第203話●大学再開初日はアニメオンエア初日

 大学は今日1月7日から再開になる。慧一と朋夏さんは今日から沢辺さんの車で大学へ通うことになっている。


 4日の夜、慧一と朋夏さんから志満さんと華菜恵さんもふくめたみんなへ問題の詳細と協力のお願いがあり、みんな快く手伝ってくれることになった。その上で、日向夏さんの担当マネージャである沢辺さんから大崎所属の親友たちにはTlackで、志満さんと華菜恵さんには電話で、それぞれ個別に大崎エージェンシーとしての依頼があったそうだ。

 ちなみに委託費みたいなものを乗せてくれる件、大崎の所属タレントではない志満さんと華菜恵さんについては大崎と個別に業務委託契約をして、報酬も出すということになったとか。二人は相当遠慮をしたみたいだけど、コンプライアンス上、責任の所在を業務委託契約という形で会社が持っていないと問題になる、上場企業としては契約を存在させるためにはそれに対する対価を支払う必要がある、ということで押し切られたようだ。大崎という会社がすごいのか、それとも五大事務所はみんなどこもこんな感じなのかは判らないけど、確かに責任の所在を個々人ではなく、大崎という会社で持つことを明確化するというのは、明文化された契約があれば確実だもんなあ。

 その翌日には、朋夏さんがみんなの時間割を教えてもらっていた。年末年始の期間で仲間内全員の時間割を朋夏さんが整理をしたところ、語学以外は誰かしら二人と一緒なことが判った。朋夏さんがまとめてくれた一覧表を元に昨日の夜にこれからどうしていくかがグルチャで話し合われた。

 受ける授業の時間帯がバラバラなこともあって、一緒に行く人と一緒に帰ってくる人を彩春さんの方で決めてくれた。このマンションには住んでいないメンバーも二人とそれぞれ同じ授業を受けているコマがあるので、そこで協力してもらうことになっている。語学については空きコマになっている人が誰かしらいるのでその人と移動する、ということになった。

 一緒に行く人は沢辺さんからの到着メッセージをもらってから、18階のエレベーターホールで待ち合わせをして、地下までそのままみんなで降りる、という流れ。今日は、慧一、朋夏さん、彩春さん、瑠乃さん、明貴子さんで大学へ向かった。


 そして、2限は、マーケティングデータ分析入門なので全員そろっている。授業も終わり、いつもの6号館地下。正月明け初日のせいか見事にガラガラで誰もいない……。


「さみあんの紅白すごかった……。号泣しちゃった……。」

「早緑様すごかった……。」

「さみあんに泣かされた……。」


 もちろん、明貴子さん、朋夏さん、志満さんだ。志満さんの表現はどうかと思うものの未亜は相変わらず照れくさそうにしている。


「朱鷺野先生原作の新春ドラマスペシャルすごかった……。」


 これはもちろん華菜恵さん。今度は明貴子さんが照れくさそうにしている。


「日向夏さんといろはさんの新春スペシャル配信良かった……。」

「あれは本当に良かった……。」

「さすがの日向夏さんと彩春だった!」


 そして慧一と幸大、明貴子さんが朋夏さんと彩春さんを照れさせる。


「な、なんだ。これは!」

「きっかけ作ったのは朋夏だからね。」


 未亜があきれたように朋夏さんへ指摘する。


「でも負けない!」

「ともっちはなにと戦ってるの!?」


 謎の感想戦も一段落したところで、志満さんが幸大に話しかける。


「そういえば、幸大くん、年末はありがとうね。」

「いやいや、こちらこそ。助かったよ。」

「なにかあったの?」

「いつもファジケで売り子をお願いしている高校の時の同級生が急遽実家に帰らなきゃいけなくなって、一人でやらなきゃいけなくなっちゃってね。」

「うちのサークルもいつも売り子をしてくれている人がコロナで寝込んじゃってファジケに来られなくなっちゃってさ。俺の方は初日の29日で、志満さんは30日だったからお互いに売り子で手伝うことにしたんだ。」

「いやあ、壁サーの売り子は激しいね。ちゃんと出来たか判らないけど。」

「すごかったよ。志満さんの列が最速で捌けていたからね。」

「あんな部数の段ボールはじめてみたけど、合同サークル2スペース6列が14時で頒布終了ってやっぱりすごいよね。」

「いつの間にかそんなことになっちゃったんだよなあ。」

「島中のまったり具合もなかなか良かったでしょ。」

「同じ即売会とは思えないよね。うちはTixivで告知出したら一回目から島中なのにいきなり大行列が出来て、二回目からシャッター前になっちゃったからなあ。」

「へー、そんなに違うもんなんだね。」

「驚くくらいちがうよ。彩春さんも声優として売れてくると企業ブースの方で売り子する機会が出てくるかもね。」

「そうか!確かにそれはあるね!」

「私はファジケには、アニメ化した小説の原作者っていうことで招待されて、何度か見に行ったことがあるんだけど、企業も行列が半端ないよね。」

「そういえば、去年のファジケにKAKUKAWAが出したブースでせまじょのファジケ限定グッズが完売したっていってたなあ。」

「朋夏は買ったの?」

「せまじょのグッズは種類がすごい多いからさすがに全部は無理だなあ。贈呈受けてるの?」

「いや、置く場所がなくなるから遠慮してる。」

「せまじょといえば、今日からせまじょのアニメだね。」

「録画予約は済ませたよ!」

「私も見るよ!実は原作読んでないんだけど……。」

「華菜恵さん、今度うちにある本を貸そうか?」

「えっ!?いいの!?」

「うん、いいよ。読んでみて面白かったら買ってね。」

「もちろん!」

「深夜じゃなかったらみんなで見たいんだけどねえ。」

「でも、今日は何かやるんじゃなかったっけ?」

「うん、リアルタイム鑑賞会だよ!配信では流せないからみんなでBSを見ながら実況形式で鑑賞会するんだ!」

「それはありがたいなあ……。」

「最終回はちょっといろいろと考えているんだけど内緒。」

「朋夏ちゃん、明かせるようになったら教えてね。」

「わかった!」


 最強の支援だよね。本当にありがたい。可能そうなら配信見てみるかな。


「ところで未亜、その指輪はもしかしてー?」

「あっ!うん……。」

「圭司くん奮発したねー!」

「あっちとは違うんだね。」

「ふたつもらったから……。」

「すごい!さすが!」


 なんかみんなの反応が!


「同性から見てもちゃんとしている圭司はかっこいいと思うよ。」

「そうかな?」

「俺もそう思う。」

「まあ、しっかりけじめは付けておきたいからな。」

「それがなかなか出来ないんだよ。尊敬するし、見習いたいな。うちはまだこれからだけど。」

「慧一もそういうタイミングが来たら普通に頑張れると思うけど。」

「そうありたいな。」


 未亜は女性陣からまだ冷やかされているみたいだ。気兼ねなく普通に接してくれる親友たち。本当に嬉しいよな。

 授業のあと、未亜は文明放送での生放送前に自主レッスンをするということで事務所へ向かった。俺の方はKAKUKAWAへいって、サイン本へひたすらサインし続けた……。毎回、これは本当に大変な作業だけど、応援してくれる読者のために頑張ったよ!ノルマの冊数がすごすぎて、結局今日は未亜の方が早く終わって晩ご飯を作ってくれた。たまに逆転するのもいいよね。本当に嬉しい。

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