第208話●もう一組のご紹介
「なんか緊張するな。」
「まあ、気持ちは判る。」
KAKUKAWAでの打ち合わせが終わって、一番最初に我々三人がお店に着いた。ちょっと早く着きすぎてしまって手持ち無沙汰なのと何も頼まないのは申し訳ないのとで、特盛りフレンチポテトを頼む。少ししてテーブルに置かれたポテトを摘まんでいると最初にやってきたのは志満さんだった。
「いやあ、もみー、やっと正体を明らかにしたんだね。黙ってるの大変だったよー。」
「しーちゃん、ごめんね。」
「志満さん、ディナーショーの楽屋でニヤニヤしていたのは二重の意味だったんだなあ。」
「うん、多分あそこにいた人で全員の本当の関係を知っているのは私だけだったからついついニヤニヤしちゃってね。」
「志満さん、紅葉の彼氏が俺だって、やっぱりちゃんと判っていたの?」
「もちろん!年明けにもみーの事務所へ行ったとき、嬉しそうに『告白されてお付き合いはじめた』っていいながら写真を見せてもらったからね。」
「やっぱりそうだったかあ。」
「ただ、ほら、いろいろあるから私が何かいっちゃいけないだろうと思って。それで両方ともに黙ってたんだ。」
「確かにそうだよね。それにしてもしーちゃん、こうちゃんと同級生だったとは思わなかったなあ。それに雨東先生に岡里さんまで知り合いだなんて、なんかすごいね。」
「まあ、偶然だよー。」
ほかにもいろいろいるけど、志満さんはさらに驚かせるつもりみたいだからだまってようかな。未亜が着いたみたいでRINEが来たので迎えに行くと華菜恵さんと一緒だった。店に入ろうとするとみんな続々とやってきて、最終的に都合が付かないと連絡のあった心菜ちゃんと百合以外は全員そろった感じだ。まず最初にあらためて全員名前を名乗るところからはじめた。
「えーと、みんなの自己紹介が終わったところで、最初に伝えたいのが、この前のディナーショーの時にみんなと会った朱石さんは、俺とは小学校中学校と同級生の幼なじみで、いまは彼女なんだ。」
「「「「「「「「おおっ!」」」」」」」」
あっ、みんな同時に驚いた。
「それで、本人に許可を取ったので伝えると雨東先生のコミカライズを担当している桜内碧は朱石さん。」
「「「「「「「「ええっ!」」」」」」」」
「実はそうなんです。ちなみにしーちゃん、あっ、棟居さんとは高校の同級生で、私のマンガをアシスタントとして手伝ってもらっています。」
「えっ、志満、もしかして。」
「うん、実はディナーショーの時、私は全員の関係を知っていたんだ。」
「「「「「「「「ええーっ!?」」」」」」」」
今日はみんなハモるなあ。
「幸大くん、そうしたら私たちも話しておいた方がいいかな?」
「彩春さんはもう判っているから、いってもいい人がいたら。」
「じゃあ、私からでいいかな!」
「明貴子さん、どうぞ。」
「あの、実は私こういうものでして……。」
「……えええっ!?あきちゃんが朱鷺野先生!?」
「実はそうなの!それで私、桜内先生の『赤い月と青い太陽』が大好きで。」
「知ってる!二巻が刊行されたときに朝売新聞の書評で取り上げてくれて、本当に嬉しかったんだよね!」
「あっ、さすがにあの書評、知っていたか、アハハ。」
「私は一般ぴーぽーだけど、桜内先生の『赤い月と青い太陽』大好きでサイン本もあるよ!」
「沼館さんまで!ありがとうございます!」
「華菜恵ちゃん、もみーの本持ってきて薦めてくれたもんね。」
「しまっちがアシスタントやってたなんて知らなかったんだもん!」
あっ、なんかこのやりとり懐かしい。
「華菜恵、大丈夫だよ、ここには私に早緑美愛のCDを貸してくれた人が二人もいるからね!」
「「あのときは知らなかったんだから!」」
あっ、朋夏さんとハモってしまった。
「えっ?西脇さん?」
「あっ、いま証拠が見せられないんですけど、この前はディナーショーにお越しいただき、ありがとうございました!早緑美愛です!」
「ええっ!?うそっ!?」
「えーと、俺の彼女ですっていえば証明になりますかね?」
「雨東先生が証明されるなら確実ですね……。」
「紅葉、サインペンとCD持ってきたよね?」
「うん……あっ!そういうことだったのか!サインペンはともかく、なんでさみあんのCDを持ってきた方がいいっていうのか判らなかったんだけど。すみません、あのサインしていただいてもいいでしょうか?」
「あっ!はい!」
未亜が慣れた感じで4枚のCDへサインをする。
「ありがとうございます……。うれしい……。」
そうつぶやくと朱石さんは泣き出してしまった。
「幸大くんの彼女さんだし、いい機会だから親しくしたいよね。」
「彩春さん、そういってくれると嬉しいなあ。」
「よし、幸大くん、RINEのグルチャに招待しておいて!」
「了解、朋夏さん。」
「……みなさん、ありがとうございます!」
朱石さんもだいぶ落ち着いたみたいだな。
「ちょっと待ってね……よし、完了。そうそう、朋夏さん、紅葉も大崎に所属しているから会社Tlackにも招待しておいてもらえるかな?」
「いいよー!」
「えっ、ともちゃんもタレントさんなの?」
「あっ、日向夏へべすっていうVTuberやってるんだ!」
「ええっ!最近いろんなところで見かける、あの日向夏さん!?」
「それじゃあ、その流れで。幸大とは大学入学した直後から親しくしてもらっている升谷慧一です。マスケイっていう歌い手やってます。」
「えっ!?マスケイさん!?こうちゃん、なんでこんなに有名人ばかりが友達なの!?異世界転生でもしてきたの!?」
「んなこと、あるかー!なんだろうな、判らん。多分みんなもなんでこんなことになっているのか判ってないな。」
「そうなのかー……。」
一人ずつ説明をしていくうちに紗和さんがこちらへやってきて俺と未亜に耳打ち。
「私の本名も伝えようと思うんだけど、そのときに過去の件、朱石さんに話してもいいかな?」
「うん、かまわないよ。」
「圭司が問題ないなら私は賛成。」
「ちょっと席が離れているから二人では話できないけど、大丈夫かな?」
「紗和さんに任せるよ。」
「ありがとう、じゃあ話しておくね。」
紗和さんから無事に話もちゃんと出来たみたい。幸大も知っているから変に秘密を残しておくのは良くないもんな。でも、この短時間で伝えようって思えるようになってきたんだなあ……。紗和さんもちゃんと前に進めているのが嬉しい。
その後も話が盛り上がり、すっかりみんな親しくなった。自然とそれぞれの呼び方で呼ぶ感じになったけど、未亜も嬉しそう。やっぱり未亜が抱えているものもだんだん薄くなってきているんだな。うん、それは俺も嬉しい!
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