第47話 石壁の使い方

「ワフ!」


「よしよし! 飯作るから、ちょっと待ってくれよ」


 結局、あの後、古代遺跡については軽く話す程度で解放された。

 ベル部長もあんまりネタバレされてもと思ったのか、洞窟の奥にプレイヤーだけが開けられる扉がありましたって話だけ。


 その後、美姫が王国でメイン盾をしてると聞いて、ベル部長がスカウトというか、まあ一緒にプレイしましょうって流れになってIROへ。

 固定メンバーになるかどうかは不明だけど、妙に意気投合してたし、楽しめるなら何よりってことで。


「あー、変な妹でごめんな」


『いえ、そんな。私は一人っ子なので、少し羨ましいです』


「そうなんだ」


『いつもショウ君がご飯作ってあげてるんですよね?』


「そそ。今日はビーフシチュー」


『羨ましいです……』


 そんな事を話しつつ、テントの撤去を開始。

 セーフゾーンのある洞窟内に拠点を移すことにした。


 当面やることに鉱石掘って鍛冶やってが加わったし、狩りも今のところは密林の方がメインだし。

 今まで仮だったかまどやら石窯も作り直す予定。あれからスキルレベルも上がったし、もうちょいまともなのになるだろう。


「よし、引っ越すか。ルピ、行くぞー!」


「ワフッ!」


 最低限必要なものだけインベにしまって、あとは放置していくことに。

 まあ、散らかってるのが気になったら、あとで処分しよ。


『洞窟の広場から砂浜まで道があるといいですね』


「あー、そうだね。毎度、草木をかき分けて進むのも面倒だし、斧ができたあたりで小道ぐらいには切り拓くか」


 あの後、鍛冶で作る物の順番を考えて、まず最初はツルハシに。

 ゴブリンリーダーが持ってた棍棒があるので、ツルハシの頭を作れれば行けるはず。

 次に斧かな。初日に調べた伐採スキルで木を切るのに必須なのと、戦闘スキルに斧があってちょうどいいかなと。


「まずは荷物を洞窟の中に放り込むか。ルピ、好きに遊んできていいぞ。あ、サローンリザードには気をつけろよ」


「ワフン」


 心配しなくても大丈夫って顔で密林へと駆けていくルピ。多分、もうトカゲよりも強いんだろうな。


 洞窟内は古代遺跡と繋がった扉を開いたままにしてるせいか、真っ暗というわけではなくなった。少しすれば目も慣れてくる。


『光苔がどうなってるか楽しみですね』


「どうだろ。そんなに早く根付いたりは……してるっぽい」


 夕飯の準備にIROを落ちる前、試しに古代遺跡入口の扉近くの石に光苔を移植してみた。

 移植したときは特に光って無かったし、時間かかるもんだよなと思ってたんだけど……


『水をあげたのが良かったんでしょうか』


「そうかも。お、これって……ダメか」


 スキル一覧に植物学ってのがあるのを見つけたものの、取得できない状態になっている。


『取れない感じですか?』


「うん。学問系のスキルは全部ダメっぽい。何か条件があるんだろうけど、今は引っ越し優先かな」


 というわけで、持ってきた荷物を出して一箇所にまとめておく。次にセーフゾーン近くに寝床を。


「この辺でいいか」


 テントに使ってた長めの流木で、雑ないかだのようなものを作る。釘はないので、トラップ用の蔓で結ぶしかない。

 この上に草を布団の代わりに敷くつもりだけど、その前に位置合わせ。


「安定しないなあ。地面もこれもガタガタだからしょうがないんだけど」


『石をかませて高さを揃えるとかでしょうか?』


「それしかないか……。あっ!」


 インベからゴブリンマジシャンの戦利品の魔導書を取り出し、


【魔導書(初級)】

『元素魔法の初級魔導書。

 元素魔法:<火球><石礫><土壁><石壁>……』


 の中の、


<石壁>

『任意の大きさの石の壁を作る』


 よしよし。


「<石壁>」


 イメージしたブロック? レンガ? そんな感じの小ささの石壁ができあがった。


『魔法ですか?』


「うん。石壁の魔法を小さくしてみた感じ」


 軽く蹴ってみると下の岩とくっついてるわけではなさそう。けど、その岩肌とはうまく噛み合ってるあたり、ちゃんと石壁として立つようにできてるっぽい。


『……その組んだフレームはもういらない気がしますね』


「だよな!」


 サイズが小さいせいかMP消費も少なめ。これを並べればベッドになりそうな予感。固くてめっちゃ背中痛くなりそうな気もするけど。


「いや、待って。この石壁って時間で消える?」


 フィールドと戦闘が別のRPGだと、戦闘中に出した土壁とか石壁って戦闘終わったら消えてるもんだしなあ。


『元素魔法なら誰かが使ってそうですし、調べてきましょうか?』


「あー、うん、お願いします」


『はい!』


 ミオンが調べに行ったみたいなので、さっきどれくらいMP使ったかを改めて確認。10%、いや、5%にも満たないぐらいか。

 MPの自然回復は1分で1回復。数分で使った分は回復するけど……


『ショウ君、見つけました。ずっと残るそうです』


「え、マジで?」


『はい。えっと、攻略wikiの石壁のページ、読み上げますね』


 ミオンが見つけてくれた攻略wikiに書かれてたのはこんな感じらしい。


――――

<石壁>

 元素魔法。消費MP1〜不明。

 魔術士ギルドで売っている『魔導書(初級)』に記載。


 任意の大きさの石の壁を作る魔法。

 デフォルトのサイズは、高さがキャラ身長程度、幅はキャラの肩幅の倍程度、厚みはキャラの厚み程度。時間で消滅などはせず残り続ける。


 消費MPは作るサイズに依存し、デフォルトのサイズで作ると100以上消費する。なお、同サイズの土壁なら消費MP25程度。

 石壁らしく硬さが売りだが、重量的に設置した場所から移動させることがほぼ不可能なため、壁として使われることはほとんどない。

 敵の足元を荒らすなどの目的であれば土壁で十分。消費MPも土壁のほうが少ないのでそちらを使うべき。


 なお、街中で石壁を試したりすると、衛兵がやってきて撤去するように言われるので注意。自力撤去できない場合はNPC人足を雇う必要がある。>魔女ベル石壁事件


 商業ギルドの納品クエスト『レンガの納品』『石畳素材の納品』は、クエストで指定されたサイズの石壁を納品しても達成可能。

 常設クエストではないので、商業ギルドに行った際には確認するといい。


関連項目:土壁、魔女ベル石壁事件、納品クエスト

――――


「魔女ベル石壁事件ってめっちゃ気になるんだけど……」


『街中で試したの部長だそうです』


 ベル部長、何してんだか……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る