月曜日
第48話 おすすめキャラビルド?
「おは」
「おは。ライブすごかったみたいだな。俺は後から見たんだけど、大活躍だったじゃん」
「まあ、準備だけはしっかりやってたからな」
ナットはライブの時間は普通にIROプレイしてたらしい。まあ、普通はそうだよな。
「ところで王国の方はどういう感じなんだ?」
「うーん、全然緩い感じだな。帝国にいたときは街中からして『内戦起きそうでやべえ』って感じだったんだけどな」
「へー、まあ、のんびりできていいじゃん」
………
……
…
午前の授業が終わって昼休憩。
この間の一件から昼飯は、俺、ナット、いいんちょ、ミオンってメンツになった。
いいんちょ的にも安心らしい。どういう意味なんだか……
「土曜日にライブ配信をしてたのを見たわ」
「お、いいんちょもIROの魅力には抗えませんか?」
そうナットが茶化すとギロッと睨まれる。まあ、いつものやりとり。
「実際のゲーム内容と伊勢くんがやってる内容とは違うのよね?」
「ゲームシステムは同じだけど、やってることは全然違うかな」
「ショウの真似したいとか、ショウがいる島でスタートするのは無理だからな」
ナットが懲りずに茶化すと、ミオンがこくこくと頷いている。
「あんなの真似する気にもならないわ。前の動画も見たけど、サバイバルじゃない」
「それは否定できないなあ。でもまあ、自力で無人島を開拓するなんて、ゲームの中でないと体験できないし」
当面の目標のログハウス建ててのんびりには、まだまだ山のようにやることあるけど、あれこれやるの楽しくてしょうがない。
「でも、犬を飼えるのは羨ましいわね」
「あー、俺もそれは思う。ルピちゃんだっけ? めっちゃ可愛いじゃん」
「うん、可愛いのは間違いない」
ミオンもこくこくと頷く。
「ショウにしては珍しくセンスのある名前つけたよな」
「うっせ。ルピってセンスのいい名前つけてくれたのはミオンだっての」
そう答えると、ナットもいいんちょも「ああ、なるほど」みたいな顔をする。
ミオンがそれに不思議そうな顔をしてるけど、俺にネーミングセンスがないのは確かなので反論もできない。
「それで、普通にゲームプレイしてる人たちの動画も見たんだけど、戦争とか内戦とか話してたのは何なの?」
「あー、それな……」
ナットが日曜から始まったメインストーリーを順を追って説明してくれる。
こういうのって途中から参加すると状況がよく分からなかったりするし、始めるなら早めの方がいいんだよな。
「じゃ、プレイヤー同士で戦争するわけじゃないのね」
「だな。一応、参戦する方法はあるって話だけど、かなり厳しいって公式で言ってたし」
アップデートの話もかいつまんでしてくれる。
ただ、ナットが王国の冒険者ギルドに行っても、傭兵として参加の依頼というかクエストはなかったらしい。あれは帝国の中だけってことなのかな。内戦だし。
その話に考え込むいいんちょ。やっぱりIROがだいぶ気になってるみたい。というか、背中を押して欲しいって感じ?
「興味あるなら試しにやってみれば? 初月は無料だし」
「そ、そうね。興味はあるのよ。あるんだけど、不安っていうか、多人数でっていうのが怖いなって」
「美姫の話だと、手以外には許可した相手しか触れられないんだって」
「そそ。セクハラ対応なんかもAIで監視してるし、めっちゃ対応早いって聞くぞ」
セクシャルハラスメント通報ってのが別にあって、ひどいやつはBANされるそうだ。ウェアアイディでBANされるので、二度とプレイできなくなるわけで……
「わかったわ。やってみる。けど、キャラクターをどう作ったら良いかもさっぱりなのよ」
「俺は無人島特化だから、ナット任せた」
「うーん、どう作るって言われてもな」
首を捻るナット。
自分のキャラならともかく、他人の、しかも女性プレイヤーのキャラ作成とか悩むよな。
「ん?」
ミオンが俺の袖を掴んで引っ張る。
「やりたいこと……」
「ああ、うん、そだね。いいんちょがIROでやりたいことって何?」
「そ、そうね。……魔法を使ってみたいかしら」
そう恥ずかしそうに言ういいんちょ。いや、別に普通だと思うけど。
「元素魔法なら純魔か魔法剣士だな。どっちもテクニカルだけど……」
純魔。純粋に魔法だけを上げ、攻撃力を高くするキャラビルド。ベル部長もそうだったはず。
魔法を使うのでMPが生命線だし、ダメージの高い魔法はヘイトをもらいやすいので……と俺でもちょっと遠慮したい。
魔法剣士は序盤はどっちつかずになるし、中盤以降は状況に応じてどっちを使うかっていう選択が大変な感じ。
MMORPG初心者向けで魔法ってなると……
「神聖魔法の方はどうかな。硬めの神官とかテンプレっぽいやつ」
「それはどういう感じなの?」
ベル部長がいつかに言ってたビルド。基本的には近接戦闘をして、必要になったら神聖魔法で回復っていうわかりやすい感じ。
やることが決まってるので、序盤で悩むことはないけど、テンプレの宿命っていうか……
「周りに似たような人多いのって嫌じゃね?」
「だよな」
ナットも最初から大剣を選ぶようなギャンブラーだからなあ。それできっちりトップ組に近いレベルまで上げてるのもすごいけど。
「ん?」
「武器……」
「あー、いいんちょ、使いたい武器とかある?」
「武器って……飛び道具でもいいなら弓なんだけど」
「そいや、いいんちょは弓道部入ったんだったな」
そうなんだ。全然知らなかった。
ナットは陸上だし、弓道場に向かういいんちょとか見たのかな。
「あれ? 弓を使って、魔法もっていうと……」
「エルフだな」
「……えるふって何かしら?」
そ、そっかー。そこから説明かー……
………
……
…
「へえ、そのエルフって種族にすると、最初から精霊魔法っていうのが使えるのね」
「らしいぜ。ただ、連れてる精霊はランダムなんだってさ」
「あ、そうなんだ」
今まで精霊魔法のスキルは取る方法も全く分かってなかったらしい。
新規制限解除でエルフが選べるようになって、最初から精霊魔法スキルを取得済み。しかも、精霊が一体ランダムでついてくるそうだ。
「何より、いいんちょはエルフが似合うと思うぜ」
「そうなの?」
「エルフってだいたい貧乳美人だしな!」
あ、おい、ナット……
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