■■■■〚双子の学園生活 下〛■■■■
学校で一番の楽しみである給食を食べながら、私は反省文の事を考えてため息をつく。
…にしたってココアも二時間目が終わって私が寝る前に知らせてくれたっていいのに、しかも避難訓練が終わった後、「職員室に行くからついてきてさっき一緒に来てくれるっていったよね!?」っていっても「…そんなこと言ったっけ?」っていって
結局ついてきてくれなかったし…
…あんまため息ばっかりついてると給食がおいしくなくなっちゃうよね。
私は大盛りの給食に視線を落とす。
意外っちゃ意外なんだけど、ココアはすごく小食で今ココアが食べてる給食の量もお茶碗一個に詰め込めるぐらいの量。
「それだけでお腹減らないの!?生きてかれるの!?」って聞いたことが前にあったけど、そしたら「…うるさ……逆にルシアだって、その体の中にどうやってその量が入っているのか気になる。」って返された。(ちなみに冷たいモードのココア)
つゆと考えていると、フルギル先生が急に話し出した。
「おっ、そうだ。ルシア、反省文を書き終わったら教頭先生に出しておいてくれ、朝言った通り俺は午後から予定があっていないからな。」
…〚予定〛…ねぇ。
このクラスのほとんどは知らないけど、先生が〚予定〛と言っているものが実は、競馬、カジノ、パチンコ、という三大ギャンブルということを私とココアはひょんなことから知っている。
ちなみにそのことは宿題三日分免除ということで口止めされてる。
ココアと私で職員室に授業で使うプリントを取りに行ったとき、先生のカバンからチラリと馬券が出ているのを見たからだ。
それより………反省文、………八枚………
…いや。腹が減ってはうんぬんかんぬん。
給食でスタミナをしっかりつけて、さっさと反省文を終わらせる!!
私は意志を固めて、まずは爆速で給食を口の中にかきこんだ。
…反省文なんかじゃ私の意志は砕けない!!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
…だれか…………お助け………………………ハッ!!
帰りの学活が終わってみんなが帰った後、私は教室で一人反省文を書いていた。
…危ない危ない、反省文が全然かけなくて意識を失うとこだった。
だいたい、本の返却期限を過ぎた人への罰が反省文八枚って重すぎると思うの、なんなら私は明日にでも返すつもりだし。
反省文八枚っていうのは本を持って帰ってなくした人とか本を破いちゃった人とか本に落書きをした極悪人にのみ適用されると思うんだけど…
私が机に突っ伏しながら窓を見るとなんと、空がオレンジ色に染まり始めていた。
それだけ長い時間反省文に費やしていたというのに反省文はまだ二枚しか書けてない。
私は主語述語がおかしかろうがお構いなしに反省文をなんとか原稿用紙八枚分書き上げた。
………燃え尽きたよ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
職員室に行って顔をのぞかせると教頭先生が一人だけ残っていた。
教頭先生は一人だけこんな時間まで仕事してるんだ…と驚きながら私は本来の目的を思い出す。
「失礼します!!二年四組、ルシア・オルゴール・ニアです。反省文を提出しに来ました!!」
「…あぁ、君か。フルギル君から反省文を預かるように言われたよ。次からは気をつけなさい。」
「はい!!」
……ふぅ、終わった。
教頭先生はなんというか〚普通じゃない〛って言い方はおかしいんだけど、何か深いものがあるようなそんな感じがするからあまり近づきたくない。
私がササーっと職員室を離れようとすると後ろから「そうだ、ルシア君。」と声をかけられ私は体をビクッ!っとさせる。
振り向くと教頭先生が手に封筒を持っていた。
「これを君に渡すようにフルギル君に渡されたよ。私も何が書かれているのか気になるが君以外には見せたくないらしくてね。」
私が教頭先生に見えない角度で封筒を開けて中の入っている手紙を読むとそこには「すまん、ルシア。この前買った宝くじが四等当たりしていて、今日がその取り換え期限なんだ。十万だぞ、十万。あとで何か買ってやるから教頭や他の先生生徒には黙っておいてくれよ。」
…あの先生はホント…………。
…ていうか今、目の前に教頭先生がいるんですけど。
私は素早く紙を封筒にしまってから教頭先生に「さようなら~」といってから早々と昇降口から出る。
校内に敷かれた一本道を走り抜けて校門に出たとき、柱の裏から見覚えのありすぎる姿が見えた。
「あれ?ココア。…もしかしてずっと待ってた?…もう日が暮れてるのに…」
「ん……。もちろん。…といっても途中まで帰ったんだけどね。…早く帰ろう?」
…途中まで帰った!?
