第十一業会合会合会合、終点、ラスボス戦前へ

愛はお互いに見つめ合うことではなく、共に同じ方向を見つめることである。


サン=テグジュペリ


呪禁というのは古来より呪禁道と呼ばれ、それは呪術師と呼ばれる者達にとっては必須科目であった。あらゆる術式を不成立にさせる、そういうのを『封印』と呼ぶ。


梶木鮪三千世界の蟲毒の異能いのうは封じられた、そしてこの旅館に集っていた。


鬼柄猛とその父、鬼柄強志つよし、その父の姿は燃え上がる炎のタトゥーを顔面にも施して、服装は髑髏どくろの描かれた革ジャンとかしていたが、今は旅館で用意された寝間着ねまきへと着替えている。


鬼のようなガラの悪い男だった、その炎のタトゥーは今にも燃え上がりそうなのは、彼という男の危険さを表しているのだろう。


賀茂吉輝とその父、賀茂照義てるよし、その父の姿は短髪で四角いフレーム眼鏡をしていた、高級で一点ものオートクチュールの青いスーツをしていた、それが禁煙パイポを咥えていた。


貴賤を問わなければ普通のビジネスサラリーマンのキャリア組にも見えてしまう、その冷静沈着があらゆる企業で的確な判断をするだろう、それが後ろめたい事に使われる。


紛れもなく一般的ではないダークサイドような人間だ。


李緋走とその父、闇無明刹くらなしめいさつ、その父の姿は刹の一文字が仏骨を納める塔。仏塔、仏塔の中心となる柱、それに見間違うような背の高さをしていた、十字架を首から下げているがラフな格好をしていて、そのシャツの裏には太極図のシンボルマークが描かれたのを着ていたがこちらも今は旅館で用意された寝間着ねまきへと着替えている。


光無、闇無、そして有光闇ありこうくらと呼ばれる彼等の一族はそもそも人一倍の陽気と陰気を持つ、それは成長力があるという事。


ミオスタチン関連筋肉肥大、何もしていないのに筋肉が発達すると、一見すると良い事尽くしのように思えるが、早いスピードで筋肉が成長するのはエネルギーを消費、カロリー消費率が人一倍ある、幼児ですら体脂肪は殆ど付かず空腹にも陥り易く、その体を維持する為に常人の倍以上の摂食をしなければならない、筋肉と骨格のバランスが取れず人体形成に悪影響を及ぼす症例もあり、適切な処置をしなければ命に関わる場合も多い。



、仮にそういう家業カルマの事を忘れさせられる事があったのならば殺人未遂と言えよう。


鬼柄強志は闇無明刹のそれ故の食いっぷりを見た後、この部屋に似たヤツがいるのを連想した。


彼が孕ませた子供の片割れと仲良くしているをされた梶木鮪三千世界の引率者、今では母親代わりである獅子崎九里亜、彼女もまた食いしん坊であった。


その二人には壁があるようだ。


地方テレビの番組を画面越しでは一緒に見ながらも、そこには壁があるように見えた。


「なぁ」


「なに?」


「いやなんでもない」


「なんでもないって事ないでしょ?」


「なんていうかなぁ」


「なによ」


「そうだ、お前、今、何の仕事してる?」


「さぁね」


「ほら、そうやって濁す」


「あなたの方がお茶を濁してるわよ」


一方、和室の部屋の片隅。


バケモノモンスターズ、略してバケモン、それは子供達の間で流行っているゲームだ。


今は販売されたばかりのガーネット/アクアマリンというシリーズが流行っている、それをやっているのが賀茂吉輝と李緋柱だった、通信対戦バトル、それがそこではされていた。


「いけ!キラチュウ!百万ボルトだ!」


と、叫んだのに。


「のわー!こうかばつぐん!」


と返されていた。


「やっぱり、シザリンガとサメハマーはカッコいいとこあるけど、駄目じゃないか?」


梶木鮪三千世界、獅子崎九里亜、そして忍者、くの一がいた、死村影鶴しむらかげづるもまた、旅館で用意された寝間着ねまきへと着替えている、バストとヒップがベスト、ぼんきゅっぼんの擬音が似合う。気品ある鶴のようである綺麗さと華麗さが顔から現れていた。


「二連続でやられたが次はハガネーロだ!」


黒いゴツゴツとした蛇のようなバケモノが飛び出した、はがね、そして、じめん、それはもう、でんきとの相性は悪いようだ。


「考えたものだな!」


「うんうん、でもメタグロイも良いよね」


メタグロイ、四本足の不定形の金属生命体、タイプはエスパーとはがねである。


「あーそれもいれてる」


「妥当な判断だね」


此度こたびのゲームに集ったチームニューエイジチルドレン、チーム、トリニティファザーズ、そして三姫ヒロインチーム、その最後の一人。


彼女もまたバケモノモンスターズ、略してバケモンをやり進めているようであった。


「今の環境はこれか、そしていずれ………」


彼女もまた、を有していた。


自分の息子、鬼柄猛は梶木鮪三千世界と会話をしている、彼女が忘れた天狗塚の件は彼女の心の傷トラウマなので話さないように言い聞かせてある、どんな馬鹿でも理解する事だ。


