■■■■〚双子の学園生活 上〛■■■■

 クジラバスは〚ライヴ学園〛近くの駅に着陸して「カグネ市北ブロック中央駅デス。オ降リノオ客様ハオ忘レ物ニゴ注意クダサイ。ゴ乗車アリガトウゴザイマシタ。」と機械的な声でアナウンスが流れた。


 私は本の世界に半分取り込まれているココアに声をかけてこっちの世界に引き戻してから彼と一緒にクジラバスを降りた。


 私は再びココアに「いやぁ~誰かさんのせいでいつもより早く学校に着いちゃうなぁ~やることないのにどうしようかな~」と皮肉を言うけどココアは本を歩き読みしながら無言で歩いて行ってしまう。(しかも超速足で)


 ココアに置いて行かれないように五分くらい表道を歩くと〚ライヴ学園〛の校門に着いた。


 校門をくぐって学校の敷地に入ると一本の大きな道があって道のわきには四角い建物が12個、そして道の奥にはさっきみえたライヴ学園本棟〛が見えてきた。


 近くによって見ると遠くからは見えなかった細かい装飾がいっぱいついてる。


 装飾の一つ一つが宝石みたいで見るといつも「この学校、建てるときおかねかかったんだろうな~」と思ってしまう。


 校内の道をあるいていると不意に前を歩いていたココアが立ち止まりソーシャルデ

ィスタンスを取ってなかった私はココアの背中に頭をドンッ!!とぶつけた。


 「痛っ!!………どしたの?」


 私もココアが無言で見ている先を見るとそこには結構、厄介な人がいた。


 ………ガレビア・アーキッシュ・ニア先輩だ。


 高等部二年生の問題生徒の先輩であっちこっちで悪い人たちと一緒にいるところが先生、生徒に見られているから中等部の生徒からはあまりいい印象を持たれていない。何なら嫌っている生徒もいるくらいだ。


 …私たちは二年生になってから先輩と顔を合わせたんだけどなぜか、それっから不必要に私とココアに絡んでくる。


 そんな感じでありながら、これまた何故か高等部ではモテているというから世の中の仕組みはわからない。


 私とココアはできる限り気配を消して未知の端っこを歩いて何とか先輩に気付かれず、離れられた。


 …普段何があっても反応しない冷たいモードのココアがこうやって立ち止まるあたり、ココアもかなり先輩を嫌っているらしい。


 私たちはそのまま歩き続けて時計塔一階部分にある昇降口に着いた。


 靴を学校指定のスニーカーに履き替えた後、階段を上がってから廊下を歩く。


 ココアは学校主催の例のランキングで上位にランクインしているだけあって、廊下で女子とすれ違うと積極的に声をかけられてる。


 ただ、日中のココアは〚ほぼ表情が変わんない無口な奴〛だから「…おはよう。」とか「………そうなんだ。」ぐらいで話がなかなか長引かない。


 まぁココアがここまで人気なのは〚可愛げな顔のくせに性格は超クールというギャップがすごい〛ということからだから対して問題にはならないとおもうけど。(夜の優しいモードのココアを見せたらみんなどんな反応するんだろう?)


 ココアが数人の女子と話し終わったころ(ほぼ一方的に話しかけられていたような気が………)私たちは〚中等部二年四組〛と書かれたプレートがかかっている教室の前に着いた。


 教室に入ると中にいた10人くらいから「おはよ~!」って言われたから私も「おはよ~」と返しておいた。


 ………あれ?みんないつもこんな早い時間に学校来てるの!?


 初めて知った意外な事実に驚きながら自分の席に着き机を整理していると


「見て!!」


 と明るく大きな声がした。


 声の主はイロハ・アケボ・ルア、クラスの中でも特に明るい私の親友。


 彼女が指をさした先にはこの世の物とは思えないくらい大きくてはっきりとした〚虹〛があった。


 この〚虹〛は前までは見なかったけど最近は一日に何回も見ることがあるくらいのものになっていて、この虹に願掛けをすると願いが叶うって噂すらある。


 でも、この〚虹〛のキレイさを見ると本当に願いが叶うかもしれないと思えちゃうから不思議だ。


 でも、みんなの視線が〚虹〛に集まる中なぜかココアだけは一人読書をしている。


「ココア、たまには虹にお願い事したら?叶うかもしれないよ。」


 私はココアに言ってみたけど………


「………虹なんかで願いが叶ってたら苦労してない。………虹より本の方がよっぽど面白い。」


 ココアはやや苦い顔をしながら私にこたえた。


 ココアはどうも〚虹〛が嫌いみたい(………珍し、何それ!!)