普通とは思えない行動に驚きつつ私はココアの体質を思い出す。
…多分冷たいモードのまま帰っている途中、日が落ちて優しいモードになり、学校まで歩いて戻ってきたんだろうなぁ。
ココアは昼間とは似つかないような柔らかい表情で私に話しかけてくる。
「反省文はできた?」
聞くまでもなくできたからここにいるんだけど…ってツッコミを入れようと思ったけど、もちろんココアに悪気はないだろうし、長時間待たせてしまった側の立場でそんなことを言う明けにもいかないから私はとりあえず。「うん……できたよ。」と返した。
どうもココアは優しいモードになると天然というかなんというか、冷たいモードのココアに比べるとみょうに抜けてる感じがする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ココアと一緒に大通りを通っている途中〚スクランブル交差点〛と呼ばれてる大きな交差点の信号に引っかかった。
「あぁ~、引っかかっちゃったね。」
ココアが軽く言う。
…ココア、これは笑えないよ。
〚スクランブル交差点〛は大通りにあるだけあって信号の待ち時間がめちゃくちゃ長いんだ!!
南北の車道が青の時間が十分間、東西の車道も十分と長いくせに歩道はほんの一分ぐらいしか青にならない。
何分前まで歩道が青だったのかわからないけど、最悪の場合十分間信号待ちをすることもあり得る。(マジでシャレにならない。)
仕方なく歩道にあるベンチに座りながらココアと信号を待っていると黄色い目の黒い子猫が私の膝の上に乗ってきて「みゃあ」と鳴いた。
「わぁ~。ルシア、懐かれてるね。」
ココアが子猫を見ながら、どこか羨ましそうにつぶやく。ココア、動物になつかれないもんね…。それより…
「どうしたんだろう?お腹すいてるのかな?…でも私食べ物持ってないんだけど…」
お腹が減ってるなら助けてあげたいけど、無いものはどうにもできない。
「………そうだ!!私が何か買ってくるよ。どうせあと何分待つかもわからないんだから」
「そう?…じゃあ、お願いするね、ルシア。」
私はカバンを彼に預けてからお財布を持って近くのコンビニへダッシュ!!
コンビニに入ってすぐ右にあるペットフードコーナーを見てみるけどそこにあるのは〚ドッグフード一か月分〛とか〚猫用おやつ千五百グラム〛ととんでもない量ばかりでとてもじゃないけどあの子猫に持っていくには量が多すぎる。
私がもう少し奥まで歩いておつまみコーナーを探すと〚高級乾燥鮭〛っていう超おいしそうなものが売ってた。
「………これを買うしかない!!」
高級鮭って書いてはあるけど入っている量が少ないから値段もそんなに高くないしあと…高級だし(語彙力性皆無)
私が支払いを済ませてココアのもとへ帰る。
信号近くのベンチに戻るとなぜかココアと子猫が格闘してた。
「……ココア…。何してんの?」
「…見ればわかるでしょ!!……いつぅ…。こらぁ!! おとなしくしろぉ」
ココアはすいぶん引っかかれているらしく涙目になっている。
私が子猫を捕まえて膝に乗せると子猫は急におとなしくなって、膝の上でお座りの姿勢になった。
「……………。」
…またココアが羨ましそうな目で私を見てくる……。
ココアを見ると手や首にひっかき傷をつけられてるし、格闘してる最中に地面を転がったのか服もだいぶ汚れてる。
なにをどうしたらそんなにボロボロになるくらい動物に嫌われるんだろう。
そんなことを考えつつ子猫に高級鮭をあげると子猫は「みゃ~ん」と大きく鳴いた。
「よかったぁ~。気に入ってくれたみたい。」
「…そう…………だね。」
ココアは苦笑い。
私とココアはベンチの下に乾燥鮭をおいて帰るけど後ろからすさまじい視線を感じる……ような気がする。
