第235話●せまじょの読者なのか!?

 大満足なディナーを終えると華菜恵さんと太田さんがマネージャをしていないメンバーが一斉にTlackへアクセスして彩春さんの実家へサインを残しても良いか確認のDMを……あっ、志満さんはアクセスしていなかった。

 休みのはずの太田さんも含めて、すぐにレスが返ってきて、彩春さんの実家ということを加味してくれて、みんな問題なし、ということになった。食器類が片付けられたレストランをお借りして、サインが合計10枚記される。


「こうやって見ると改めてみんなすごい人たちなんだなーって思っちゃうよね。」

「本当だよね。しまっちと私くらいだよー。」

「有名だからって付き合っているわけじゃない分、こういうときは私もそう思っちゃう!なんかすごいよね。」

「本当だよね、朋夏ちゃん!でもそれがちゃんと判っているから、普段は気にせずに付き合えるんだよ!ねえ、華菜恵ちゃん!」

「本当だよー。嬉しいことだよね。」


 気がついたらそんな感じだったけど、最初は単なる同級生とかから始まっている関係だもんな。とてもいい関係が築けていて、嬉しい。みんなでサインを書き終えるといったん部屋に戻るもすぐに大部屋へ集合、温泉には順次入りに行くことになっている。

 俺は既に温泉に入っているので部屋に荷物を置き、さっき買ってきたお菓子類を持って2階の大部屋へ向かう。


 ピンポーン

 ガチャッ

「圭司くん、お疲れー!」

「あっ、紅葉さん、ありがとう。」

「あれ?それは?」

「さっき彩春さん、紗和さん、華菜恵さんとで買ってきたんだ。」

「話をしているときにつまめるお菓子が欲しくてねー。飲み物は冷蔵庫にあるよ。いま出すから待っててね。」


 慧一と幸大もやってきて、雑談が始まる。最初の段階で未亜と朋夏さんにはお菓子と飲み物を例のお金から出す件、話をして、賛成してもらえた。大丈夫だとは思っていたけど、一安心。


「そうそう、昨日、ブラジリアさんから招待されて、ブラジリアさんに楽曲を提供している音楽家の新年会に行ってきたんだ。」

「2月なのに新年会なんだね。」

「ブラジリアさんの新年会は毎年2月みたいだよ、圭司くん。それでね、未亜!渋谷バラードの大渡恭正さんにお目にかかったよ!」

「おおっ!紗和から声かけたの?」

「一緒のテーブルで席が隣だったの。未亜から聴いてはいたけど、私のボカキャラ曲、それも『昏い海の夢』からファンだったって熱く語られてビックリしちゃった。」

「『昏い海の夢』ってデビュー曲じゃない!」

「さすが、朋夏、即答だね。私も大渡さんの楽曲は大好きだったからその話もしたんだけど、意外なことに初対面の男性と話していても大丈夫だったよ。」

「だいぶ良くなってきたんだね。」

「うん、本当に良くなったんだと思う。みんなのおかげだよね。」

「私たちは仲良く交流しているだけだけど、それで良くなるなら良かったよー。」

「本当、明貴子のいうとおりだよね。」

「未亜も明貴子もありがとう。そうやって、普通に接してくれるからだと思うよ。それでね、大渡さんが今度未亜と圭司くん、明貴子、慧一くんと話をしてみたいって。」

「「「「えっ!?」」」」

「未亜は渋谷バラードに命を吹き込んでくれたからだって。あと、明貴子は『あなたと私の間にかかる星空』を実写ドラマ化したときに劇伴をやったから原作者にもお目にかかりたいっていっていたよ。」

「うん、そっかー、憶えていてくださったんだね。」

「そうみたい。慧一くんと親しいことは話していないんだけど、雑談をしているときに『マスケイさんの歌ってみたで自分の曲の歌ってみたがあったときは嬉しかった、一度お目にかかってお礼をいいたい』って。」

「それは嬉しいなあ。俺も大渡さんの曲は大好きだから一度話してみたいよ。」

「じゃあサプライズ同席だね。それと圭司くんは単純にせまじょが好きだからだって。」

「大渡さん、せまじょの読者なのか!?」

「1巻をたまたま店頭で見かけたんだって。」

「なんか、どこかの社長みたいな……。」

「あー!ね!私も仲良くなってから改めて1巻買ったけど、あの表紙はインパクトあるから書店店頭でも目を引いたんじゃないかな。」

「おっ、俺の作品が褒められている!」

「そうだ、表紙を描いた人がここにいる!」

「あれはすごいよね。ドラゴンが大あくびしているってなかなかない表紙だよ。」

「紗和さんに褒められてしまった!」

「さわちゃん、こーちゃんのこと、あまり甘やかさないでね。」

「えー、なんでだよー。」

「こーちゃん、すぐ調子に乗って徹夜しちゃうんだもん!」

「紅葉、ごめんなさい……。」

「徹夜は絶対にダメだよ。」

「はい、反省しています……。」

「じゃあ、幸大くんも反省したところで、3月くらいに食事会をしようと思うからまた声かけるね。」

「紗和、大渡さんと連絡先交換したんだ!?」

「うん、RINEをね。」

「えっ、本名だよね!?」

「いや、名前は変えたよ。」

「「「「「「……本当だ!」」」」」」

「最近みんなTlackメインで、あんまりRINE使っていないから気がついてなかった?」

「「「「「「気がつかなかった……。」」」」」」

「なんか不思議と儘田海夢名義にしちゃえば、この人とはRINEを交換するくらいなら問題ないかなってなんか安心感があったんだよね。きっと、元々すごい尊敬してる音楽家だったのに加えて、早緑美愛とマスケイさん、朱鷺野先生、雨東先生のことをべた褒めされたからだと思う。」

「そか!うん、でも、信頼は出来そうだよね。前にうちの大学の学祭で講演会を聞いたんだけど、なんかすごく信頼出来そうな人だった。」

「でしょ!じゃあ、東京帰ったら改めて予定調整させてね。」


 紗和さんも前へ進めているんだなあ。大渡さんがまさか読者とは思わなかったけど、食事会楽しみだなあ。

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