暗黒要塞村の幼年期編

第八業終焉を招く暗黒武器職人、村邪


地球のすべての住人は、いずれこの星が居住に適さなくなってしまう可能性に思いをはせるべきであろう。

老若男女あらゆる人が、核というダモクレスの剣の下で暮らしている。世にもか細い糸でつるされたその剣は、事故か誤算か狂気により、いつ切れても不思議はないのだ。


ジョン・エフ・ケネディ大統領の国連演説(1961年)。


一本だたら、一本踏鞴いっぽんだたら、一つだたらとは、日本に伝わる妖怪の一種で、熊野地方の山中などに棲む、一つ目で一本足の姿の妖怪とされるが、地方によって伝承内容には違いが見られる。


和歌山県と奈良県の境の果無山脈では、皿のような目を持つ一本足の妖怪で、12月20日のみ現れるといい、この日は「果ての二十日」と呼ばれて厄日とされた。果無の名の由来は「果ての二十日」に人通りが無くなるからだともいう、村上健司編著『日本妖怪大事典』より。


つまり怪談かいだんを語るべきがいなくなったため、語られて生まれる妖怪がいなくなる空亡(作者独自解釈)と同じく終焉はてを司る妖怪なのだろう(作者独自解釈)。


一つ目の鍛冶神、天目一箇神(あめのまひとつのかみ)の零落した姿であるとも考えられている、多田克己『幻想世界の住人たち』より。


零落した神を人間は妖怪と言い始める。


なお熊野地方を治める熊野国造は製鉄氏族である物部氏の支流である、とされている。


村正の刀は妖刀とされた、それは量産品な傾向が強く使い手の母数が多かっただけで、なまくら刀を十人使い七人が殺しても、村正を百人使い七十人が殺すのでは感じ方が違う。


だが全てが終焉はてという概念を産み出すのが『村邪』と呼ばれる存在だ。


かつて織田信長は安土城あづちじょうを作りそこから天下統一、いや天下などもはや良い、大天下せかいを征服してをしたかった。(作者独自解釈)、そして、それはする。


世界決戦用巨大傀儡せかいけっせんようきょだいくぐつ安土城あづちじょうの真の姿だ。(作者独自解釈)


それだけでも彼等の諸行は根深い。


人間そのものをどう武器化していくか?にも主眼が置かれるようになるのは無理もない話だ、その『村邪式古武術』というのは人知れず生まれ、やがて人知れず歴史の闇に埋もれた、呪術や魔術、人間そのものを魔導具にしたり、人間を使い魔、妖怪や異形異類モンスターにしたりする事の数々、それはあらゆるどんな邪教じゃきょうよりもよこしまな行いだったのだろう。


彼等一人一人が生物兵器ディアボロスであった。


どんな悪魔ディアボロスよりも悪魔ディアボロスだった。


「というわけだ」


赤いスーツに紫色の目をした男がいる、彼は過去にタイムスリップしてきたらしい、自販機前の死体の五人、加えて十人、あの十五人相手では皆殺しまで、夕方まで時間がかかると踏んでいたため、十人を過去の自分のためにころす事にした。緋走村邪ひばしりむらじゃはそれを終えてから待ち合わせに向かっていく、時間旅行というとは魔法の領域だが魔術、魔導、魔法の総本山イギリスにとってはお茶のこさいさいな技だ。


