第45話 古代遺跡に眠るもの

「部屋、いや、作業場?」


 サイズ的には教室ぐらい。ここも廊下と同じで天井の謎照明で明るい。


『作業場っぽい感じですね』


 特に怪しい感知もないので、奥に見える設備? へと近寄る。


「これ、ひょっとして……」


 鑑定してみると、


【古代魔導炉】

『古代に使われていた鉱炉』


 鉱炉来た!


「やった! これで鉱石があれば金属が扱える!」


『ショウ君、スキルを取ってから鑑定を』


「ああ、そうだった! さんきゅ!」


 取るべきスキルは決まってる【鍛冶:Lv1】これだ。必要SP1なので余裕。

 ついでに【採掘:Lv1】もSP1で取得。あとは鉱石がある場所さえ見つければ。

 と、その前にもう一度鑑定。


【古代魔導炉】

『古代に使われていた鉱炉。薪の代わりにマナを注ぐことで高温を維持する。

 鍛冶:鉱石をインゴットへと変える。鉱石の種類により必要MP量は増減する』


 鍛冶スキルを取って鑑定したことで、何となく使い方も理解。

 掘ってきた鉱石を入れたあとに、MPを注いで暫く待つ感じかな。


「MP消費で動くのか。あー、でも、街の生産施設とかだとお金払えば消耗品は用意してくれるんだっけ」


『はい。鍛冶も素材加工や陶工と同じかと』


「金の分をMPで払ってる感じかな。まあ、金がない場所用ってだけで、特別すごいってわけじゃないか」


『MPは自動で回復する分、すごいと思いますよ?』


「そうでした……」


 金は稼がないとダメだもんな。

 これバレたら羨ましがられるのかねえ。まあ、盗みに来られる心配はないから、気にしなきゃいいだけなんだけど。


「ワフ」


「うん、他も見ないとな」


 少しスペースを開けて、今度の設備は火床ってやつか。さくっと鑑定。


【古代魔導火床】

『古代に使われていた火床。炭などの代わりにマナを注ぐことで高温を維持する。

 鍛冶:インゴットを熱することが可能』


『熱するだけですか?』


「熱すると柔らかくなるから、それをカンカンして形にする感じ?」


『なるほどです』


 そしてその周りには、金床にハンマー、ハサミ、タガネが数本ずつ収まった道具箱。


「水桶や砥石、これは耐熱手袋と前掛け? いたれりつくせりだな」


『あの……、そこで鍛冶をやって酸欠になったりしないんでしょうか?』


 あ……いやいや、ここで実際に作業してたはずだよな。と上を見上げると、どうやらちゃんと考えられてるっぽい?

