第234話○初日のディナーは至福の時
ナイタースキーを堪能した!久しぶりのスキーで、滑走出来るのは中央ゲレンデだけだったけど、やっぱり楽しかったなあ。最後滑ってきたところで19時15分。19時半に安比スキーセンターの案内板あたりということだったので、そのまま板を抱えてスキーセンターを抜けて、案内板のあたりまでたどり着くとみんなもう集まっているみたいだ。
「私が最後だったね。」
「私もいまついたところだよ!」
「ともちゃん、それなんかデートの待ち合わせみたい!」
「いやあ、実は未亜とお付き合いしていてね!」
「えっ、俺、振られた!?」
「慧一くん、ドンマイ!」
本当にこの仲間は面白いよね!慌てた朋夏が否定しているところへ側面に「ペンション スタームーン」と書かれたマイクロバスがやってきた。後ろにスキー板や旅行用のトランクなんかを格納出来る大きなスペースが用意されていて、行きも思ったけど、予想していたより大きなバスだった。スキー板やスノボ板を入れた人から順番に乗り込むとすぐ出発。5分くらいで彩春の実家にたどり着く。降りるときにお礼を伝えて、ペンションに入ると彩春が待っていてくれた。
「ウェアとブーツ、板はそのまま部屋のクローゼットに入れちゃってね。大部屋はもう乾燥をオンにしてあるから入れてくれればすぐ乾燥していくよ。男性陣は部屋のクローゼットを開けると右端にスイッチがあるからオンにしてくれればOK。着替えたらレストランまでお願いね。あと15分くらいでコースの時間だから。」
みんなでぞろぞろと部屋に戻り、ラフな外出着に着替えて、ウェアとかをクローゼットに入れてしまう。レストランに入ると圭司はもう座っていた。
「おまたせ!」
「楽しかった?」
「うん、楽しかった!」
「露天の温泉も結構いい感じだからあとで入るといいと思うよ。」
「圭司、もう入ったんだ?」
「うん、みんなが出かけている間にゆっくり浸かっていたよ。」
「そか!私も楽しみだなあ。」
「みんなそろったからディナーのコースをはじめてもらうね。定刻でスタート出来るのはみんなさすがって感じだよ。」
芸能界は開始時間厳守だからねー。終了時間は守られないことが多いような気もするけど、特にバラエティ番組。
厨房からセルヴーズさんがやってきて、各テーブルを回る。なんだろうと思っていたらこちらのテーブルにもやってきた。
「お飲み物のメニューです。なお、ファーストドリンクはコースに含まれております。」
「ありがとうございます。」
メニューを見るとちゃんとソフトドリンクだけになっていた。
「ノンアルコールカクテルなんかもあるんだね。」
「ノンアルコールワインもあるよ!」
「ノンアルコールワインとかノンアルコール梅酒とかビアテイスト飲料とかは、一応20歳以上対象なんだけど、法律上は20歳未満でも問題ないものしか用意していないから飲みたければ大丈夫だよ。」
「そっか!彩春、ありがとう!」
私はバージンブリーズというノンアルコールカクテル、圭司はセルヴーズさんに確認して、今日のコースに沿った白のノンアルコールワインを注文していた。バージンブリーズというのはシーブリーズというカクテルからアルコールを抜いたもので、すっきりさっぱりしているんだって。楽しみだなあ。それぞれの所に飲み物が届くと彩春が立ち上がる。
「じゃあ、せっかくだから乾杯しよう!」
「乾杯のあいさつは彩春がいいな!」
「えっ、朋夏!?朋夏じゃなくて私なの!?」
「もちろん!素敵な旅行は彩春の実家があったからだからね!」
「そうだよ!いろはっち!」
「明貴子も華菜恵もありがとう!じゃあ、僭越ながら乾杯のあいさつをさせてもらいます!今後もみんなで助け合うところは助け合って、切磋琢磨するところは切磋琢磨して、良きライバル関係としてみんなで進んでいけるように!乾杯!」
「「「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」」」
乾杯の発声を聞いたからかセルヴーズさんが早速料理を持ってきてくれる。
「最初はオードブルです。今日は、八幡平で作られているサラミとチーズ、同じく八幡平で採れたラズベリーのジャムを乗せたクラッカー、八幡平ポークの生ハムとタマネギのマリネです。ランチで既にお伺いしているとのことですが、アレルギーの申告忘れなどがあればあらためてお申し出下さい。」
