第321話○「まりあコンビ」の懇親会!
彩春が先頭になって、タクシーが止まったところにある「天ぷら やす畑」という名前の書かれた入口から地下へ降りていく。
「この天ぷらの店が銀座にあるのにリーズナブルで、しかも防音のしっかりした個室があって、便利なんだ。」
お店の入り口をくぐると早速お店の方から声がかかる。
「いらっ……おっ、いろはちゃん、久しぶりだね。」
「大将、ご無沙汰しています。」
「個室準備してあるよ。」
「いつもありがとうございます!」
中に入ると油のいい香りが漂っている。8席ほどのオープンカウンターがメインの天ぷら屋さんで、まだ時間が早いからか、カップルらしき二人組が食事をしているだけだった。入口を入ってすぐの所にある小上がりを案内され、靴を脱いで上がると4人用の個室になっている。
「へえ、いろはちゃん、いいお店知ってるね!」
「掘りごたつ式なんだね。これは楽だなあ。」
「ななかさんと未亜にも気に入ってもらえたようで良かった!」
お箸が三方に置いてあって、彩春の方で既にコースを予約してくれているそうで、順番に料理が運ばれてくる。
「じゃあ、今後一緒に活動することになるであろう三人の初顔合わせを祝して」
「「「かんぱーい!」」」
「私は二人とも知っているから紹介するね。こちらが早緑美愛、実は私と同じ大学に通っていて、けっこう親しくしてもらっているんです。去年は紅白にも出ているすごい歌手で、目標は一流の役者になること、だよね?」
「うん、いろいろなことに挑戦していきたいけど、将来は女優として頑張りたいと思っているよ。」
「紅白見てたから早緑さんと同じフィールドで演技したり、歌ったり、踊ったり出来るのが本当に楽しみ!」
「あ、ありがとうございます!」
「じゃあ、続けるね。こちらは
「いろはちゃん、なんかほめられすぎだよー。」
「えっ!続橋さんって、こんプロでセンターやっていた、あのななかさんですか!?」
「早緑さん、知ってるの!?」
「はい!どこかで見たことあるなあってずっと気になっていたんですよ!」
「なんか紅白歌手に憶えていてもらえたなんて嬉しいなあ。」
「いや、続橋さんも紅白に何度も出ているじゃないですか!」
「まあ、昔の話だしねえ。」
「そんなそんな、アイドルの大先輩ですよ!」
まさか、そんなすごい人と共演するだなんて!と、ちょっと緊張しながらも彩春がいい感じに話をつないでくれて盛り上がる。彩春の提案で、私はななかさん、ななかさんは美愛ちゃんとお互い名前で呼び合うことになったけど、なんか嬉しいなあ。
役に決まったあとにもらった資料に書かれていたところによるとドルプロではオーディションの時のことを自分の配信などである程度、自由に言って良いそうだ。公式で良いのであれば、もちろんこうした場でも良いわけで、話はオーディションの時のことでも盛りあがる。
ななかさんは、高校生の頃から長年ドルプロのプロデューサーさん、特に「まりあコンビ」の担当だったそうで、ドルプロのアイドル役をやりたかったそうだ。それもあって、声優に転身してからこれまで何度もドルプロのオーディションを受けていたものの残念ながら不合格が続いていたのだとか。
いままではプロダクションに対して行われる公募に対して申し込んでいたのが、今回は初めて指名でオーディションの依頼が来た。それがなんと長年担当していた「まりあコンビ」の一人である
私の話もしたら「時系列を考えると美愛ちゃんが亜香音に決まってくれたおかげで、もしかしたら莉麻役がもらえたのかも」ってななかさんはいってくれたけど、多分それとこれとは別じゃないかなあ。
「やっぱり、ドルプロってそれだけすごいコンテンツなんですね。」
「うん、ドルプロって、演技力と歌唱力の両方があって、さらにその役を長年全うしてくれそうな人しか採用されないのね。だから業界内での知名度を一気に上げてくれるんで、別の仕事も入りやすくなるの。」
「ドルプロの役がもらえたおかげで、指名でのオーディション依頼が格段に増えたよ。」
「『声優界の公務員』なんていわれているくらい安定して仕事が入ってくるから収入の見通しが立つのもありがたいよね。」
「へえ!」
「美愛ちゃんはもともと歌手としては紅白に出るくらいの知名度があるけど、役者としてもこれで評価されると思うよ。」
「あー、それはありそう。」
「声優アーティストさんもけっこう紅白出ているけどね。」
「それはほらみんな声優が先でしょ。未亜の場合、シンガーとしての実力が先に来ているからね。あとから声優としての実力を認められるっていうのは希有だと思うよ。」
「でもななかさんもそうですよね?」
「私はユニットだったからね。ソロでは結局出られなかったからそこはちょっと違うかな。」
「なるほど……。」
「ちなみにドルプロ声優さんの中にはもはや声優というよりも俳優っていった方がいい活躍している人もけっこういるからね。極端な人だと声優としての仕事はドルプロだけであとは舞台俳優としていろいろな舞台に引っ張りだこの人とかもいるよ。」
「そうなんだ!」
「美愛ちゃんなら俳優も声優も歌手も全部いけそう!」
「ななかさんにそこまでいっていただけると嬉しいです!」
「とりあえず私としては、長年『まりあコンビ』を担当していたプロデューサーとして、莉麻と亜香音に声が付いただけでもものすごい嬉しいのに『まりあコンビ』のリーダーみたいな立ち位置の莉麻が尊敬しているななかさんで……『まりあコンビ』のムードメーカーという感じの亜香音が大親友の未亜だなんて……もう……今日はずっと泣きそうだったよ!!!これから本当に……よろしくね!私も……頑張るから!」
そういうと彩春は大号泣してしまった。これだけの思いが詰まったアイドル役、彩春からいろいろと教えてもらって「亜香音が早緑美愛で良かった」って思ってもらえるように頑張らないとだね!そのためにはどうしたらいいのかな?彩春が落ち着くのを待って、相談してみる。
「お二人に相談なんですけど、私、ドルプロのことはほとんど知らなくて。来月頭に早速ボイスと歌唱の収録があるからけっこう不安なんですけど、何か気をつけるべきこととかありますか?」
「あっ、それそれ!それを実は今日話したかったんだ。」
「えっ!?そうなんだ!?」
彩春によるとドルプロのアイドルは、登場してから既に長い時間を経ていることもあって、公式設定以外にプロデューサーさんたちのほうで様々な下地があるんだとか。特に「まりあコンビ」は三人のユニットみたいな感じで、いろいろな二次創作が出来ているそうだ。公式の設定資料を土台にそういう二次創作を見ながら自分なりの亜香音のイメージを膨らませてみるといいと二人からアドバイスをもらった。
「でも全部を取り入れるわけにはいかないからまずはスマイル大百科とTixiv百科事典で亜香音について調べてみるといいと思う。ものすごい長さの解説が書いてあるから参考になると思うよ。」
「判った!」
「あと私からは、スマイル動画でタグ検索して再生数上位の動画を見たり、Tixivの人気上位の作品を確認したりするといいと思うって伝えておくね!」
「ありがとうございます!いろいろと調べてみます!」
そのあとも話が盛り上がり、ななかさんとRINEを交換させてもらった!よし、圭司や彩春、ななかさんにも相談しながら自分の中でまとめてみよう!がんばるぞ!
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