第217話●旅行の打ち合わせをしよう!
安比旅行は、最終的に未亜・彩春さん・朋夏さん・慧一・幸大・紗和さん・瑠乃さん・明貴子さん・志満さん・華菜恵さん・紅葉さん・俺でいくことになった。磨奈さんにも声を掛けてみたのだけど先約があるとのことですごく残念がっていた。まあ、今回が最初で最後の旅行という話ではないし、旅行に行く前に俺たちのもろもろも説明しないとダメだと思うからちょうど良かったのかもしれない。
長い春期休暇初日である今日2月1日は18時以降ならみんな予定が空いているということで旅行の打ち合わせと予約をしてしまおうということになった。12人もの人が一度に集まれる場所なんかないよねって思っていたのだけど、曲作りをしているTlackに朝一で朋夏さんがメッセージを入れてくる。
日向夏へべす 09:09
いいところ押さえたよ!事務所の会議室!
岡里いろは 09:09
えっ、そんなこと出来るの!?
日向夏へべす 09:09
沢辺さんに相談したら所属タレントの打ち合わせでもカバボクシから会議室借りられるっていうから見てみたら本当に借りられたの!
早緑美愛 09:10
志満は入れないよね?
日向夏へべす 09:10
沢辺さんから入館許可申請出してもらった!だから2M7を18時から20時まで押さえたよ。エレベーターからちょっと遠いから余裕で借りられた。
未亜は、午前中に情報番組のロケ、午後はバラエティ番組のスタジオ収録という流れなので事務所で合流することにしている。
瑠乃さんは最終審査合格の翌日から既に太田さんと一緒にあいさつまわりをしていて、あわせてそれぞれのテレビ局の入構手続き方法や内部構造、利用出来る施設なんかの説明も受けているのだとか。いよいよ瑠乃さんもデビューなんだなあ、それも楽しみ。
家で第5巻に向けての書籍化作業を進めていると弁護士さんから電話が入る。担当弁護士さんによると一連の事件の捜査がほぼ終わり、裁判のための手続きに入ったとのこと。今回の事件は、多人数に対する強制性交等致傷罪が含まれるため、裁判員裁判になる関係で、公判前整理手続というのに入るらしい。弁護士さん曰く、短いと4か月くらいだそうなのだが、今回奴らはなぜか全面的に争うらしく、いままでのこうした複雑な犯罪での実情を鑑みると下手すると裁判が始まるまでにいまから1年以上かかってしまうのでは、という話だった。また状況を共有して下さるとのことで、お礼を述べて電話を切る。
正直、これだけの罪状が完全に証拠のある状態で積み重なっているのに全面的に争おうと思う神経が理解出来ないのだが、裁判を受ける権利はどんな奴にも等しく保障されているので、検察の方にすべておまかせするしかないのだろう。
その後は順調に書籍化作業とせまじょの続きを執筆していく作業を一段落させたところで、自宅を出て事務所へ向かう。17時50分くらいに2階へ着くといつものことながら人がたくさんいる。会議室もほぼ埋まっているような感じなのに廊下が静かなのは会議室の防音がしっかりしているからなのだろう。
会議室2M7に入ると既に未亜と明貴子さんが到着していた。
「おはようございます。」
「いいタイミングだったね。私もいま来たところだよ。」
「そうそう、今日、『潜る潜る、深く潜る』っていう異世界恋愛小説の発売が発表されたんだけど、伊予國屋さんでのサイン会することになったよ!」
「おおっ!それはすごい!」
明貴子さんは本当に多作だよな。今日も同じKAKUKAWAから「隣の席に座る良太くんとは何も起こらないはずだったのに」って作品が書き下ろしで発売されているし。
「未亜のお父様から直接要望をもらってしまったのだけど、ちゃんと太田さんにも話を通してくれてね。それで検討の結果、KAKUKAWAさんも賛同してくれたんで、『潜る潜る、深く潜る』のサイン会になったんだ。」
「この前サイン会やったけど、前と違って、なんか居心地の良いスタイリッシュなボックスになっていたよ。」
「そうなんだ!私がサイン会行ったときはなんかごつい箱だったもんね。そういえばどれくらいの時間やるの?」
「えーと、100人で2時間って聞いている。」
「えっ!私のCDは1時間だったよ!?」
「俺もこれまで2回やって両方とも2時間100人だったからCDと本は違うみたいだな……。」
「そういえば、雨東さんのサイン会、列の最後尾近くだったけど、2時間くらい待たされた記憶がある!」
「でしょ?ちなみに最後の方はかなり疲れてきて、書いているサインの文字がゲシュタルト崩壊してくるから気をつけてね。」
「う、うん、がんばる!」
そんな話をしていたらいつの間にか人が集まりはじめていたようだ。18時になったところで、全員そろったので打ち合わせをはじめる。とりあえず最初に費用のことを話しておいた方がいいよな。
「まず、大事なことなんだけど、今回の旅行にかかる交通費と宿代とかは、俺と未亜の一件で朋夏さんが配信をしたときに集まったウルトラギフトから全部出すから安心して欲しい。」
「えっ!いいの?それは三人で使うべきなんじゃない?」
「明貴子さんの疑問はもっともだと思う。最初、その収益を受け取って欲しいって朋夏さんからいわれたんだけど、あの配信が騒動の解決にはたしてくれた貢献は計り知れなくてね。それを朋夏さんは俺たちと親友だからって収益度外視で事もなげにやってくれた。その行為で俺たちは十分なんだよ。」
「それでいらないっていわれたんだけど、私は私で二人の不幸でお金稼ぎをしたみたいになって嫌だったんだ。」
「そこが朋夏だよね。私が心意気に惚れ込んだ日向夏へべすだと思うよ。」
「三人で話し合った結果、その収益はみんなともっと仲良くなるために使おうっていうことにしたんだ。」
「そうなんだ……。」
「うん、だから宿代とか交通費とかは気にしないで欲しい。」
みんながとてもしんみりした空気になった……。このままだと話を進めづらいなあと思ったところで朋夏さんが一言。
「あ、おやつのバナナは自分で負担してね。」
この一言で緊張の糸が切れたみんなが同時に大爆笑!
本当に朋夏さんはすごい!本人もしてやったりっていう顔をしているから狙った一言だよね。全く!勝てないなー。
「もう!朋夏!」
「いやあ、だって大事なことだよ!」
「確かにそうだけどさあ!」
「じゃあ、おやつは300円まで?」
「大学生だからもうちょっと必要だよー。」
「じゃあ、3000円までとかかな?」
「むしろそれは多いよ!」
「でも上限だから。」
「じゃあ、そうしよう!」
そこから少し雑談が続いて、お土産とかも自腹と冗談半分で決まった。みんなもけっこうノリノリになったから空気が一掃されて良かったな。よし、みんなが楽しめる旅行になるようにいろいろと考えないといけないぞ。
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