第281話○箱根の夜、再び
フェスのあと、有明公演の振り返りと渋谷公演の物販情報、有料配信の詳細が4月1日18時に公開されることをお知らせした定期配信も滞りなく終わり、いよいよ休暇期間に入った。1泊2日の箱根旅行、なんとなく圭司の考えていることが判るから少し緊張もするよね。一応、下着は新品のかわいいものを付けてきたけど……。でも、仕事を一切抜きにしたプライベート旅行へ一緒に行けるっていう楽しさや嬉しさの方がもちろん上回っている!
実は、3Daysライブのあと、朝早めに出てチェックインの時間まで箱根観光をしよう、ということになった。どこに行くかは私に任されたので、ワクワクしながらいろいろと調べてみたよ!プライベートで箱根観光なんて小学校の校外学習以来だからねー!今日は海老名のサービスエリアでモーニングを食べるので、そこで最終決定することにしている。
家具を買いに行ったときにも使わせてもらったジパングレンタカーで8時のオープンと同時に軽自動車を借りて、今日は私の運転で一路箱根を目指す。芸能人は運転NGなんていう話も聞いたことがあるけど、大崎は特にそういう制限はないそうで、太田さんからは「くれぐれも安全運転でね」とだけ、念を押された。帰りは圭司が運転することになっている。
水道橋のあたりにある西神田の入口で首都高に入って、あとは小田原まで高速だね。途中、予定通り、海老名のサービスエリアに車を止めて、フードコートでモーニングを食べながら、行程を決める。
「どの辺に寄りたいか決めた?」
「うん、ロープウェーで大涌谷を眺めたい。あと芦ノ湖の遊覧船に乗りたいかな。」
「了解。往復するとちょうどいい時間だと思うからそうしたら
「いいね、楽しそう!」
「車に戻ったらナビを設定するからその案内通りでね。」
「判った!」
白山を出て以来ぶりに車外に出たけど、見事な晴れ間で、空気も澄んでいる感じがする。厚木のジャンクションで東名から小田原厚木道路へ入って、小田原へ向かう。
「東名って、小田原を通っていないんだね!?」
「うん、前に調べたら御殿場を通した方が名古屋との距離が短くなるからみたい。」
「そうなんだ!初めて知ったよ!」
道路は特に渋滞もなく、順調に進んでいく。久しぶりに運転しているけど、やっぱりドライブは楽しいよね!
「そういえば、箱根は雪とか大丈夫なのかな?」
「昨日の夜に天気予報を確認したけど、降雪も積雪もなくて、明日も快晴みたいだよ。」
「そか、良かった!」
「雪道の運転は怖いもんね。」
「やっぱりできるだけ避けたいよねー。」
小田原厚木道路を終点の箱根口で降りるとなんか見たことがあるような景色になった。
「なんか見たことがあるような景色になったね。」
「ここから走る道路は、箱根駅伝のコースだよ。」
「だからか!テレビで見ているはずなのになんか違った感じにも見えて面白いね。」
「確かに!」
箱根湯本の駅を通過して、大平台のヘアピンカープをやり過ごし、宮ノ下まで来ると車のエンジンはうなりっぱなし!宮ノ下を左折するといよいよ箱根駅伝の定点の一つ、
「さすがに寒いね。」
「やっぱり山の上だよなあ。」
道を下っていくとさっき直進したところにたどり着く。そこからさらに下っていく。
「ああ、箱根駅伝はここだね!なんかこんな所を走ってるんだなあ。」
「本当にすごいよな。」
しばらく下っていくとやっぱりテレビで見慣れた「小涌谷の踏切」に到達した。近くには小涌谷の駅があり、そこから強羅まで登山鉄道に乗るんだけど、ちょうど10時43分の電車があるみたい。3分くらい待てば来るのはラッキーだね。
強羅からはケーブルカーで早雲山までいって、いよいよロープウェーだ!さすがにこの季節はオフシーズンみたいでほかに乗り込む人もいなかったから圭司と二人で貸し切りだね!