つまり、それは解明され過ぎるのだ。


温泉旅館の一室、そこには三人いた。


あのなんか窓際の謎の空間に椅子に男が一人、後の二人は布団の上に座っている。


そこら辺にいる外国人旅行客のような服装をして女性。


そしてセーラー服にムスリム女性のするヒジャブをして、眼帯をした少女がいた。


「………世界終末時計ドゥームズディ・クロック十二時ミッドナイトを過ぎるようにする、という事かしら?」


その煙草はブリティッシュ・アメリカン・タバコというイギリスの銘柄であった、それを彼女は震える指でライターをつけて吸う。


「ごめんなさい、漏らしてしまいました」


セーラー服にムスリム女性のするヒジャブをして、眼帯をした少女、その眼帯は医療用の白いのだが、そして小便もパンツから滲ませた。


「………さて、ジェニファー」


煙草を一息煙を吐き出した彼女に聞く。


彼女は地毛黒髪をブリーチして金髪だ。ジェニファー・ロールスロイス、名字が偽名そのものなのはスパイ業界の常識、彼女はイギリスの007で有名なMI6に所属している。


「何?」



「………ブラックジョークにも程があるな」


塔代受流とうだいうかる、未来視を持つ塔代財閥の令嬢、彼女の魔眼は魔眼とは言えない。天使の眼を借りているのだ。


イスラーフィール、最後の審判の裁きを知らせるラッパを吹くといわれ、音楽をつかさどる天使、その最後の審判までは地獄を見回る役目があるのだが、地獄で苦しむ罪人を目にすると胸を打たれ、嘆き悲しむ。このときのイスラフィルの涙が、雨なのだという。


アッラーがこれを止めないと溢れ出た涙が地上に洪水をもたらすのだと信じられている。


ダンテの「神曲」に登場する「黒い天使たち」は、イスラーフィールがモデルなのではないかと考えられることがある。


彼女は元くノ一であり抜け忍であり、今はサウジアラビア、アル=イスタフバラフ・アル=アマフ - 総合情報庁に所属するスパイだ。


「ここにサンタ・アリアンザがいれば自分達の秘部シークレットプレイスを教えてくれたのに」


ジェニファーがそう呟いた。彼女の眼が反応するなら最後の審判に関係があるからだ。


サンタ・アリアンザはキリスト教カトリック、バチカン市国直下のスパイ組織だ。


「い、いや、人間が持ち出す終末に関する欲求はなんです、だから反救世主アンチメシアなんですよ、なんていうのはね」


「分からないね、破壊衝動も殺人衝動も一緒くたミックスしたのが革命だろう?」


ジェニファーの問いに緋走村邪ひばしりむらじゃの答えは耳にタコが出来るほど聞いた言葉だ。


「それが邪念ダークなんだろう」


緋走村邪ひばしりむらじゃは煙草を吸う時、フィルターを引きちぎってから吸う、世界、テレビや新聞、その他の情報媒体にはフィルターがかけられているのだ。


彼の流儀ポリシーはそれを媒介しない世界の真実を探求する事をしているのだ。


なので、彼の知識はあらゆるスパイ組織からしたら、棚からぼた餅なのばかりである。


吸う銘柄は黒い悪魔ブラックデビル


「無抵抗主義は正しい、ガンジーね、貴方はどうかしら?緋走村邪りひばしり


ジェニファーの答えに彼はこう返答した。


「さぁな、適材適所ってヤツさ」


適材適所、人材の観点から言われる言葉だ。


「四字熟語と言う事は漢文?」


ジェニファーがそんな問いをした。


「どうだっけか」


彼は言葉を濁した。


「私達の関係性はどうかしら?」


塔代受流とうだいうかるが聞いた。


「知らん、ラブホテルに行きたいとしても、ここのチェックインまで二日残っている」


「顧客満足度低くするわよ?」


塔代受流とうだいうかるがその答えを聞いてゲラゲラと笑った。


「………チッ!やられた!」


ジェニファーが叫んだ。


「………この周辺に殺気が漏れてるな」


緋走村邪ひばしりむらじゃが感じとる。


「私の魔導具の一つ、黒い魔犬バスカビルがやられたわね」


「ロボット犬はよく発達してるよな」


「人形よ」


「同じようなものだろ?」


「まぁいいわそれで」


ジェニファーが彼のちゃらんぽらんに慣れた結果、生まれた妥協であった。


「犯人についての情報をやろうか?」


「いくらよ」


「俺は情報屋じゃないからなぁ、知っていることは信憑性の欠片の無いモノばかりだ」


「………それで?」


「鮫島、原初海オリジン、あらゆる『力』を取り込んで、自分のモノとする能力、も魔導具もな、海は全てのアルファにして終極オメガという、全てを飲み込みそして吐き出す」


「まだ沖縄には行ってないわね、ニライカナイっていうあの世に関する言葉がある」


塔代受流とうだいうかるが彼の情報に対して、そんな事を言い出した。


「まぁそれでいいよ」


「何も良くないわ、残骸の回収が難しいじゃない」


ジェニファーが煙草を苛立ちで噛み締めた。


和歌山県に旅行するんだ、それぐらいはしてきただろう?」

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