「で、夏休みの宿題、どれくらい進められた?」


「まずまずだな」


「そういってやってないんでしょ」


「かもな」


そうしたどこにもあるような会話をしていた。


「ん?照義どこいくんだ?」


「喫煙だ、旅館内に喫煙所がある」


そうして、鬼柄強志の視点から変わる。


魑魅魍魎ちみもうりょうは山のや川の木霊こだまだっているだろう、ここら辺はそれらに満ちている、それは異なる神、、そうした存在を、そうした存在は自分の異能を空間を侵食するどころか上書きする、世界を異なる世界にしてしまい、異界を形成してしまうのだった。どんな暴虐テロより災害テロだ。


「さて……」


「ん?どっかで見たことあるおっさんだな」


賀茂照義はその男が喫煙所にいながらも臆せず、入っていった。


緋走村邪と呼ばれる男であった。


「んー、三世代勢揃いって感じだな」


「お前のとこもか?いやお前は?」


その存在感が先程の誰かに似ていた。


「緋走ってのは何も変わってないよ」


「そうか」


赤いスーツはどこまでも赤いが、その襟を捕まれて、背後の壁に頭をぶつけられた。


よって新しい赤色がその赤色に追加された。


「で?お前は何が目的だ?」


「さぁね、俺は自由に生きればそれでいいんですよ、この世の中、呪縛ルールは多いだろ?」


「バランスブレイカーでもあり、ルールブレイカー、知っていてやるのがたちが悪い」


「そうだ、知らないままやるより悪い事だ」


「ちっ、まぁいい、まだ、前日では呪縛ルールがまだのようだからな、殺すぞ」


彼の両目は殺意が怒気として色濃くなる。


「バカが、俺を殺すのに


場所が変わる、時が切断された、その極限殺気ヤクシャもしくは極限殺気ヤクシーは始発の駅から終着駅までの移動時間を省略するようなものだ、過程を無くし結果だけがこの世に残る。


透き通って整った鼻、今日日プチ整形と言われるものだが、本来のあらましは凄惨極まる。坊主頭、鋭い眼光は日本のあらゆる暴力団の組員達や組長達よりも研ぎ澄まされている。それが帽子と茶色いサングラスで隠される。イタリアンマフィアのようで、前の世界ならとある政治家の着こなしのスーツ姿だ。


そんな謎の男は旅館とは違う和室にいた、刀、刀、刀、刀、それが剥き出しになっていながら、その椅子の背もたれになっている。


座椅子でこそあるが異様で異常だった。


鋼鉄、それも日本の玉鋼たまはがねではなく、ダマスカス鋼と呼ばれるものだ。


足の小さい単なる木の机、高級な鬼殺しとコップ、おつまみは天然マグロ、醤油はワサビを既に溶かしている、晩酌をしていた。


「………なんじゃ?」


ラスボス戦前しゅうちゃくえきです」


突然の出来事老人は困惑、理解した男二人。


「で、殺すヤツが一人増えたところでなにかがどうにかなるって話じゃないだろう?」


落ち着いて賀茂照義は煙草を吸い始めた。


アメリカンスピリット、通称『アメスピ』、パッケージにインディアンが描かれている。


室内は明るい、彼の影も現れていた。


ジャポンッ、と背後で音がした、彼の背後からだ、その正体を掴むべきとさて掴む。


鮫、大型、映画では人を食べるタイプ、それが大きくも、黒い影として、蠢いていた。


「これは魔導具どころか魔物だな………」


魔導具とは魔物を憑依させてロボットのように動かしたり、武器として形にする物だ。


魔物そのものを操るのは大魔導師と呼ばれるものしか出来ない、そもそも魔導師とは。


バチバチと、人体ではおよそ発せられない電圧と電力、それが賀茂照義から発せられた。


大きな黒い影に電気が走る、、老人も放電した、この法則性をと誰かが常々口を酸っぱくして言う。


陰陽師ならば逆凪さかなぎとも言う。


だが、それで丸焦げにならずにいた。


「なんじゃ?」


もう一度、彼は疑問視を続けた。


「………同調をややしたが、この鮫、その辺の海産物が年をくっただけじゃないような」


「答えを言ってやろうか、全ての鮫の父、大きさはともかく、常に激怒で狂乱している、なんていうかそれで表向き冷静に見えるがヤンキーチックはキャラ被りがギリギリだぜ」


「………ちっ、クトゥルフの化身か」


賀茂照義はその神話体系を少なからず理解する事にした、それは常識外の『亜』、その亜の神、つまりは姿


だが、ある程度既存の神話との整合性が含まれている場合がある、ニャルラトホテプはインドのヒンドゥー教のシヴァのマハーカーラ、それは大いなる暗黒を意味すると同時に大いなる時間を意味する、破滅するだけの概念、破滅するための概念、世界の終わりと滅びを渇望するドゥームズディ・カルトのための概念である、と、彼は推測をしていた。


クトゥルフは一番原始的な亜の神であり、海の性質の暗黒面ダークサイドの体現者、心の海、普遍的無意識の暗黒面ダークサイドでもある。ダーレスなる人物が四元素エレメントという体系をとりいれる前からだ。


それを天魔の一種、いやの一種、の一種と呼ぶべきなのかもしれない。


「何にしてもここで殺せば全て丸く収まる」


賀茂照義は煙草を口から高級な鬼殺しの入ったコップに向け痰を吐くように吹き捨てた。


「なにしやがるんじゃゴラァッ!」


老人の溢れる怒気、殺気、殺しへの煩悩と欲望、殺傷行為という人間の原理的な欲求。


「一時休戦、一時同盟だね、照義さん」


「………次はお前だからな緋走」


最終決戦が一足はやく、始まろうとした。






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