごめん。食材の保存方法をちょっと考えてて」
最初のうちは必要になったらバイコビット狩ればいいかって思ってたけど、ここ最近は雨が降ってたりするし、そうなるとちょっとなあ。
ルピが食べる量も増えてきたので、備蓄があるといいなあっていう。あと、やっぱりベーコンとか作ってみたい……
「お肉の保存といえばー、干し肉か燻製肉ですねー。どちらもビールに合うので先生も好きですよー」
「……俺ら未成年なんで」
いやまあ親父に勧められてビール飲んだことはあるけど、そんな美味いとは思わなかったんだよな。
「そろそろ塩を確保すべきじゃないでしょうかー?」
「そうなんすよね。でも、岩塩が見つかるとは思えないし、やっぱ海水を煮詰めるしかないのかなあと……」
海水1リットルを煮詰めて、塩が30gほど取れるんだったかな。
IROの時間カットがあるから、頑張って10リットル分、300gほど用意できればしばらくはなんとかなる?
「私の勘が当たっていればー、そんなに苦労しなくて済む気がしますよー」
「勘?」
「素材加工スキルが効くんじゃないでしょーかー」
あー……
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