 クラス中が〚虹〛に盛り上がる中、突如 ガラァァ と音がして(ドアの建付け悪すぎでは?)二年四組担任の フルギル・アヘン・ニア先生が教室に入ってきた。


 先生はまだ二十二才でこの学校の先生の中では一番若いんだけど、十二才の時にかの有名な〚帝国立利薬大学〛を飛び級で卒業した超超超秀才で、周りの先生からも一目置かれてる。


 それでも自分の頭の良さを自慢することがないから先生、生徒から共に人気があるんだ。


 「お~い、全員席に着け!まだ時間は早いが、俺みたいな社会人になると仕事に生活を奪われるぞ。休み時間を削らないと仕事が終わらないなんてことは日常茶飯事だからな、日ごろから時間を有効的に使えるようにしておけ。」


 二年四組は先生がこういう性格だからほかのクラスよりは朝学活が早い(私とココアはいつもギリギリ間に合っている)


「今日は二時休みに〚蒸気機械類墜落時〛の避難訓練がある、あと俺は今日の午後から大人の都合でいない。…今、心の中でよっしゃあって思ったやつ後で職員室に来い。怒らないから。」


 クラス中がドッと湧き上がる。


 先生は一通り話し終わった後、教室を出て行った。


 私が一時間目の授業の用意をしているとココアから声がかかった(ちなみにココアの席は私の隣である。)


「…ルシア、今日は学校でルシアが借りた本の返却期限日。…忘れないうちに行っといたほうがいいよ。」


「あぁ、ありがとね。」


 この学校の図書館は朝の時間と二時間目休みにしか開いてない。


 この〚藍舞学園〛は制服もなく、校風も自由でここらへんで一番人気の学校なんだけどただ一つ問題がある。


 それは〚楽器の扱い〛と〚図書館の本の返却期限〛に超キビシイってこと。


 このどっちかをヘマするだけで原稿用紙八枚分の反省文を書かされるっていう拷問が待っているからこの学校の生徒は常日頃にこの二つに気を付けている。


 なんなら絶対にこの二つでヘマしないように、吹奏楽部に入らなかったり、図書館で本を借りない生徒が多くいるぐらいだ。


 ココアの忠告を聞いてから、私は授業の準備の続きをした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「…………ルシア、起きてる?」


 朝にも聞いたセリフにデジャヴを感じながらも私は目を開ける。


 今は二時間目の社会が終わって二時間目休みの真っ最中だ。


 チャイムが鳴った瞬間に睡魔に意識を乗っ取られたから机の上にはノートと筆記用具が散らばっている。


 最近の社会は歴史について勉強してるんだけど、〚旧世界〛についての授業が難しい言葉が飛び交っていてほとんど理解できない。


 私が唯一覚えているのは、この〚アヴリオン帝国〛が〚旧世界〛では今の言葉で〚太陽ノ書〛と呼ばれていたことぐらい。


 ……そういえば、ココアは何で話しかけてきたんだろう?


「ココア、何か用でもあるの?見ての通り私は今燃え尽きてるんだけどさ。」


「……そんなの知らない。…それより図書館、行った?」


 …あ。


「ヤバイヤバイ、急いで行ってくる!!」


 私は光のような速さでカバンの中から必死になって本を探す。……すると


 ビィィィィ ビィィィィ ビィィィィ ビィィィィ


「訓練、訓練。藍舞学園上空で蒸気機械類の故障が確認されました。トレーニングホールに避難してください。繰り返します。ただいま、…………。」


 …そうだ、今日は避難訓練があった。


「…ルシア、諦めて。…あとで先生に謝りに行こう。」


 ココアの無慈悲な声が心に刺さった。


 …神様、私は前世で何かやらかしてしまったのでしょうか?…






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