第51話 ワールドクエスト?

「ワフン!」


 帰宅ダッシュは当然ルピの勝ち。それでも結構遅れずについていけたのは、ステータスのおかげかな? ルピが手加減してくれてる説もあるけど。


『罠は仕掛けないんですか?』


「ちょっと蔓をアップデートしようと思って」


『アップデート?』


 見てもらったほうが早いと思うので、ちゃっちゃと作業開始。

 蔓をゴブリンが持ってた棍棒で軽く扱き、樹皮部分だけを剥く。これを集めて土鍋で煮る。水に少し灰を混ぜておくといいらしい。


「時間かかる作業でも15分で終わるのがいいよな。あとはこれを干して編めばロープになるよ」


『すごいです。ショウ君って、どこでそういうの習ったんですか?』


「親父にかな。小学生の頃はキャンプとかあちこち連れて行かれたから」


 キャンプっていうか野営? なんかサバイバルなことを色々と教えてもらった気がするけど、飲み水の確保も火の起こし方もIROなら魔法で済んじゃうしな。


 煮込んでる間に簡易の物干しを作る。といっても、前に組んだテントのフレームを作り直すだけだけど。


「そろそろいいかな」


『火傷しないでくださいね』


「大丈夫大丈夫」


 棍棒で絡めとって水を張った壺に移す。

 軽く洗って絞ってから干していくんだけど、家で洗濯してるみたいな気分になってきた……

 これも15分で乾くのかな。ま、今のうちに川の様子見に行くか。


「ルピ、今度は川に飛び込まないでくれよ」


「ワフ」


 川まで降りてきて囲いの中を見てみると、結構大きな川魚が5匹ぐらい入り込んでいる。


「よしよし。じゃ、入り口を閉じて、あとは捕まえるだけだな。ルピ、逃げそうだったら頼むぞ」


「ワフッ!」


 捕まえた魚を壺に放り込んでいく。

 飛び跳ねて逃げそうになった奴はしっかりとルピがキャッチ!


「ナイス!」


『ルピちゃん、ナイスです!』


 捕まえた5匹は全部同じ魚っぽい。とりあえず鑑定。


【フラワートラウト】

「清流を好む淡水魚。

 料理:焼く調理が一般的。燻製なども美味」


 おお! これは美味そう。さっそく帰って焼いてみるかなと思っていると、


【古代遺跡が発見されました!】


「え?」


 あ、そうか。「された」だから、俺じゃないな。

 誰か他のプレイヤーが見つけたっていうワールドアナウンスだよな、これ。


『少し見てきます』


「あ、うん」


 ミオンは公式フォーラムでも覗きに行ったのかな。

 この島とは関係ないだろうし、そんな慌てなくてもいい気がするけど。


「ルピ、戻って料理しようか。魚嫌いじゃないよな?」


「ワフン」


 料理っていっても、とりあえず串に刺して焼くぐらいかな。

 うーん、フライパンが欲しい……。というか、油とか小麦粉とかバターとか、料理のことを考えるだけでも、足りないものが多すぎるんだよなあ。


 このフラワートラウトは燻製も美味しいらしいけど、やっぱり塩とか香辛料がないとだし、そろそろ塩は真面目に考えるかな。


 ………

 ……

 …


 フラワートラウトをさばいて串に通して遠火にかざす。

 ルピが目をキラキラ、しっぽふりふりでそれを眺めてるのが可愛い。

 塩がないので淡白な味になっちゃうかなと思ったけど、脂が乗ってるのかいい感じにポタポタと……


『戻りました』


「おかえり。何かわかった?」


『古代遺跡を見つけたのは、ベル部長のパーティーみたいですよ。スクショが上がってるのを見ましたが、セスちゃんも映ってました』


「マジかよ……」


 ミオンの話だと、王国の南東側に古代遺跡の塔を見つけたらしい。

 結構高い塔らしいけど、近づくまで見えなかったとかどうとか。まあ、ゲームギミック的なものなのかな?


『明日のライブで中に入ってみるとか言ってたそうです』


「へー、さすがに今日見つけて、すぐ突入はしなかったんだ。あ、いや、単に明日のネタにしただけか」


『明日はベル部長のライブ見ます?』


「うーん、まあ明日の部活の時間に聞いてからかな」


 見たい気持ちも当然あるんだけど、それ以上にこっちもやることが多い。っと、魚焼けたかな?


「あちっ」


 1匹を木皿に移してナイフで割ってみる。しっかり中まで焼けてるっぽい。


「もうちょっと待ってくれ」


「ワフ」


 スンスンと匂いを嗅いで待ちきれなさそうなルピ。火傷させたくないので、もうちょっとだけ『待て』してもらう。

 残りの4匹も皿に移したところで、


【料理スキルのレベルが上がりました!】


 あ、うん。レベル上がって何か差があるのかわからないけど、まあいいか。

 それよりも出来上がりの方が気になる。仙人竹から作った箸でまず一口……


「うまっ! ルピ、食べていいぞ。熱いから火傷するなよ?」


「ワフン!」


 ちゃんと冷めたところからガツガツと食べてる。というか、骨もバリバリ食べてるの強い。


『美味しそうです……』


 ミオンが恨めしそうにそう呟くんだけど、分けてあげることもできないしなあ。

 二人で5匹を平らげてお腹いっぱいに。満腹度が100%を超えてそう……


【古代遺跡が発見されました!】


「えっ! また?」


『見てきますね』


「あ、うん、行ってら」


 ルピも満腹になったのかお昼寝モードっぽいし、俺はロープでも編もうかな。

 十分に乾いてる蔓の樹皮をったものを2本を絡めていく。太さは加工前の蔓と同じぐらいになるけど、強度は随分と上がったはず。


「ん、いい感じ」


 軽く引っ張って強度を確認してると、


【素材加工のスキルが上がりました!】


 今度はこっちか。まあ、5まではやってればすぐ上がるって話だもんな。

 それにしても、ミオン戻ってこないな……


【ワールドクエストが開始されました】


「は?」


 ワールド……クエスト? ナニソレ??


『ショウ君、戻りました。けど、また何か起きたみたいですね』


「うん、ワールドクエストだって。ちょっと見てみるよ」


 ゲーム内の通知が光っているので開いてみる。

 っていうか、クエスト確認用のウィンドウあったんだな。美姫セスも使ってなかったし、全然知らな……ベル部長が見てたっけ。


「えーっと……」


【ワールドクエスト:生存圏の拡大】

『グラニア帝国の皇帝ジクレストは後継者を決めぬまま崩御し、第一皇子ジグムント、第二皇子バークレストの後継者争いは内戦へと発展してしまった。

 戦いを嫌う帝国民はウォルースト王国、マーシス共和国へと逃れることとなり、両国は急激な人口増加に生存圏の拡大を余儀なくされた。

 目的:未開拓地からの魔物の掃討、および、新たな街の開発。達成状況:0%』


「なんかすごいオーダー来てる。新たな街を作れだってさ」


『プレイヤーだけが住む街を作るんでしょうか?』


「うーん、さすがにそれは無理な気がするけど……」


 ショップ店員とかギルド受付をロールプレイしたい人はいない……いても少ないよな。

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