第224話●岡里いろは公式チャンネル定期配信第11回後半戦

 未亜の4thCDの店頭販促用MVとライブのテレビCM用MVが流れた!


「合間で美愛の宣伝の時間を作りました!」

「ありがとう!嬉しい!」

「そこまで喜んでもらえるとこっちもうれしいよ!」

「先輩のすごさを目の当たりにした感じだよね。」

「えっ!?どんなところ?」

「CDを1枚しか出せないまま引退しちゃう人もいるのにもう4枚出ているとか、1万人くらい入るアリーナで3daysやったあとに2万人のアリーナで追加公演とか、その辺。」

「ほんとうだよねー。配信は元々やっていたからこうやってたくさんの人が来てくれているけど、声優としてはまだまだ駆け出しだし、声優アーティストになるなんて夢だもんなあ。」

「きっとそれぞれの得意分野があって、そこから伸ばしていくのがいいと思うんだよ。私はそれが歌だった、っていうことかな。」

「美愛って、基本的にポジティブだよね。」

「そうかなあ。私もけっこうネガティブになることもあるんだよ。」

「そういうときってどうしているの?」

「うーん、雨東さんに相談してるかな。」

「「……。」」

「えっ、二人ともどうしたの!?」

「美愛ののろけを聞かされたところで次の話題に行こうか。」

「そうだね。」

「えー!のろけなの!?」

「完全にのろけだよね。まあ、判るけどさー。」

「本当だよね。そのプロポーズリングとか本当にうらやましい。」

「そ、そうかな?」


 おや?なんかまたカンペが出たな。次々差し替えているから伝達事項が多そうだ。


「うん、二人の誕生石を組み合わせたプロポーズリングを送るっていうセンスもまたね。そういうセンスのある人とお付き合いしたいよね。」

「そういえば最近、へべすがなんか意中の人がいるらしいんだよね。」

「そうみたいだね。あんなに有名な女性VTuberで、堂々と好きな人がいるって宣言しちゃうのもすごいよね。いろははそういう事例知ってる?」

「Vでもそういう人はいなくはないよ。美愛が知っているか判らないんだけど、仲良くしているVだと豊臣ひょうたんちゃんっていう子が配信でリスナーに相談し続けて、相手もVだったからコラボまで持ち込んで、応援を背に頑張って告白したんだよ。男性Vではトップクラスの人気を誇っている森下藤十郎さんっていうんだけどね。」

「結果はどうだったの?」

「瑠乃、気になる?いまやカップルVとして大人気。80万人くらいのチャンネル登録じゃなかったかな。」

「それはすごいね!」


 なるほど、二人の交際をここで援護しようっていうカンペか。会社もいろいろと考えるなあ。日向夏へべすという人の魅力と上手くいって幸せになって欲しいという願いを彩春さんが熱く語り、それに対して、未亜と瑠乃さんがいい感じに合いの手を入れている。最初は少し冷ややかだったコメントもいい感じに朋夏さんを応援する雰囲気になってきている。三人ともトークが上手かったおかげだよね、これ。


「へべすと長年一緒にコラボしてきた私としては、本当に上手くいって欲しいんだよね。」

「本当だよねー。」

「うん、私もそう思うよ。」

「とりあえず昨日の配信によると今日あたりアタックしているみたいだから結果を待ちたいね。」

「個人的に連絡くれるんじゃない?」

「あー、もしかしたらね。でもきっと結果は配信で話すだろうからそれまで私はノーコメントになると思う。」

「たしかに!へべすもファンのこと大事にしてるから自分の口で説明したいよね。」

「配信があるなら私も見ようかな。」

「うん、みんなそれぞれで見てもいいかもね。おっと、ちょっと話が脱線しちゃったね。」

「美愛がのろけた結果だね!」

「ええっ!?瑠乃もけっこういうようになったね!」

「あっ、なんかデビュー前からやりとりさせてもらって、敬語禁止とかいわれていたからついいつもの調子になっちゃった!」

「いいことだよー。私たちくらいなら芸歴が長いとか短いとか誤差の範囲だもん。」

「本当だよね。」


 そこから時々コメントを拾いながら、いろいろな話を展開している。三人ともトークが本当に上手い。瑠乃さん、デビューしたばかりとは思えないんだけど。みんな大学の同級生で気心が知れているとはいえ、ちゃんと配信に乗せられるようなテイストでまとめられているし。すごいなあ。


「さて、そろそろ時間だね。何かお知らせのある人!」

「さすがに私はないので美愛あるかな?」

「ある!さっきMVを流してもらったけど、4thアルバムはおかげさまで発売から1か月、アルバムチャートのトップ10に入れていただけました!」

「1位は取れなかったけど、3位だもんね。」

「あの週はしょうがないよ。シャイニーズのアイドルが二組もアルバム出しているんだもん。そんな中で3位は本当にすごいと思う。」

「えへへー、なんか褒められると照れるなあ。」

「ほかにも告知あるんじゃない?」

「あっ、そうそう、いろはありがとう。あとはライブのチケット先行申し込みが絶賛実施中です!OSAKI WEB CLUB先行がちょうど今日から始まっているのでぜひ申し込んでください!」

「OSAKI WEB CLUBは大崎エージェンシーが去年の4月に開設したファン向け総合サイトだね。月額660円で有料会員登録した上で、『マイアーティスト登録』しておくといろいろな情報がメールで届いたり、アプリの通知機能でお知らせしたりしてくれるから20人の枠がまだ余っていたら、ぜひ私とか美愛とか瑠乃とかを登録してね!」


 太田さんによるとOSAKI WEB CLUBは想定より登録者数が伸び悩んでいるそうで、所属タレントの配信番組などでこうして広報してもらっているのだとか。月会費の合計金額から諸経費を差し引いた金額を「マイアーティスト登録」されている人数で按分して算出された報酬がもらえるだけでなく、ランク決定の一要素にもなっているので、タレントの側も宣伝を頼まれれば頑張って広報する人が多い。

 タレントのことを第一に考えてはいるけど、こういうところではちゃんと競争原理やバーターを取り入れていて、言い方は悪いけど、大崎って飴と鞭の使い方がすごくうまいと思う。


「じゃあそんなところで、今日は定期配信終わりにします!次回は今のところゲストなしの予定。実はこの前、ファイブトランチのアカウントを久しぶりに稼働させたので、ファイブトランチの実況をやります!いままでは自宅でVとしての実況配信だったけど、大崎のスタジオでリアル顔出しをしてやるファイブトランチがどんな感じになるかすごい楽しみ!それでは、また来週!みんな、またねー!」


 今回も面白かった!やっぱり彩春さんってすごいよなあ!

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