第320話○ドルプロの初顔合わせ!

 今日は8月のドルプロ周年ライブに向けて、15時から関係者の顔合わせがある。その場で、新規ボイス実装組の紹介もしてもらえるそうだ。とはいえ、金曜日で授業がないので、午前中はMetropolitanFMに生出演、昼の時間帯はジャパンテレビの情報番組生出演というお仕事がある。ちなみに圭司はジャパン放送でやっている漫才師エイツさんの生放送に13時から15時半まで二時間半出ずっぱり。ラジオで話すっていう仕事にもだいぶ慣れてきたみたい。文章も書けて、面白いトークが出来て、美味しい料理まで作れるすごい人がフィアンセになってくれたという事実に毎日感謝しているよね。


「おはようございます!」

「美愛ちゃん、おはよう!」

「美愛、おはよう。あっ、半蔵門へ行く前にいい話があるわよ。」

「おおっ!」

「主催者招待で第5回バーチャルライバーフェス出演が決定した。」

「ええっ!?バーチャルライバーフェスですか!?」

「ええ、BSでやっているのが評価してもらえたみたい。」

「ほへー、なんかありがたいですね。」

「うん、美愛の世界が着実に広がっていて、私としては本当に嬉しいのよね。そのかわり、智沙都と華菜恵が大変だけど。」

「私も華菜恵ちゃんもみんなのために頑張るだけですよ!美愛ちゃんはどんどん突っ走ってね!」

「ありがとうございます!」


 いきなり嬉しい話からスタートした今日も仕事を頑張ろう!事務所でさみあんモードになって、半蔵門から汐留へと智沙都さんの車で回る。汐留の仕事終わりのあとは大学へ瑠乃を迎えに行った智沙都さんから太田さんへバトンタッチ、その足で田町にあるオクダイナンコエンターテインメントさんの本社へ向かう。受付で手続きを済ませるとスタッフさんが迎えに来てくれる。新規組は顔合わせの途中で入場するということで別の控え室が割り当てられていた。


「おはようございます!」

「「「「「おはようございます!」」」」」


 中には既に5人いらっしゃって、一人はこの前のオーディションの時に立ち会っていたスタッフの方なので、あとの4人がどうやら声優さんのようだ。今回の新規ボイス実装は、女性アイドル役が3人、男性アイドル役が2人と聞いていたけど、全員そろっているみたい。太田さんはここで離脱して、そのまま心菜ちゃんのロケに立ち会うそうだ。

 控え室に入って10分くらいしたところで、控え室にいたスタッフの方から皆さんがいるところへ移動するとの話があり、みんなでぞろぞろと部屋を出る。顔合わせが行われているらしきホールの舞台袖まで来たところで、中から呼び込みがあるまでいったん待機となった。さらに待機すること、5分くらいでいよいよ声がかかる。


「それでは、ここで新規にアイドルを担当される皆様をご紹介します。」


 そのアナウンスで中に入るとすごい数の方が!二日間のアニバーサリーライブ合計でのべ50人くらいが出演するって聞いていたけど、これだけの声優さんとスタッフさんがいらっしゃると本当に壮観だよね。あっ、彩春が驚愕した顔をしているのと駒元さんがニコニコしているのが見えた。総合プロデューサーの坂下さんによって、下手側にいる人から順番に紹介されていき、隣に立っていた女性が岩井いわい莉麻りま役の続橋つづきばしななかさんと名乗ったあと、最後が私の番となる。


掛札かけふだ亜香音あかね役を担当させていただく早緑美愛ともうします。何分不慣れなところもあるかと思いますが、何卒よろしくお願いいたします。」


 拍手と一緒にざわめきが!?なになに!?


「今年はこの5名の方に新規キャストとしてライブへご参加いただくこととなりました。今回は本作にてデビューの方から声優大賞助演女優、紅白出場歌手までいろいろなキャリアの方がいらっしゃいますが、みなさまと一緒に歩んでいくこととなりますので、お見知りおきください。」


 えっ!?私のことはそんな感じで紹介されるの!?紅白って私の想像しているより遙かにすごい番組なんだなあ……。


 その後は空いているテーブルへ誘導され、ドルプロのイベントプロデューサーをされている松木さんから当日までの段取りやレッスンに関する案内、自主レッスン用に音源の貸し出しを受ける手続きなどが説明されて、あっさりと解散になった。駒元さんに挨拶しようかと思っていたのだけど、すぐに部屋から出てしまったので次の予定があるのかな?あとでRINEしておこう!


 それにしても予定より圧倒的に早く終わっちゃったなあ。今日は夜遅くまでかかると思って晩ご飯はいらないと圭司には伝えたけど、太田さんは既にここなちゃんの立ち会いで不在だし、あとはタクシーに乗って帰ればいいだけだから社宅のレッスンルームで自主レッスンでもしつつ、久しぶりに晩ご飯を作るかなあ、とぼんやり考えていたら彩春がものすごい勢いでこちらに近づいてきた。彩春はまず私の隣にいた女性に会釈をしたあと、私に話しかけてくる。


「まさか、美愛が亜香音のCVだなんて!ビックリしたよ!」

「いやあ、さすがに話しちゃいけないから今日まで黙っていたよ。」

「その上、『空の果てから』でお世話になっているななかさんが莉麻なんてさらにビックリですよ!」

「あはは、私もいえなかったからねえ。」


 あっ、隣にいるこの女性――続橋さんと彩春は既に顔見知りだったんだね。そういえば、続橋さんってなんかどこかで見たことがあるような?気のせいかな?


「そうだ!ななかさん、今日は時間あります?」

「うん、てっきり終日打ち合わせだと思ったから今日は仕事入れてないよ。」

「よかった!美愛はどう?」

「私も時間あるよ。」

「そうしたらまりあコンビCVの三人で懇親を深めませんか?」

「「おおっ!賛成!」」


 彩春はどこかに電話を掛けはじめた。私はその間に圭司にTlackDMをしておく。今日は元々晩ご飯は食べないって伝えてあったけど、打ち合わせが理由じゃなくなったからね。圭司からは「楽しんできてね」っていう返答がすぐ届く。本当に理解のあるいい人と婚約したよね。

 電話が終わった彩春の先導で、オクダイナンコさんの建物を出て、歩道橋を渡って、大通りの向かいに建っているこれまた大きなビルに移動する。一階にはタクシーがたくさん止まっている!列も特になかったので先頭に止まっていたタクシーへ乗り込む。助手席に座った彩春がお店の場所を指示したらしく、タクシーはすぐに出発した。都内を10分くらい走ったところで、大通りから路地に入り、雑居ビルの前でタクシーが止まる。どんな話になるのかな、楽しみだなあ!

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