「すごい!富士山だ!左側には白い煙だね。あれが大涌谷かあ。」
「ものすごい噴煙だよなあ。」
「せまじょの地獄谷ってもしかしてこんな感じ?」
「そうだよ。大涌谷の噴煙をイメージして書いたからまさにこんな感じだな。」
「おおっ!どこかでそういうイメージした場所とかを書いても面白そう。」
「あー、それはいいな!考えてみるよ。」
大涌谷の絶景を堪能したあとは、大涌谷駅で乗り継いで、芦ノ湖まで移動する。桃源郷駅の中に芦ノ湖観光船の乗り場があった!これは便利。
「ちょうどタイミングが良かった。11時50分の船がある。」
「あと15分くらいだね。」
「箱根町の港の近くに箱根駅伝博物館があるからちょっと寄ってみようか。」
「それはいいね!箱根町港まで買えばいいかな?」
「うん、そうだね。」
せっかくなので一番上の開放デッキに出た。芦ノ湖の湖上はものすごい快適!少し寒いけど、それ以上に空気が澄んでいて、とても気持ちがいい!
「なんかすごい気持ちがいいよ!なんかいま感じたことを歌いたいね。」
「それが歌詞に出来るのかもしれないよ。」
「そか!確かにそうだね!」
こういう所から歌詞って生まれるのかもしれない!芦ノ湖上の景色や鮮烈な空気を楽しみ、とても大きな気づきのあった25分くらいの乗船を終え、箱根町の港に着く。ちょうどお昼時だったので、近くでランチを食べたあと、港のすぐそばにあった箱根駅伝博物館で箱根駅伝の歴史などを学び、母校哲学館大学の応援マフラータオルとキーホルダーを買ってから建物の外へ出る。建物のすぐ脇にある箱根駅伝往路ゴール地点でしばらくたたずんでいると圭司が帰りについての提案をしてくれた。
「ここから大湧苑までバスで戻ろうか。」
「そうだね。」
「箱根駅伝の6区のコースだと思うよ。」
「それは面白いね!」
港に併設されているバス停まで行くと14時40分発というバスがあった。二人で乗り込んで、ハコネッサンスのバス停まで箱根駅伝のルートを堪能しながらバスに揺られる。いったん車まで戻って、今度は宿の駐車場へ止める。チェックインの始まる15時過ぎに到着出来た。宿に入るとブルーレイの収録の時に案内をしてくれた女将さんが出迎えてくれる。平日の15時にチェックインしている人は他におらず、部屋まで案内を受けたのだけど、案内された部屋は前回宿泊した部屋と全く同じだった!女将さんは何も特にいわなかったけど、これ、多分向こうは判っているんじゃないかな……。フィアンセだってちゃんと公表しているからこういう配慮もしてもらえるのかもしれないね。
「まだ半年くらいしか経っていないのになんかすごい前に感じるな。」
「本当だよねー。」
「前回はあまりゆっくりできなかった大浴場に入ってくる?」
「うん、そうだね!」
大浴場に入って、部屋の中にある少し高くなった部分で外を眺めながらフェスの話なんかをしていたら晩ご飯の時間になった。ご飯は前回と同じ建物で食べるようになっていた。前回は撮影されながらだったのでせわしなかったけど、今回はのんびりゆっくり堪能出来た。やっぱりすごく美味しいよね……。
部屋に戻ってさっき座っていた少し高くなっている部分でのんびり話をしていると圭司が何かを決意した顔になった。
「……一緒に露天に入ろっか。」
「あっ、うん……。」
圭司の顔が真っ赤になっているし、きっとこれは、いよいよっていうことなんだろうな。そうかんがえちゃうと一緒にお風呂に入るのもすっかり慣れたはずなのに今日だけはなにか照れくさい。バルコニーにある露天風呂に一緒にはいって、湯船に浸かって後ろから抱きしめられる。圭司の心臓の音が聞こえる……。
しばらく浸かったあと、湯船から上がって、身体を拭き終わるとお互いの視線が絡み合う。圭司はそのまま私に深いキスをしてきた。すごく情熱的で濃厚なキスに身体の芯がとても熱くなる。そのまま抱きしめられたあと、恋人つなぎで手をつながれて、そのままベッドへと誘導される。布団の中に入ると部屋の照明が落とされて……。
……ついに圭司と一つになることが出来た。それは幸せな痛みだった。
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