ランチにも食べたけどやっぱり美味しいなあ。あっという間に食べ終えてしまう。ディーナーでもパンが3つずつ皿に載せられていく。
「今日の自家製パンになります。ライ麦パン、バゲット、シャンピニオンです。プレーンバター、ガーリックバター、バジルバターをお好きなだけ付けてお召し上がり下さい。いずれのバターも自家製です。パンがなくなりましたらお申し付けいただければおかわりをご用意いたします。コース料金に含まれておりますのでご安心ください。」
バゲットをつまんでいるとスープが出てくる。これランチと一緒だね。
「こちらは冬野菜のポタージュスープです。カブ、ゴボウ、タマネギを長時間煮込みまして、とろとろにしております。冷めないよう、お皿が熱くしておりますのでやけどにご注意ください。」
内容は一緒だけど、説明の仕方が彩春のお母さんとは違うんだなあ。これもきっと個性なんだろうね。
スープも美味しくいただき、シャンピニオンを食べているところで魚料理が出てきた。ランチは選択制だったけど、ディナーはちゃんとしたコースだからお魚もお肉も出てくるんだね!嬉しいなあ。
「ポワソンはヒメマスのムニエルキャビア添えです。バジルソースをたっぷりと掛けております。ソースが余りましたらバゲットに付けてお召し上がりください。バゲットがない方はおかわりを持って参りますのでお申し付けください。」
あれ?これはさっきと違う!
「彩春ちゃん、これはさっきと違うね!」
「そうだね。」
みんなで話をしていたら彩春のお母さんがやってきた。
「お母さん、メニュー変えてくれたんだね。」
「うん、ランチの方が特別っていう感じかな。まあ、ランチの方が調理は楽だって、お父さんいってたわよ。」
「そっか!」
「そのかわり、ちょっとお願いがあるんだけど。」
「えっ!?なに!?」
「じゃーん!」
彩春のお母さんが後ろから取り出したのはサイン色紙だ!
「えっ!?サイン色紙!?」
「そっ!彩春ちゃんも含めて、みんなのサインが欲しいんだけどどう?」
「あー、最近、ちょっとその辺がうるさくてね。マネージャに確認してからでもいいかな?」
「うん、もちろん!ダメなら大丈夫だからね!よろしくー!」
彩春のお母さんはそれだけいうと色紙を持ってレストランの外へ出て行った。ストーカー騒動で禁止されているもんね……。
「あとでそれぞれTlackでDMして、聞いてもらえると嬉しい。ごめんね。」
「いいよいいよ!」
「うん、これくらいは!」
「太田さんには私からまとめて確認しておくね。」
あっ、そういえば、太田さんって今日オフじゃなかったっけ?
「そういえば、今日うちのマネージャ、休みじゃなかったっけ?」
「前に私が仕事でも休みの時とかあるからそういうときの連絡について確認したら、裁量労働制だからこういうときでもTlackのDMは通知出すようにしているっていってたよ。」
「さすがだね……。」
ちょっと思わぬお願いもあったけど、料理はやっぱり美味しいなあ。
「今日のソルベはブルーベリーです。八幡平のお隣、
ブルーベリーのいい香りがすごい!甘さも酸味もほどよくて口の中がさっぱりする。
「アントレはラムもも肉を使ったナヴァランになります。ナヴァランはラム肉の煮込み料理のことを指します。本日はトマトソースで煮込んでおります。こちらもソースが余りましたらバゲットに付けてお召し上がりください。バゲットがない方はおかわりを持って参りますのでお申し付けください。」
肉料理も違うメニューだった!これも本当に美味しいなあ。
「最後まで本当に美味しいね。」
「うん、ものすごい美味しいな。」
「美味しいものを食べると幸せな気分になるよね。」
「本当だよなあ。」
肉料理まで食べ終わるとテーブルを整えてくれる。最後はデザートかな。
「デセールは林檎のムースです。林檎は紅いわてという岩手特産の品種になります。このあとはコーヒーか紅茶になります。皆様、順番に伺いますので、お申し付けください。」
ディナーも本当に美味しかった!明日のモーニングとディナーも楽しみだな!
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