木曜日
第62話 やらかしリスト
つつがなく授業が終わって部活の時間。
いつも通り、俺とミオンが鍵を開けてベル部長を待つ感じに。
多分、昨日の夜は、ベル部長も懇意にしてる生産組と話し合いをしたはずだし、それがどうなったか気になるところ。
『ショウ君、今日投稿する動画、確認してください』
「あ、先週が木曜だったからか」
『はい。今週はライブします?』
「まったりした感じのならかな。ああ、でも、ヤタ先生がいてくれた方がいいか。収益化して初ライブになるし」
変なのが絡んでくる可能性があるし、ミオンが心配。
魔女の館みたいにチャンネルの雰囲気が出来上がるまでは、先生の監修があった方がいい気はする。
『先生がいてくれるか聞いてからにしますね。土曜の夜のつもりなので』
「りょ。俺は問題ないよ」
そう答えつつ、アップ予定の動画を確認する。
ライブ前の昼に罠をあちこちに仕掛けてる様子と、奥の手として用意した麻痺ナイフの準備とかがメイン。
『アンチパラライズポーションの話も入れてますけど、外した方がいいですか?』
「あー、例のプレイヤーズギルドの話があるから?」
『はい』
どうだろ。もう十分稼いだんじゃないかなあ。
「このままでいいんじゃないかな。ベル部長が『やめて』って言ってきたら考えるけど、前に『俺の好きにしていい』って言ってたし」
と部室の扉が開いてベル部長が現れた。
「お待たせ」
「ちわっす」
『こんにちは』
なんかウキウキで自分の席についてVRHMDをかぶるベル部長。
「昨日の話だけど、プレイヤーズギルドを立ち上げる方向でまとまったわ!」
「はあ……。やっぱり俺も参加で?」
『ええ、みんな喜んでたわよ』
「りょっす。でも、俺とミオンは声だけってことで」
その言葉に頷くミオン。だよなー。
俺だって、面識のない相手が集まる会議とか「ここにいていいの?」って感じになりそうだし。
『あの、セスちゃんはショウ君の妹だって皆さんに言ったんですか?』
そういやそうだ。俺をギルド外取締役にって言い出したのはセスだよな。
「そこはうまく誤魔化したわよ。前にライブの解説に入ったのも、ミオンさんが私のファンで交流があって手伝ったってことにしてあるし、そのツテでお願いしたってことにね」
「助かります。俺はゲーム内で嫌がらせを受けることもないけど、
ハラスメント通報とかは完備してるし、中3の
大丈夫だとは思うけど、それでもMPKとかされる可能性。あと、あいつ、サエズッターもやってるし。
「ミオンって
『はい。この間教えてもらってフォローしました。見ますか?』
「いや、今はいいや」
何書いてあるのか気になるけど、炎上するタイプではないはず。
あいつは——言葉遣いはともかく——言ってることはまともだしな。
『昨日の夕飯はクリームシチューだったんですよね』
「……はい」
まあ、それくらいならいいよ。
「みなさん揃ってますねー」
ヤタ先生が現れ、そのまま自分の席に。
ミオンが週末のライブの話をするのかなと思ったら、
『今日、投稿予定の動画のチェックお願いします』
そっちが先だった。
ベル部長とヤタ先生に動画を渡すミオン。
「ええ、見せてもらうわね」
「はいー」
「あ、俺はオッケー」
問題があるとしたら、アンチパラライズポーションの製法の部分にベル部長から待ったがかかるぐらいだろうけど。
「いいと思うわ。これでライブのところまで追いついた感じかしらね」
『はい』
「一応確認なんですけど、アンチパラライズポーションの製法はもうオープンにしても?」
「ええ、問題ないわよ。国のポーション買い取りも終わってるし、今は新規ユーザーをターゲットにした普通のヒールポーションの方が需要あるわね」
あ、もうピークは過ぎたんだ。なら、気にする必要もないかな。
結局、ナットには言えないままになっちゃったのが申し訳ないなあ。
「問題ないですねー。投稿しちゃってくださいー」
『はい』
手慣れた感じで投稿も終わって公開すると、瞬く間に増えていく再生数……
『ヤタ先生。土曜にライブをやろうかと思うんですが、サポートしてもらえますか?』
「はいー、いいですよー。どういう感じのライブにするつもりですかー?」
『ショウ君のマイホーム訪問の予定です』
ああ、そういや前のライブは洞窟の前で終わってたっけ。
洞窟の中と古代遺跡の方も紹介する感じかな? あの鍛治部屋は羨ましがられそうだよなあ。
「えっと、できれば、その前にプレイヤーズギルドを立てるメンバーとの会合を設けたいんだけど、いいかしら?」
「俺はいつでもいいですけど……そんな長い時間やるわけじゃないですよね?」
「短く終わらせるには『やらかしリスト』が事前にあった方がいいんだけど……」
その『やらかしリスト』って名称やめてもらえますか?
『私の主観で良ければありますけど』
「マジか……。いや、俺自身だとやらかしてるのかわかんないし、ミオンの主観でいいと思う。ってか、助かるよ」
『やらかしリストじゃなくて、すごいリストですからね?』
「あ、はい、うん……」
ベル部長もヤタ先生もニヤニヤしないでください……
「それじゃ、今日の8時半からでいいかしら? リミットは1時間って言っておくから安心して」
「え? 今日は魔女ベルのライブの日じゃ……」
日・火・木だったのが、火・木・日になったはず。一緒だけど。
「今日はもともと休むつもりだったから問題ないわ。火曜にプレイヤーズギルドの話がわかった段階で、日曜までに立ち上げたいと思ってたから」
「そういうことなら……了解です」
『わかりました』
あんまり長くてもダレるし、30分ぐらいで終わるといいな。
今日はいよいよ鍛治やるつもりだし。
「ちなみに、今そのリストってある?」
『はい。これです』
渡されたテキストデータを見ると……
————
[S] 無人島発見
[B] かまど、テント、食器作成
[B] ゴブリン追跡
[S] ルピちゃんに応急手当、仙人笹
[S] ルピちゃんをテイム
[B] ランチプレート作成
[A] 罠作成・設置
[A] 粘土採集・土鍋・瓶・甕作成
[A] 皮なめし剤作成
[A] アンチパラライズポーション作成
[A] 仙人笹ポーション作成
[S] パラライズポーション作成、麻痺ナイフ作成
[S] ブービートラップ各種設置
[S] ゴブリン集落の掃討
[A] 川魚捕獲・調理
[S] 古代遺跡発見
[S] 古代魔導炉・古代魔導火床発見
[A] 採掘場所発見
[A] 光苔育成
[B] 石壁ベッド作成
[A] ロープ作成
[S] 住居の獲得・マイホーム設定
[S] 建国宣言可能(※非公開希望)
[B] 石窯新設
[A] ランジボア討伐
[A] 兎肉の鍋料理
[A] 縫い針・目打ち作成
[B] ポーチ作成
[B] バックパック作成
————
「このSとかAとかってミオン的なランク?」
『はい』
建国宣言可能とかがSなのはわかるけど、川魚捕獲・調理とか兎肉鍋ってAかなあ。
ミオンがそう思ってるって話だからいいんだけど。
「見せてもらえるかしら?」
「どぞ」
あ、ベル部長、フリーズした……
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