第352話●紅葉さんたちのすごい計画、そしてここにも春?

圭司「えっ、なにこの『メイドルーム』って!?」

志満「すごいでしょ!なんかもともとお金持ちが住んでいたらしいんだけど、もっとすごい豪邸に移って手放したんだって。」

圭司「なんかすごいなあ。」


 間取り図によると一階に30畳のリビングルームがある。さらにそれとは別に11畳のダイニングルームがあって、庭もしっかり用意されている。一方、二階は6.5畳がふた部屋、7畳と7.5畳が一部屋ずつ、17畳の大きなベッドルームが一部屋という構成。


志満「ここに17畳の部屋専用のユニットバスとトイレがあって、でかいクローゼットも用意されてるけど、いらないから全部まとめて、リフォームに入っているよ。17畳の部屋とクローゼットはあわせて24畳なんで、三部屋に分割して、もみーの私室、幸大くんの私室、二人の寝室にすることになってる。あとこっちの専用バスルームは隣にあるもう一つのバスルームとがっちゃんこするんだ。このへんに一番大きいユニットバスを入れて、こっちは洗濯機を5台置ける洗面台付きの脱衣所スペースにするって。ちなみにここの7.5畳は私がもらうことになっているんだ。あとの3室もそれぞれ仲間が使う予定。」

圭司「へえ、みんなで一緒に住むんだね。」

志満「もみーと幸大くんは2LDK、ほかのみんなはそれぞれワンルームに住んでいるんだけど、大学通いながら仕事場との往復は大変だからね。もちろん家賃は会社へ入れるんだよ。」

圭司「そうすると一階のこのリビングルームが漫画を書くところか。」

志満「うん、そうなるよ。床にじゅうたん敷いて、執筆用の机と編集さんに待ってもらうスペースを兼ねた応接セットが入るんだ。こっちのダイニングは休憩と食事のスペースだね。」

圭司「なかなかすごいなあ。紅葉さん、そういうの考えるの好きなんだね。」

志満「たぶん幸大くんだと思うなあ。イラスト描いてたし。」

圭司「あー、あいつ、そういうの好きそうだなあ。」

志満「あと、キッチンは縮小して、仕事部屋と直接継いだ上で、洗濯スペースとメイドルームをまとめて一部屋にして、アシスタントをしてくれるみんなが帰れなくなったとき用に仮眠室を作るって。」

圭司「ずいぶんお金あるね!?」

志満「ちゃんと会社としての事業計画と返済計画を立てた上で社長が交渉して、メインバンクにしている玉川信金から融資を受けたんだ。8月頭からもうリフォームにも入っているよ。」


 おおっ!ちゃんとした会社経営をしている!紅葉さんってそんな才覚もあるのか!?


圭司「それはすごいなあ。でも、ここ駅からけっこう歩くね。」

志満「遠く見えるんだけど実際には1kmくらいだよ。」

圭司「雨の日はけっこう大変じゃない?」

志満「家のすぐそばにバスが来ているんだ。雨の日なんかはバスで行く予定。アシスタントをしてくれるみんなはバイクとか車とかだね。」

圭司「そうか、駐車場もあるんだなあ。」

志満「こっちの道路に面して止められるんだけどなんか家族がみんなでかい外車に乗ってたみたいで、軽なら6台は止められるよ。」

圭司「その辺が金持ちだった感じだな。」

志満「うん、本当にそんな感じがする。10月には全部できあがって入居するからみんなを招待しようって話しているよ。せっかくだから私たちの仲間もみんなに紹介したいからさ!」

圭司「それは嬉しいな。楽しみにしているよ!あっ、そうだ、この一軒家はもうそんなところで改造はしないの?」

志満「あとは1階と2階に男女それぞれのトイレを1つずつ作るんだ。」

圭司「えっ、男女って、専用のトイレを作るということは幸大以外にも男性がいたんだね。」

志満「あれ?話してなかったっけ?」

圭司「うん、聞いたことがなかった。」

志満「そうだったかあ。もともと漫研の同じ学年が女3人男2人でね。割とみんな気が合ったんで、5人で仲良くしてたんだ。そこに幸大くんが入ってきたからいまは男女比半々になったね。」

圭司「バランスがいいね。」

志満「そうだね。」

圭司「そうするとデビューしていないのは男女一人ずつなんだなあ。」

志満「うん、そういうことになるね。女の子のほうはわたり莉英りえっていうんだけど、この前、散仏社の『ダイヤモンドシンデレラアワード』で3次審査まで通過したから次はいけるんじゃないかって。男の子のほうは堀松ほりまつ久利ひさとし。高校の頃から劇画を書き続けているんだけど、この前、漫談社の主催している『かわさきどうじ賞』で2年続けて奨励賞を取ってね。前回は読み切りを書き下ろししていたけど、二年連続受賞は珍しいから多分連載持てるんじゃないかな。」

圭司「みんなが目標を持って同じ方向に進んでいるだけじゃなくて、デビュー後も切磋琢磨できるのはいいね。」

志満「うん!単に口先だけで応援するだけじゃなくて、みんなでストーリーのディスカッションとかをして、本当の意味で支援をしあって、デビューしようって頑張っているよ。いまは少女漫画でも男性がターゲットに入ることもあるし、その逆もあるから、両方の目線で見られるのはとてもいい感じだよ。」

圭司「そっちの仲間内もすごいいい関係みたいだな。」

志満「うん、すごいいい感じだよ。今回賞を取ってデビューが決まったみっつー……あっ、えと、根石ねいし光延みつのぶくん、なんかはすごいムードメーカーでね。締め切り間際で切羽詰まっているときとかにみんながイライラし始めると空気を和ませてくれて、本当にすごいよ。この前ももみーが締め切り近いのに最後の締め方が思い浮かばなくてイライラしててさ。幸大くんもいまが一番キツい時期だからなんかすごい険悪な雰囲気になってたんだけど、みっつーが晩ご飯の時間をわざわざみんな同時に無理矢理取らせてね。疲れているときは甘いものだって、大学の帰りに買ってきたケーキをサプライズで出すもんだからみんな驚いて満面の笑顔。」

圭司「それはすごいなあ。」

志満「私には持っていない気遣いだから本当にすごいよ。高校の時からそんな感じなんだよね。二人で遊びに行ってもものすごい気を使ってくれるし、ほんとうにいいやつだよ、みっつーは。」


 うーん?もしや、志満さん、根石さんという人が気になっているのかな?珍しくすごいべた褒めしているぞ。しかも二人で遊びにも行っているみたいだし。未亜にそれとなく情報提供して、紅葉さんにリサーチ掛けてもらって、手助けできるならしていきたいよね。仲間に次々幸せな話がきているっぽくて嬉しいな!

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