■■■■〚壊レル日常〛■■■■
「…………何でさっきの子猫が?」
犬だったら匂いを嗅いでとかあるかもしれないけど、猫って……って違う違う。
どう聞いたってさっきココアの声がしたはず、なのに玄関には子猫がポツリ…どゆこと?
「…まだ気づかないのですか。……よっぽど鈍い未覚醒だ。」
…私があたふたしていると子猫のほうからから背筋が冷たくなるような声が聞こえた。
「ぬぇ!?…………今なにか聞こえ…………て……」
ふとして振り向くと子猫はもう私の前にはいなかった。
かわりに……、私よりもずっとずっと大きな黒猫が目を赤く光らせて立ってたんだ。
「なに…………これ…!?」
子猫があれになったってこと!?
子猫だったバケモノは背中から二本の長い人の腕みたいなものを出して私の方に伸ばしてきた。
「なっ!?」
私はよけられないと思ってせめて少しでも衝撃に耐えられるように目を閉じる。
「…………フィラフト!!」
…!! こんな状況で聞こえたあの声に、目を開けると私たちが青緑色の透き通った球体に包まれていて私の隣にはやっぱり〚彼〛がいた。
「…て、……は?」
ココアはなぜかメイドカフェの人がつけてるようなフッサフサの猫耳をつけてるし、何よりも気になったのはココアが手に持っている大きな…鎌!?
よくわかんないけど助けもらった立場だと思うから色々言うのはよくないと思うんだけど見た目にツッコミどころが多すぎる。
…いや、今はそんな場合じゃない!!
「ココア、どういう事か説明して!!」
「ダメッ!時間がない!!取りあえず、ルシアは逃げて!!」
ココアが言うのとほぼ同時に猫のバケモノが私たちを包んでいた球体にかじりついてバリーンと音を立てて割った。
…ルシア、家に入ってから裏口を通って森の中を走り続けて!!
えっ? 今、ココアが口を動かしていないのに声が聞こえた!?…いや、聞こえたというより頭の中に響いてきたようなそんな感じが…
「ルシア!!早く!!」
…そ…そうだ、私は今、よくわかんないけど大変な状況。
考え事をしてる暇はない!!
私はココアに言われた通り家の中に一回戻ってから裏口から家を出て夜の森を走り続ける。
でも、森の中を走ると言ってもこの森はあまり人の手が入ってなくてどこを走っても木の根っこが走るのを邪魔する。
…でも、止まっちゃ駄目だ!
足を止めたらあのバケモノに追いつかれるかもしれない。
…そうだ! ココアは今、大丈夫なの!?
…うん、きっとココアは大丈夫だ。…よくわかんないけど、そんな気がする。
バキッ ダッ ガッ タタッ タタッ タタッ ……
後ろから何かが折れる音、そして何かが走ってくる音が聞こえる。
…ヤバイッ!! 急がないと追いつかれちゃう!!
私は草木をかき分けて走り続ける。
…足が痛くなるぐらいは知り続けていたら木が開けた場所に出た。
…でも、そこは百メートルは余裕にありそうな崖、これで逃げやすくなると思っていたばかりに絶望度も大きい。
…もう、逃げる場所も、隠れる場所もない。
私が覚悟を決めた頃、木をかき分けてあのバケモノが現れ、私を見て嬉しそうにニヤリと笑った。
その時「ルシア、走って!!そのままソイツと反対方向へ走り続けて」とココアの声が聞こえた。
崖から飛び降りろってこと!?
…確かにここで立ち止まっていたらあのバケモノに捕まっちゃう。
…でも、崖から飛び降りても助かるとは思えない。
……でも、行くしか……ないよね。…やっぱり。
私は意を決して崖のほうへ走る…。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
…あれ? 私、空中を歩いてる!?
全っ然理解できないけどこれなら大丈夫。私がそのまま走り続けていると夢がさめたような感覚して、気付くと私は空中じゃなくて森の中を走っていた。
…でも、もう走れない。
ふと足を見るとたくさん足を植物に引っ掛けたのか擦り傷だらけだし、どこかのタイミングで足首をひねったのか今になってから足に痛みが出てくる。
私がその場に座り込むと、私の目の前に大きな影が急に現れた。
「覚醒すらしてないガキが、ここまで、手こずらせてくれやがりましたね。」
怒りからなのか敬語と乱暴な言葉が混じった言葉でバケモノが語り掛けてくる。
今度こそ本当にダメだと思った瞬間! バケモノの頭が急にはじけた。
あたりに散らばるグロテスクな青い欠片に顔をしかめながら後ろを振り向くとそこには鎌の柄を先端にして銃みたいに構えているココアがいた。
私は痛みも忘れてココアに抱き着こうとした……けど、できなかった。
私が足を痛めてたのもそうだけど、ココアもあちこちに傷ができてるし右の足首が明らかに折れていたからだ。
「ココア、大丈夫!?」
「右足首と左肩と肋骨一本の骨折だけだから…問題なし。」
どう聞いても全治ウンヶ月ぐらいの大けがだと思うんだけど、……実際ココアもかなり顔をしかめてる。
「…!! ルシア、動かないで!!」
ココアの視線の先には頭をなくして動かなくなったあのバケモノ。…だけど、頭だった肉片がだんだんと集まっていって元の頭が…再生した!?
