第61話 どのあたりから?

「はあ……、俺、そんなやらかしてるかな?」


『お二人とも褒め言葉で言ってますから』


「そう思うことにしとくよ……」


 結局、プレイヤーズギルドを作る話は、まずベル部長とセスと生産組の間で話し合ってからということになった。

 それで本当にやるって話になったら顔合わせ、というかヤタ先生の指示通り、ベル部長が限定配信して俺とミオンがそれを見る形で参加することに。


「ワフ?」


「ん、大丈夫だよ」


 なんだか心配そうに首を傾げているルピを撫でて落ち着く。

 IROにインすると、どうやら小雨が降った後らしく、広場が少し濡れていた。


 地べたに座るのもなあってことで<石壁>の魔法で簡易ベンチを作ってルピと座る。

 とりあえず飯にしてからポーチ作ろうかな。それが終わったら、いよいよ鍛治の予定。


『ルピちゃん、お野菜食べますか?』


「ん、どうだろ。ルピ、レクソン食べるか?」


「ワフン!」


 好き嫌い無いっぽいし、ルピはいい子だなあ。

 あ、でも、玉ねぎとかダメなんだっけ? レクソンは多分平気だよな。

 兎のミンチ肉にレクソンのみじん切りを散らして出来上がり。


「よし、食べていいぞ」


 ガツガツと美味しそうに食べてるのを見ると、もうちょっと量を増やしてあげたほうがいいのかなって気に。

 明日はランジボアの肉を少し多めにあげようかな。


「さて、俺は鍋にするか」


『お鍋ですか?』


「鍋っていうかしゃぶしゃぶだけどね。出汁はとりあえずチャガタケで」


 そういや、昆布は普通に海に潜ればあるのでは?

 水泳とか潜水のスキル取って素潜りすれば、普通に海の幸を食べられる気がしてきた。


「明日にでも海に潜るか……」


『え?』


「ああ、ごめん。素潜りすれば昆布とか海藻が採れそうだなって」


『そうですね。でも、海のモンスターが出たりしないか心配です』


「ああ、確かに。うーん……」


 岩場とかで足を引っ張られたりしたらと考えるとゾッとする。浅瀬から少しずつ探索するか……


 薄くスライスした兎肉をチャガタケの出汁が効いたお湯にさっとくぐらせて……


「お、うまい。けど、ポン酢とか欲しい……」


『ごまだれとかでも美味しそうです』


「あー、いいね。ごまの方は探せば見つかるかもか」


 次はレクソンを……これは青臭さがあるし、ヘタっとなるまで茹でてからいただく。

 ふむ、これもなかなか……


『ルピちゃんが欲しそうに見てますよ?』


「ん、やっぱそろそろご飯の量が足りなくなってるのかな。かなり大きくなったよね?」


『はい。しっかり食べてますもんね』


 兎肉とレクソンをセットで茹でてやって、ルピの空いた皿に置いてやる。

 熱いのをちゃんとわかってるのか、しばらくスンスンして、冷めたのを確認してから美味しそうに食べてくれる。


 結局、ルピと二人でバイコビット3匹分を食べてお腹いっぱいに。


「ふう。ルピは寝てていいよ。散歩行く時は呼ぶから」


「ワフ」


 洞窟のベッドに行くのかなと思ったら、そのまま俺の隣に丸くなる。

 可愛いのは相変わらずだけど、大きくなったなあ。


「さて、ポーチでも作りますか……」


 ………

 ……

 …


【裁縫スキルのレベルが上がりました!】


「こんなもんかな?」


『ちゃんとできてますよ。また部長に報告しないとです』


「いやいや、さすがにポーチぐらいは作ってるでしょ」


 サローンリザードの革とバイコビットの革紐でできたポーチ……巾着袋。

 仙人笹から作ったヒールポーション1瓶を入れて腰にぶら下げる。


「あー、こうなるのか」


 インベントリを開くと瓶サイズが1枠分追加されていて、かつ、そこは常にアクセスできるようになっていた。

 2Dゲームでいうところのショートカットみたいな感じなのかな。探さなくてもというか、ポーチに手をやれば出せる……当たり前か。


『便利そうですね』


「うん、薬をすぐ取り出せるのは大きいかな」


 もう少し大きめのサイドポーチとか作ってみるか? いや、いくつもぶら下げたら、今度は体動かすのに邪魔になりそうだし。


『次はバックパックですか?』


「あ、それだ。採集する種類も量も増えたし、一度に持ち運べる量を増やさないとな」


『裁縫スキルが上がれば革鎧とか金属鎧も?』


「いいね。今日、ナットがSS見せてくれたけど、ああいう複合鎧? あれくらいなら作れそうな気がするし」


 そのためにランジボアの皮の加工もしとかないとなんだよな。で、皮を革にするためのパプの実を取ってこないと……


『ショウ君?』


「あ、ごめんごめん。革に加工するためのパプの実が足りないなって」


 屋根用にと思って、防水があるサローンリザードの皮はそれなりに溜め込んである。バイコビットの皮はもっとあって、どちらも洞窟に置きっぱ。


『前にロープで仕掛けた罠も見に行った方がいいのでは?』


「ああ! そうだった!」


「ワフッ!」


 ………

 ……

 …


 パプの実はしっかり採集できたけど、罠の方は空振り。

 その分、レクソン、チャガタケ、キトプクサをしっかり採集して、採集スキルもレベルアップした。

 そして、思い出したもう一つのこと。


『鳥の羽、見つかりませんでしたね』


「もうちょっと奥へ行けばあるのかもだけど、装備整えないと怖いんだよな」


 あの罠の場所より奥、北東方面はアーマーベアがいる可能性が高い。

 キャラレベルは上がってきたけど、装備が追いついてないので、そっちが整うまでは慎重に……


【素材加工スキルのレベルが上がりました!】


 戻ってきてさっそく皮の処理を。


「ふう、これで素材加工もレベル5か。でも、レベル上がって具体的にどうなるんだろうな」


『品質が向上するとかでしょうか?』


「なるほど。ロープとかなら、切れにくい方が助かるもんなあ」


 ログハウスを建てるとして、高い場所に木材を運ぶのにロープは必須だよな。

 なるほど。生存圏の拡大のためにロープとかが品切れになるのもわかる……


『その革でバックパックを作って今日は終わりですか?』


「かな。今って何時ぐらい?」


『10時過ぎたところです』


「りょ。30分もあれば作れると思うけど……」


 うーん、型紙もないので一発勝負なのは怖い。

 ああ、適当な大きさの石壁を作って、それを包むように作ればいいのか。

 背中の大きさを考えると……


「<石壁>」


『え?』


「ああ、ごめんごめん。これにこうやって……」


 サローンリザードの革を被せてからロープで縛り、横に切れ込みを入れていく。

 あとはうまくバックパックになるように、縫い代を残しつつカットして……


「……まあ、最初はこんなもんだと思おう」


 微妙に左右が不揃いだったので、真ん中で折ってから形を調整。

 あとは縫い代部分に穴を開けて革紐で繋いで行き、最後はくるっと裏返す。袋部分は完成かな。


「うん、縫い代が見えなくなると、綺麗にできたように見えるな」


『すごいです。これに肩紐をつけるんですか?』


「そうそう。あとは蓋もつけるかな。せっかくサローンリザードの革に防水ついてるんだし、雨降っても中身が濡れないようにしたい」


 着脱を考えると、ベルト金具とかが欲しいんだけど……鍛治と細工で作れそうな気がしてきた。これって別に『やらかし』じゃないよな?

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