第291話●「早緑未亜・雨東晴西 fondly radio」初回生放送

「みなさん!こんばんは!早緑美愛です!」

「雨東晴西です。」

「私たちで皆さんの心地よい時間を過ごしてもらえるように頑張りますので最後までお付き合い下さい!……KANHATSU Presents 早緑未亜」

「雨東晴西」

「「fondly radio」」

「この番組は浜松町の文明放送をキーステーションに全国33局を結んでお送りいたします。」

『CMはいります。』


 耳に付けているヘッドホンから戸城さんの声が聞こえる。未亜も俺も同時にカフを下ろす。


 そう、4月8日になり、いよいよ俺たちのラジオ番組が始まったのだ。けっこう緊張するかと思ったけど、カンハツの広報さんも含めた事前の打ち合わせでいい雰囲気になったこともあってか、割とリラックスして臨めている。


『二人ともいい感じにトーク出来ています。息もぴったりでさすがですね。』


 戸城さんにお褒めいただくけど、ラジオの出演なんてまだまだ駆け出しだから右も左もよく判らない。とりあえず全力で取り組んでいくだけ。


『CMあけます。』


 戸城さんのコールが来たので、カフを上げる。未亜とほぼ同時だったみたい。


「……あらためまして、早緑美愛と」

「雨東晴西です。」

「先々週まで私の一人番組をお送りしておりましたが、今日からは雨東さんと二人でお送りします。基本は収録なんですけど、今日はなんと生放送です!」

「生放送への出演はまだ慣れていないのでとちらないように気をつけます。」

「そんな二人の共演初レギュラー番組な訳ですが、いやー、ついに私たちのラジオが始まったね。」

「発表の時は驚かされたけど。」

「本当だよー。あれは心臓に良くないよね。」

「我々二人は同じマネージャなんですけど、マネージャも局の方から口止めされていたそうで。」

「てっきり発案者かと思ったよね!」

『コーナー締めで他己紹介お願いします。』


 おっと、トークバックで連絡が来てしまった。雑談で盛り上がりすぎてしまったか。


「いままでもけっこうドッキリされたもんな。」

「雑談が続いたけど、このラジオでは、こんな感じで私たち二人が日常交わしているようなトークの延長でのんびりゆっくり進めていきたいと思います。」

「では、まずはあらためて自己紹介をしようかと思います。」

「私たちどちらかだけしか知らないっていう人もいそうだもんね。」

「そうなんだよ。それで、今回は番組の企画で、お互いがお互いのことを紹介しあうことになりました。」

「他己紹介っていう奴だね!」

「それだね。まずは俺からでいいかな?」

「うん!どうぞ!」

「じゃあ、いくね。えーと、早緑さんの公式プロフィールから行きます。さみどりみあ、1月15日生まれの19歳、3年前の10月にデビュー、昨年6月に雨東晴西との交際を発表、同じ年の年末には紅白にも出場。」

「なんかあらためてプロフィールを読まれると照れるね。」

「確かに!それじゃあ、俺の言葉で紹介するね。」

「お願い!」

「早緑さんはいつも全力で物事にぶつかる人だね。あとは極力ポジティブに物事を考えようという人かな。壁にぶつかると後ろ向きになって落ち込んじゃう人とかもいるとおもうんだけど、あれこれ前向きに工夫をして壁を乗り越えようとしている印象がある。それと俺のことをすごく大切にしてくれる人。こんな感じ。」

「ありがとう!なんか嬉しいコメントが多いね。」

「そうかな?」

「そうだよ。」

「ならよかった。」

「うん!そうしたら私の番だね。あめひがしはれにし、9月23日生まれの19歳、高校一年生の4月に小説投稿サイトで『セントハイディアン王国の魔物と聖女』の連載を開始、昨年にはアニメがオンエアされた。」

「すごいわかりやすくまとめられているね。」

「私のもそうだけど、事務所のプロフィールページに載っている内容だって。」

「そうだったのか!」

「うん、そう聞いたよ。えーと、そうしたら次は私の言葉で説明するね。雨東さんはいつも客観的に物事を見ている人かな。広い視野でいろいろなことを考えている人だと思う。それでいて、とても心配りの出来る人だから冷たい感じがしない。あとは私を一番に考えて動いてくれる人だね!それと作ってくれるご飯がとても美味しい!」

「なんか照れるなあ。」

「えへへー!」

「説明になったか判らないんですけど、こんな感じでいかがでしょう?」

「大丈夫だと思うよ。」

「それなら良かった。それではここで一曲聴いて下さい。」

「雨東さんが私のファンになったきっかけとなった曲です!早緑美愛で『アイマイ』。」


 未亜の曲紹介の終わりでカフを下げる。未亜も下げたようだ。


『曲はいりました。曲終わりからCM入って、ジングルののちに戻します。お二人ともいい感じですね。この調子で後半も頑張りましょう。』


 二人で手を上げる。


『CMあけます。』


 カフを二人で同時に上げる。台本がちゃんといまのページになっていることを確認していると未亜が話し始める。ここからは募集するメールの説明をして軽くフリートークをしたらおしまいだ。このラジオは、15分しかない上に間にCMを挟む関係で、固定のコーナーを用意せず、適宜テーマを設定した普通のメールをもらうことになっている。その辺の説明を二人で進めていく。

 再びCMを挟んで、いよいよエンディングだ。


『CMあけます。』

「……いやあ、いままでの一人しゃべりと違って、二人で話が出来るのは楽だね。」

「そうなんだ。」

「うん。いいタイミングで合いの手を入れてもらえるから話しやすかったよ。」

「それなら俺がいる意味もあるね。」

「二人で話をするラジオって、やっぱり楽しいね。」

「それはあるね。」

「雨東さん、引き続き、よろしくね!」

「うん、こちらこそ、よろしく。」

「それでは、今日の番組はここでお開き。来週からは15分の番組となります。」

「先ほど話したとおり、採用された方には、せまじょのイラストを担当されている帯屋わたる先生が描かれた私たちの似顔絵入り番組特製栞をプレゼントします。どんなことでもかまいませんので、ぜひこの番組までメールをお送り下さい。」

「メールアドレスはふぉんどりーあっとまーくじぇいえいきゅーあーるどっとしーおーどっとじぇいぴー、ふぉんどりーはえふおーえぬでーえるわい、です。皆様のメールをお待ちしています!」

「それでは、この時間のお相手は雨東晴西と」

「早緑美愛でした!では、皆様、引き続きよい夜をお過ごし下さい!」

「「また、来週!」」

「KANHATSU Presents 早緑未亜」

「雨東晴西」

「「fondly radio」」

「この番組は浜松町の文明放送をキーステーションに全国33局を結んでお送りいたしました。」


『はーいおつかれさまでした。』


 カフを下ろした!緊張したけど、いい感じだったんじゃないかな!

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