 空調なのかダクトのようなものが天井についている。動いてるのかどうかは不明。ひょっとしたら、鉱炉とか火床に連動してるのかも。


「多分、あれがなんとかしてくれるんじゃないかな。まあ、やってみたらわかると思う」


『確かにそうですね』


「結局、この部屋は鍛冶用の作業場ってことかな」


 見回すと他には特に何もないスペースが広がっているだけ。実際に何か作ったあとに置きっぱにできそう。で、


「あの扉は、さっきの通路に繋がってるんだろうな」


 教室でいうと、後ろの入口から入ったわけだけど、教壇にあたるところに見える扉。


『はい。ちょうど通路が左折したぐらいだと思います』


「じゃ、開けてみるか」


 ぐっと取っ手に手をかけると、


【祝福を受けし者のアクセスを確認しました。解錠しますか?】


「はい」


 そう答えて扉を開けると、やっぱり先程の通路の先へと出た模様。

 右を見ると、その先は右折しているので間違いないなさそうだ。


「よし、先へ進もうか」


「ワフン」


 一人だと不安な場所でも、ルピがいてくれると心強いんだよな。見てない方を見てくれてるっていう安心感というか。


「一緒にいてくれてありがとな、ルピ」


「ワフ〜」


『私もいますからね』


「はい……」


 ………

 ……

 …


 結構な距離を真っ直ぐ進むと、廊下の右側に見える下り階段。そして、正面には観音開きの扉。

 ここの入口と同じ扉なんだけど……


『取っ手が見当たりませんね』


「これ、こっちから開かないってことかな。とりあえず触れてみるか」


 反応なし。押してみ……無理でした。


「向こうからじゃないと開かないか、何か別のフラグがあるか……」


『となると、階段の方ですか?』


「かな。まあ、行けるだけ行ってみるよ」


 階段も明るく、特におかしな気配もない。

 足元に気をつけつつゆっくりと階段を降りると、その先に石畳は無く、ここに入る前の洞窟の広間のような場所だった。


「え? なんだこれ……」


 謎の照明装置もないのに、あちこちの岩肌が薄緑に光っていて神秘的な雰囲気を醸し出している。

 よくよく近づいて見てみると、苔自体が発光してこうなっているっぽい。


『すごく綺麗で不思議です』


 ミオンの声を聞きつつ、その苔を鑑定してみると、


【光苔】

『マナを吸収して光る苔』


 とだけ表示された。料理にも調薬にも関連性はないのかな。


「これ、ゴブリンがいた洞窟に移植? 株分け? できると思う?」


『できそうな気はします。入口の扉を開いたままにしておけば、ここと同じような環境じゃないでしょうか?』


 なるほど。謎照明からの明かりが差し込んでくればそっくりだ。

 外に出るまでの通路でも育ってくれれば、もっといいんだけど。


「このために取るスキルって農業じゃないよなあ……」


『ちょっと違う気がします。園芸とかでしょうか?』


「あー、園芸って言われるとしっくりくる……」


 花とか盆栽とか観葉植物ってだいたい園芸ってくくりだもんな。先々、家建ててから庭の整備とか考えると、スキルがあったら取ってもいいのかも……


「ワフッ!」


「あ、ごめん。どうした?」


 奥の方に行ってたルピに呼ばれて駆け寄ると、苔の光を鈍く反射する石と採掘スキルに反応したマーカーが!


「鉱石!?」


『え?』


「本物はもっと地味なんだろうけどゲームだからかな。えっと、採掘すればいいんだろうけど、手では無理だよな……」


 インベを漁って採掘に使えそうなものを探す。

 とりあえず、この錆びたナイフとカナヅチでいいか。


「ルピ、破片飛ぶかもだから、ちょっと離れてて」


「ワフン」


 そう言うと、しっかりと理解して、背中の後ろに隠れるルピ。

 欠けた刃先を採掘ポイントに当て、柄頭をカナヅチで叩く。叩いて叩いて叩いて……ごろんと塊が一つ足元に転がり落ちた。

 ルピが興味があるのかすんすん嗅いだり、前足でちょいちょいするのが可愛い。


【鉄鉱石】

『鉄の原材料となる石。

 鍛冶:鉱炉にてインゴットにしたのち鉄製品に加工が可能』


「おおー、やっと掘れた。大変だな、これ」


『鉱石を掘るならツルハシとかですよね』


「だよな。ということは、最初に作るのはツルハシかなあ」


 ツルハシ作って掘りやすくなったら、今度は運べる量を増やしたいところだけど……


「ワフ?」


「ん、本格的にやるのは今度にしようか」


 結局、モンスターは出てこなかったけど、たまたまなのかな?

 それなら、セーフゾーンもあることだし、洞窟前の広場に拠点を移したほうが、いろいろと捗る気がする。


『ショウ君、今さっき公式からお知らせがあったんですが、今晩8時から、IROのプロデューサーがアップデート解説のライブ配信をするそうです』


「へー、気になるし見ておくか」


『部室でみんなで見ませんか?』


「あ、そだね」


『私の方から連絡しておきますね』


 ベル部長は今日のライブは休みだし来そうだけど、ヤタ先生はどうだろ。っていうか、そろそろ適齢期って年な気が……急に寒気がしたのでこの話はやめよう……

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