「未覚醒のガキだったら簡単に喰えると思ったんですがねぇ…どうやら私の見当違いの様です。………また、会いましょう。」
やけにねちっこいしゃべり方をしたバケモノはそのまま森の方へ姿を消してしまった。
「はぁ……」
全身の力が抜けるようなそんな感じ、当然言葉に表せるはずもない。
「大丈夫?ルシア。」
ココアの問いかけにココアの方がたくさん怪我してるじゃん。……とツッコミを入れようとしたとき、私はココアの足首や手や顔や手の傷がすっかり消えているのに気付いた。
「私は大丈夫だけど……ココア、もしかして魔法使いだったりする?」
私は半分冗談、半分本気で問いかけるけどココアは答えない。……あっ。そうだ。
私はココアの頭に着いた猫耳(?)を見ながら「ココア、そういう趣味あったんだ…。…に…似合ってるね…。」と数分前から抱いていた疑問を訪ねてみる。
「…………!!」
ココアは顔を赤くして固まってしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
数分後、やっと動き出したココアに私は「ココアはあのバケモノの事を知ってるの?」と聞く。
「…今は、教えられない、……そして忘れてもらう。さっき見たことも、聞いたことも……体験したことも。」
ココアがサッと手のひらを私に向けたのを見て、私は何とも言えない恐怖を感じた。
さっきバケモノに襲われたときとは違って、何か大事なものを失ってしまう、もしくはもう失っちゃったみたいな恐怖。
「ココア、やめて。……よくわかんないけど、私の記憶を消すってことでしょ?あのバケモノの事は忘れたいけど、次あのバケモノにあった時、今日と全く同じ行動をしたくないの!……だから、お願い。」
ココアは悲しいような、安心したような顔をした後、私に向けていた手を下ろして
「本当にルシアが記憶を消したくないんだったら、それでもいい。……でも、絶対誰にもこのことを話さないで。」っといった。
私がゆっくりうなずいてからココアは話を続けた。
「……じゃあ、まずは急いで家に戻ろう。急がないと…………………えぅ……」
そこまで言ってココアが急に首を抑えて地面に倒れこむ。
今の今まで気付かなかったけど、ココアの首には黒いベルトに赤い金具がついた首輪が巻き付いていて、それが今ココアの首にきつく食い込んでいる。
私は急いでココアの首輪をほどこうとしたけど、全然緩まらない。
…ただの首輪にしてはあり得ないぐらい頑丈に作られてる。
「ココア!これどうしたらいいの!?」
私が、この状況をどうにかしようとココアに話しかけているうち、彼は目を閉じて動かなくなってしまった。
「そんな!!ダメッ…ココア!!」
私が必死に呼びかけていると、森の中から十人くらいの人が歩いてきた。
「…ココア、記憶を消すか消さないかの選択はあなたが決めるものじゃない。わかるでしょう?」
その中で、白い着物を着て穴が七つ開いた仮面をかぶった背の高い女の人が言う。
女の人の周りの人たちもココアが持っていていたような、マンガやアニメの世界の人が持っているような武器を持っている。
その人たちの頭にはココアと同じように猫耳……。
女の人はココアが私にしたように手の平を私に向けて、私に「あなた、名前は何というのかしら」と聞いてくる。
これは絶対に答えちゃだめだ…。
私は名前を言わないことに決めた……けど。
「抵抗したところで無駄よ。ルシア・オルゴール・ニア。わたしにはすべてがわかるの。…聞くだけ野暮だったかしら。」
なぜか女の人は私の名前を知っていた。
「レーテー・ルシア・オルゴール・ニア。ヴェイド・ドール……。」
女の人が呪文みたいなのを唱えていくうちに私はだんだんと体が熱くなってくるのを感じた。
…たぶん、今度こそ記憶を消されちゃうんだろうな。
私はしたくもない覚悟をした。…けど、これからの結果は私の予想を大きく上回るものだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
女の人が呪文らしきものを唱え終わったみたい。
…けど、私はさっきバケモノに襲われたことも、ココアが戦ってくれたこともしっかり覚えてる。
「…おかしいわね。…普通の人間ならこの時点で………。…あぁ、なるほどね。たしかに、ココアがそうならこの娘も可能性が高いわね。……えぇ、そうね。……そうしましょう。」
女の人は独り言をブツブツ言った後、私の方を向いて行った。
「あなたにはこれから私と一緒に来てもらいます。安心して。あなたの記憶を消すわけじゃないわ。……でも、あなたはもう、普通の生活に戻ることもできない。……疑問に思うでしょう? なんでって、どうしてって……それは、〚ルシア・オルゴール・ニア。……あなた〚も〛魔法使いだからよ。〛」
…女の人が放った言葉に私は絶句する。
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