第十五業俯瞰者達とRock Is Dead ①
オレが自由だというのなら、それは走り続けているからだろう。
ジミ・ヘンドリックス
「ん?外で落雷でもあったのか?」
闇無明刹が帰って来た賀茂照義を不思議そうに思っていた、焦げついた匂いがあった。
「まぁな、また風呂に入らないと不味い」
「そうか、俺も二回目入ろうかな」
「………そうするか」
「いや、待て、お前ら、俺は息子と共に風呂に入り直す、その後、お前らが入り直せ」
「「??」」
「照義、特にお前は分かるよな?」
「………待て、お前が勘違いしている相手じゃないぞ、相手も同じ雷使いと思うな」
「コピー魔術、いやコピー魔導具だろ」
「かもしれないな」
「じゃあ、いくぞ、猛」
「どこって?」
「温泉だ」
「テレビ良いところなのに」
「これから特撮みたいなのやるから」
「………あっ、そう?じゃあ行く」
正義が始動する、親子連れの暴力性。
「で、どこ行ってたのよ」
「どこでもいいだろう?」
「頭部から出血しておいてそりゃないだろ」
ジェニファー・ロールスロイスに設問されるが、そういうのは返答しない主義らしい。
「また、適当な
「別にいいじゃねぇか」
「良くないわ、そういうのは情報戦よ」
「なせばなる!善きにはからえ!とかさ」
「………で、敗退してきたと」
「いや、どうにも
「
「じゃあ俺は温泉に入り直すか、髪の流血までは洗い流してくれないそうだからなぁ」
「致死量以外異界の条件指定の指定外か」
「よっと」
そうして極限殺気した先、道が阻まれた。
高級旅館の廊下、鬼柄親子が待っていた。
「よぉ」
「………あっれぇ?」
「何ですか、私のファンならサイン会は向こう数年間、無いのですのでお引き取りを」
「違うな、お前、村邪だろう?」
鬼柄強志が指摘する、それは紛れもなく、その存在を表す真実であり、答えであった。
「だとしてもサイン会は数年間無い」
「いいや、俺はお前のアンチだよ」
「アンチ?」
「お前、電磁銃は作れるよな?」
「えぇ、まぁ」
「じゃあ、犯人確定だ」
「逃げるか」
極限殺気で屋外に飛び出た。そして逃げ惑う、公園、様々な遊具が歪んでいる場所。
そこに先回りされていた。
「飛んで火に入る夏の虫ってやつだな」
「冬ですが?」
鬼柄強志の言葉にそう返す緋走村邪。
「ねぇ、お父さん、こいつ緋走でもあるよ」
おんぶにだっこ、だっこされた鬼柄猛がそういうもう一つの真実、答えを言い当てた。
「奴が賀茂と敵対するようになるとはね」
鬼柄強志、彼も異能を持っている。
「後でアイツにそういう悪いことをするなと言い聞かせるように言っておかないといけないな、おい猛、爆炎をまず思いきり放て」
「どうして?」
「いいからやれ」
「はーい」
そうして爆炎。
「目眩ましか」
緋走村邪はそれに目をつぶりながらも、爆炎の中に向かって走っていき、違う火だるまにぶつかった、それは
「極限殺気………!」
「ご名答だ!」
鬼柄強志の異能が自分と
その上で発火能力の異能まである。
「ちっ、ならこちらにも色々ある」
人形が悪魔に憑依して暴れて人殺しをするホラー映画はあるが彼そのものも人形であり、それ故にもう一つ人形を作って悪魔を移す。
ゴシック調のファッションに身を包んだ
「完全に自分を再現したらスゲェと思うし、人形と人間の差異も不明点が多いからな、一言だけ言うならば誰かにとっては人形使いのように人形を操るのが世界の運営ってヤツだろうがな、お前はどっちだ?鬼柄猛君?」
「え?えーと、簡単ですよ」
鬼柄猛の言い分はとても筋が通っていた。
「人間は因果の糸を紡がれるとか言いますけど全ての因果の糸は燃やすべきです」
「そうしてただ因果的自立して自我のみが全てを締める、そういう事を在野の特異点と言う、お前らはそれを脈々と受け継いできた」
「だとしたらどうする?」
鬼柄強志の新しい質問に。
「だとしてもぶっ殺す」
と返すと同時に鬼柄強志の右腕が飛んだ。
ように見えた。
「幻爆」
切断した瞬間、爆発した、そして違う鬼柄強志がそこにはいた、鬼柄家の始まりは滝夜叉姫という幻像を愛した絵師の一族である、それを想像して写生して、その絵に射精した。
その一念、それを持って本来、現実に存在するはずではない絵の女性の腹が膨らみ、そして絵から子供が飛び出た。それは世の
「自分の死すら幻に出来る、か」
緋走村邪が改めて相性の悪さを感じさせた。
「えーとそうだ、もう一度言おう、だとしてもぶっ殺す!と言えばいいんだっけな?」
彼は自分を演じたがる自分というよく分からない性格をしていた、自分が分かりずらい。
俗にアイデンティティー・クライシスとも言い、精神崩壊とも言い、かくして彼は。
「圧倒的に徹底的にブチ裂いてやる?だっけか、えーと違う、これが俺の
村邪として新しい武器、大型リボルバー。
トーラス・レイジングブルは、ブラジルのトーラス社が開発した大型リボルバーで、レイジングブルとは怒れる牡牛を意味する。
「
風、風力、それを弾丸として射出して、それで相手の頭部を貫九ために必要な風力。
それはまるでスペイン闘牛場の牛の突進のような勢いで、それはもう『獰猛』であった。
「柔よく剛を制す、そんな言葉もある、強者は毒を使わず、毒手は性根を腐らせ、その、者を弱者となるとされるが、それでもなお、それを使うならば?どうなると思う?」
あらゆる肉食動物が毒を持った牙や爪を使えば噛みついた瞬間、引っ掻いた瞬間に勝負が決まる、決まらなくても脅威が二つある。
即座に倒せなくてもじわじわ倒されていき、じわじわ倒せなくても即座に倒される。
「この論法に矛盾はねぇ、
「チィッ!正論を吐くなよ!」
鬼柄強志はそのなまり玉を受け止めた。なまり玉と言ってもその毒性は通常より酷い。
傷口への腐食性、背中まで通り抜ける風穴。
「お父さん?」
「実像だろうが虚像だろうが幻像だろうが撃ち抜く、
「………あぁそうだ、反則行為だな」
鬼柄強志がそんな返答をした。
「まぁ、闇医者ここに呼んでなんとかしてもらいな、喧嘩は喧嘩、売られたら買う、まぁもっとも、俺じゃなくて他のヤツのだがな」
「そうか………い」
鬼柄強志は地に倒れた。膝立ちになる。
「ぐぼぁっ」
彼の心臓が爆発した、最初からそんなものは無かったという風にさせたくなったらしい。
吐血した緋走村邪、それでもなお立っている、もはや心臓など血液を送り出す装置にすることすら、村邪という中ではなかった。
「………よくも、お父さんを!」
そうして、たて続けに戦闘が始まる。
「それを見越しての
緋走村邪のみがその場から立ち去った。
「お前の命はいただく!小便臭いガキが!」
その人形は駆け出した、そして蹴りあげた。
「はぐっ」
鬼柄猛の股間、金玉、それをキックした。
だが、悶絶している暇なんて無かった。
「お、お父さんのカタキをうつ、んだ!」
彼も人形に向かって走り出した。
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