多分子猫が未だにココアを睨みつけてるんだと思う。
家の近くの森まで歩いてきたころ空を見上げると、またあの〚虹〛が光っていた。
「ココア、見て!!〚虹〛が出てるよ!!」
「…………。」
ココアは〚虹〛をじぃっと見たあとハッとしたような顔をして
「ちょっとだけ急ごう!」
といってきた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ただいま~。…といっても誰もいないんだけど…」
「…………。」
私はドアを開けた瞬間に自虐ギャグをかましたけど華麗にココアにスルーされた。
おかしいな…優しいモードのココアだったら何かしら反応してくれるはずなんだけど。
いまだに子猫に対してイライラしてるのか何か考え事でもしているのか…
私が自分の部屋に荷物を置いてきてからリビングに戻ってくるととてつもない速さでココアが夕食を作っていた。
「ねぇココア~。今日の歴史の宿題が問題集をノート六ページ分なんだけどその、お助けいただけはしないでしょうか…」
私は期待を込めてココアに懇願したけどココアはとある言葉で断った
「そうそう、ルシア。すっかり忘れてたんだけど今日はバイトの日なんだ。だから夕食だけ作ったら出かけるけど、僕はバイトの方で食べてくるから。…というわけで…ごめん。宿題は手伝えない。」
…両親のいない私たちがこうやって生活できているのはココアが学校に内緒でバイトをしてくれているのが理由だと思う。
ココアがどんな仕事のバイトをしてるのかは聞いても教えてくれなかったけど、特に怪我してる様子もないから危険な仕事じゃあい…………んだと思う。
ココアのバイトは不定期にあるらしくて「来週の四日目にバイトがある」ってわかってる時もあればいつあるのかわからない日もあるし、考えれば考えるほど謎が深まるバイトだ。
というかココアに宿題を手伝ってもらえないとなると私死んじゃうんだけど…
「…………にしたから、こっちはドレッシングをかけて食べて。」
…えっ?
いつの間にかココアは私の分の夕食を作り終えてたみたい。
「あっ………ありがと…。」
…ココアがなんか言ってたような気がするけど、忙しそうな彼を呼び止めてわざわざ聞き直すのも申し訳ないと思ったから私は感謝の言葉だけ伝えておいた。
ココアは窓の外を訝しげに見ながら
「じゃあ行ってくる。ルシアがコンロを使うシチュエーションは無いと思うけど火の扱いには気を付けること、あと窓と玄関の鍵の施錠をしっかりしといてね。」
と言ってそのまま出て行ってしまった。
「…………宿題…できるかな……?」
…というか私既に原稿用紙八枚分の反省文書いてるんだけど……。
もしかして本当に前世で何かやらかしちゃったのかな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
二時間後…もう寝る時間だけど私が寝れているわけなく、私はまたもや死にそうになりながら宿題をやっていた。
「もうだめぇ………死んじゃうぅ~……そうだ!!ココアが帰ってきてから宿題を教えてもらえばいいんだ!!」
なら、私がいま宿題をやる理由はナシ。
私が勉強道具を片付けてリビングに戻っている途中、ピンポーン とインターホンが鳴って「ルシア~帰ってきたよ~」とやけに明るい声が聞こえてきた。
優しいモードのココアだとしても流石に明るすぎると思うけどバイト先で何かいいことがあったのかな?
私が玄関のカギを開けるとなぜかそこにはさっきエサをあげた黒い子猫がいた。
「…………みゃ~ん。」
「………………えっ!?」
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