第342話○『私とあなたの200日』アフレコラスト……えっ!?

 ついに『私とあなたの200日』のアフレコが最終回に到達した!オーラスということもあって、本当は明貴子も立ち会いたかったみたいなんだけど、締め切りがあるということで、「最終回のオンエア後に改めて打ち上げをするときにスタッフさんたちと話ができると思う」って、泣く泣く断念していた。例の事件以降、ますます仕事の依頼が増えて、本当に忙しいみたい。あんな感じで終わらせたのは結果として良かったのかもね。

 今回のアフレコを通じて、線しか書かれていない映像へ声を当てるのにもだいぶ慣れた。そして、声を使った演技の難しさや奥深さなんかを知るにつれて、声優っていうのも面白いなあ、と思い始めたりしたよね。声優って声で演じる俳優だもんね。俳優も声優も両方とも出来たらいいなあ。


 アフレコのあとは智沙都さんが運転する車に乗って、彩春・朋夏と一緒に渋アリが行われている瑠乃の舞台公演を見に行くことになっている。今日来られる圭司・紗和・明貴子・紅葉とは渋アリで合流の予定。紅葉だけなんだなあ、と思ったら、志満は初仕事となる朱鷺野先生のコミカライズが追い込み、幸大くんはイラストの締め切りが山のようにあるんだって。なんか、幸大くん、雑務を大崎に任せて気軽になったのか、仕事をたくさん入れてしまったんだとか。紅葉にかなり怒られたらしくて、下半期は減らすっていっていた。昔から幸大くんは紅葉には頭が上がらないんだそうで、幼なじみっていう関係だと昔の関係性がカレカノになってもそのまま持ち越されるんだね。


 そうそう、今日の主役である瑠乃。いろいろなところで名前を見かけはじめていて、アイドルとしてめきめき頭角を現しているんだよね。瑠乃の公式チャンネルも順調に登録数が増えていて、もうすぐ10万人超えそうなんだって。今回の舞台には瑠乃の演技を見たいっていう配信リスナー――柊の枝さんたちがけっこう来るっていうからすごい。もちろん俳優としても評価されていて、今回の座組ではパンフレットに顔写真の入る役どころとなっている。活動している範囲が違うからなかなか仕事で一緒にならないけど、俳優として共演できるように私も頑張らないとね!


 そんな最終アフレコのあと、智沙都さんが来てくれる時間まで1時間くらいあったので、渋アリへ向かう前に早めの晩ご飯を食べよう、ということになり、江戸川橋スタジオ近くにあるファミーズファミレスへ入る。みんなディナーセットを頼んで、瑠乃の公演が楽しみだねー、なんて三人でガールズトークをしていたら朋夏が突然叫んだ。


朋夏「あああああ!」

彩春「うわっ、びっくりした!」

朋夏「大事なことを忘れていた!彩春の実家に行ってない!」

未亜「そういえば夏に行こうっていう話をしていたね。」

朋夏「そうだよ、未亜!彩春の実家、行かなきゃ!」

彩春「さすがに夏の間はもう無理じゃない?」

朋夏「彩春は夢のないことをすぐいうんだから!9月も夏みたいなもんだし、テニスできるよ!」

彩春「みんな、予定一杯だと思うよ。」

朋夏「多分一泊くらい出来るよ!ちょっといまスケジュール見る!」


 そういうと朋夏はスマホでスケジュールを確認しはじめた。


朋夏「大学が始まるまでの間だと9月5日午後から7日の昼過ぎまで空けられる!二人は?」

彩春「えっ、いま確認するの?」

朋夏「彩春は私と旅行行きたくないの?」

彩春「朋夏はすぐそうやって、もう……。判った判った、確認するから。未亜もね。」

未亜「うん、みてみるね。」


 スマホでカバボクシのスケジューラーを開くと5日と6日は終日レッスンを入れているだけで仕事は特になかった。圭司も特に打ち合わせとか締め切りとか通院とかはない感じかな。7日は圭司も私も15時から文明放送でいつものラジオ収録が入っている。あれ?これならレッスンの予約をずらせばいいだけだから安比に行けるんじゃない?


未亜「いま確認したら予定空けられるね。7日は15時までに浜松町行かなきゃだけど。」

彩春「私は5日の午前中に適性検査オーディションが入っているなあ。でも12時までには終わるから午後は空いてる。6日は一日喉のチェックボイストレーニングとかに充てるつもりだったから調整可能。7日は21時からデリバリー定期配信だから17時までに『御苑』だね。」

朋夏「やった!三人はいけそうだ!彩春の実家は空いているかな?」

彩春「いま聴いてみるね。」


 彩春はいったん席を外すと実家へ電話をしてから戻ってきた。9月の平日は全体的に部屋は空いているそうで、5日から7日は全く問題なかった。それならば、と朋夏がへべすTlackで確認をしたら紗和と圭司は3日間ともOKという返答。圭司はやっぱり予定表の通りだったんだね。心菜ちゃんは偶然三陸で旅行番組のロケが9/5昼過ぎまであるので本当は東京へ戻ってくる予定だった5日の午後以降なら盛岡駅から合流可能とのこと。桜新町組は締め切りの関係、ナインショート組と百合ちゃんは仕事が立て込んでいて残念ながら不参加。大崎バイト組は、慧一くんは歌い手の方でレッスンや打ち合わせなどが入っているので休めず、磨奈は、大石さんに確認して、彩春のマネージメントフォローという体で参加可能ということになった。代わりに彩春は実家から配信しなきゃいけなくなったけど「元々やろうと思っていたから問題ないよ」ということみたい。この短い時間でそんなこと考えていたんだね!?それにしても案外みんな予定あけられるんだなー。


 少し遅れて反応した明貴子は、例の盗作騒動で活躍した親友二人にお礼を伝えるため、全く同じ日程で瑠乃と一緒に新潟へ帰る予定なんだって。それだと無理かなあ、って思っていたら「それなら親友二人も招待しちゃえば?会ってみたい!」という朋夏の発言に明貴子がノリノリで確認しはじめた。なんでも瑠乃と明貴子の二人に会うということでバイトはないから来られるということになり、おふたりも合流することになった。明貴子によると主にお金の問題で躊躇したらしいんだけど、費用は明貴子が出すということで説得したそうだ。まあ、普通の大学生ではなかなか大変な費用だもんね。ちなみにお二人は明貴子が朱鷺野澄華であることと瑠乃がアイドルデビューしていることは知っているんだって。だけど、今回来るのは大学の同級生だっていうことしか伝えていないので当日までみんなが芸能人などということは一切内緒してほしいんだって!割とみんなこのあたりは内緒にしておいて驚かせたいのかな?私も圭司のことを驚かせたから気持ちはわかるけどねー!

 そこまでやりとりしたところで、智沙都さんから私のスマホへ到着連絡が入った。あっ、そういえば、華菜恵のレスが来てないなあ。もしかしたら瑠乃について仕事しているのかも。渋アリに着いたら安比へ行けるか聞いてみよっと!

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