第63話 精霊石と精霊魔法

「うわ、雨かよ」


 プレイヤーズギルドの件は夜にってことになったし、動画も無事アップされて、再生数がちゃんと上がり始めたのでIROへログイン。

 なんだけど……


『結構、降ってますね』


「クゥン」


 しょんぼりなルピと洞窟から外を眺めると、しっかり降ってて外に出ようかという気にはならない。

 石窯が外にあるせいで、雨が降ると飯が作れないのは問題だよな。


「料理は無理か。ルピ、中でご飯にするからちょっと待ってて」


「ワフ」


『石窯のところだけでも屋根をつけたいですね』


「だね。とはいえ、火を扱う場所だし、やっぱり石壁レンガを組んだ方がいいのかな」


 トタン屋根とか作れれば、石壁+トタン屋根で大丈夫な気はする。煙突部分も上じゃなくて、後ろに煙を出すようにとか。いや、そもそもトタンってどんな金属なんだろ……


「ん?」


 洞窟内の広間に戻ってくると、増やした光苔が足元を照らしてくれてるんだけど、一箇所だけ妙に明るいところがある。


『どうしました?』


 ミオンの言葉を聞きながら、その光の元へとしゃがみ込むと……


「え? 何これ? あ、放り出した魔石か?」


 指を近づけても熱かったりはしないので、つまんで目の前に持ってくる。

 魔石の時は黒っぽかったそれは、いつの間にか透明になっていて、光源が中でふわふわしている。


『ショウ君、鑑定を』


「あ、そうだった。さんきゅ」


【精霊石(極小):光】

『光の精霊が宿った魔晶石』


「は?」


『精霊さんですか!?』


 え、なんで? こんな洞窟の中に光って……苔光ってた! って、そうじゃない!


「えーっと、精霊魔法……あった! 取れる! 【精霊魔法:Lv1】必要SP4!」


 迷わず取得! 来い!


【精霊石(極小):光】

『光の精霊が宿った魔晶石。

 精霊魔法:MPを消費して光の精霊を使役することが可能』


「やった!」


『すごいです!』


「……精霊魔法ってどうやって使うんだろ?」


 思わず取っちゃったけど、使い方がわからん!


『フォーラム見てきましょうか?』


「あ、うん、お願い」


『はい。ちょっと待っててくださいね』


 エルフがキャラ作成時に精霊魔法使えるって話だし、情報ゼロってことはないと思う。

 それにしても、なんで『魔石』だったのが『精霊石』ってのになったんだろう。

 ん? いや待て、この『魔晶石』ってなんだ? これをもう一回……


【魔晶石】

『魔石からモンスターのマナを抜いたもの。

 元素魔法:MPを溜めることが可能。精霊魔法:精霊の棲家となる』


 ははーん……

 ここに放置してたら、いつの間にか魔石からモンスターのマナが抜けて、魔晶石になったってことか。

 じゃ、他の魔石も? と思って、放置してあったそれらを探してみる。

 この辺にどさっと置いた気がするんだよな……


「ああ、無くさないように木のコップに入れたんだった」


 で、その中の魔石は変化なし。

 多分、放置したときにこぼれたこの1つだけが魔晶石になったっぽい。……なんで?


「うーん、こうかな?」


 極小サイズの魔石を3つ取り出して、さっき拾った場所、古代遺跡の入口前、洞窟の入口前にそれぞれ置く。

 何かしら古代遺跡が原因で魔石が魔晶石になってるなら、これで差が出てくれるはずなんだけど……


『ショウ君、わかりました』


「ありがと。どういう感じ?」


『精霊にイメージを伝えると、それを大まかに理解して具現化してくれるそうです』


「え? それだけ聞くとなんかすごい優秀っぽいんだけど」


 元素魔法みたいに詠唱もいらない?


『その「大まかに理解」っていうのが大変だそうですよ。全く何も起きなかったり、消費するMPがすごかったりするそうです』


「なるほど……」


 精霊にお願いしてお任せって感じだけど、うまく伝わらなかったら、そりゃ何も起きないよな。

 あと思った以上にMP使われるとかもちょっと怖い。このゲーム、MP0になるとスタンするって聞くし……


「ま、試すなら安全な場所でだよなあ」


『使ってみるんですか?』


「うん。あ、そうだ、光の精霊ってどういうことができるとか書いてあった?」


 光の精霊に「風でバリア張って」とか「水流起こして」とかは無理だと思う。

 無難なところだと、たいまつがわりの明かりとかかな。戦闘中での目潰しとかできると強そうだけど消費MPが怖い。


『あの……』


「あ、書いてなかった?」


『多分、光の精霊を使役してるのは、ショウ君が初めてだと思います』


「え? ……マジで?」


『はい。エルフの皆さんは風・樹・水・土のいずれかの精霊っぽいですよ』


 確かにそれはわかる。

 エルフが火の精霊をバンバン使うイメージはあんまりないし。

 でも、光の精霊はもう使役してる人がいそうな気がしたんだけどなあ。


「たまたまフォーラムに載ってないだけかもだし、とりあえず無難そうなのを試してみるよ」


『無難そうな、ですか?』


「うん。えーっと……」


 この洞窟をふんわり照らす程度の灯りを天井付近、あのへんに……

 精霊石を握って、そうイメージを伝えると、


「おわっ!」


 スーッと光の球が登っていって、天井に当たる手前で止まると、洞窟内が一気に照らされて明るくなった。

 ちゃんと照明がついてる室内ってぐらいになって、広間がどういう感じなのか、ちゃん把握できるレベルに明るい。


『すごいです!』


「良かった。うまく行ったっぽい」


 消費MPどれくらいだろ? あれ? 10ちょいってかなり少ない?


「なんか、思ってたよりもMP使ってないんだけど、こういうものなのかな?」


『その精霊に向いていることなら少ないという話がありました。でも、まだまだ検証しているところみたいです』


「りょ。まあ、エルフの人たちも今はまだ手探りだよな。キャラ作って1週間も経ってないし」


 自分で少しずつ色々試していけばいいか。

 少なくとも、ログハウスができた時に部屋の照明で悩むことは無くなったし。


「あれ? これいつまで光ってくれてるんだろ? 光ってる間はMPも継続消費してる?」


『風の精霊で飛び道具を防ぐことができるそうですけど、解除をお願いすればいいそうですよ。

 お願いしてる間は必要に応じてMPが減るらしいので、気をつけないと一気にMPが無くなるそうです』


「あー……」


 飛び道具防いでってお願いしてる時に矢が100本飛んできたら、防ぎはできても昏倒するってことか。うん、やばいな。


「この広間を照らすだけなら、そんな状況にはならないよな。よし、鍛冶やるか」


『あの……私が調べ物してる間に、ルピちゃんにご飯あげたんですか?』


「!? ごめん! さっきの『待て』扱いになっちゃってた?」


「クゥン……」


「すぐ作るから!」


 俺の『のんびり』はなかなか遠そう……

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