第141話●日向夏へべす公式チャンネル「早緑様が遊びに来たよ!」生配信後半戦

 いつもの大学で話しているようなノリっぽいけど、ちゃんと外向けの配信に乗せられるテイストにしているのは二人ともすごい。そして、日向夏さんのテンションの高さとコメントを読み上げる動体視力に驚いていたら自分の話が出てきた。


「そうそう、今日は雨東先生にも来ていただいてるんだ!雨東先生とは早緑様経由で知り合ってね。持っている本にサインももらってしまったよ!えっ、私利私欲の塊だよ!悪いか!あっ、ウルギフありがとう!」


 ウルトラギフトが投げられると額が多いものだけお礼を言う。少ないのを差別して読み上げないのではなく、そもそも少額はかなりたくさん流れてくるのでいちいちお礼を言えないのだ。さすがVtuberトップクラスだ……。


「雨東先生は声出しできないからいるかどうか証明できないけどね。さてさて、今日も相変わらず何も考えずに進める雑談枠だけど、早緑様に聞いてみたいことある?」


 おおっ、ネタをリスナーに投げるのか!?うわ、スマホで見ていても判るくらいの怒濤のコメント!


「へべすの歌ってみたどう?だって。」

「上手い!びっくり!」

「私の歌ってみた、早緑様のお墨付きだよ!」

「渋谷バラードとかへべすの方が上手いんじゃないの?」

「いや、そこまでではないよ!?」

「へべすとカラオケ行ってみたいかも。」

「まあなかなか機会ないもんね。」


 カラオケは面白そうだなあ。


「つむぎも混ぜて三人で配信してくれってコメが。」

「つむぎ……あっ、いろはか。」

「そうか、早緑様にとっては声優岡里いろはだもんね。」

「そうなんだよねー。昔のいろはってよく知らないからさ。いろはがVTuber時代の配信のアーカイブ見てみようかなっていったら『それはどうか何卒やめて下さい』っていわれちゃって。」

「いまよりも何倍もはっちゃけてるからね。そうだ、今度一緒に見ようか!」

「うん!そのとき、良かったら一緒にへべすのアーカイブも見てみようよ!」

「それはどうか何卒やめて下さい。」

「まさかのいろはと同じセリフ!」

「いや、だって早緑様に過去の配信見られるの恥ずかしいもん!」


 そんな感じで雑談配信が続いていく。雑談配信って本当に雑談しかしないんだなあ、ってあたり前か。


「早緑様から見たへべすの印象?どう?」

「そうだなあ。すごい人?」

「すごい人だって!いや、疑問形なのはきっと愛だよ。」

「えー、なんかいろいろな意味ですごいなあって。」

「例えば?」

「リムジンに初めて乗せてもらった!」

「乗ったね!いや、コメント、ちょっと待って。さらってないよ?なんなら、雨東先生もいたからね?」

「雨東さんが向こうで頷いています。」


 俺の実況まで!?


「もう発表されてるけど、今度朗読劇やるでしょ。それの打ち合わせをするときにね。」

「リムジンだとみんなで向かい合わせになって話が出来るからね。」

「もうそれだけの理由であんなすごいの借りちゃうのがびっくり。」

「雨東先生?そんな大きく頷かなくてもいいんですよ!?」


 頷いていたらまた実況された!


「早緑様は雨東先生とどこで知り合ったの、っていう質問が。」

「前にインタビューで答えたけど、大学の同級生だよ。」

「どこの大学?だって。」

「それはトップシークレットだね。」

「あとで私にだけこっそりね。」

「どこにも流さないならいいよ!」

「雨東先生が驚いた顔をしています。」

「まあ、親友には教えてもいいよね。」

「先生もうなずいてくれているので、あとでこっそり聞き出すとしましょう。」


 あなたも同じ大学なんだからNGも何もないじゃない、全く。知らないとはいわずにさも知らないかのような表現にするのが上手いなあ。


「雨東先生の作品はどんなところが好き?って。」

「女性でも読みやすいファンタジーものだよね。」

「それはあるね。」

「ヒロインがかわいい。」

「聖女オリーブ、かわいい。私も好き。」

「雨東先生の女性キャラクタはみんなすごく女性が好みそうな感じになっているのがすごい。」

「それはいえるね。雨東先生、実は女の人とかかもしれない!」

「へべす!それは考えなかったけど、もしかしたら!」

「先生にはバ美肉してもらおう。」

「バ美肉って?」

「バーチャル美少女受肉っていってね。男性が女性のアバターを使ってVTuberデビューすること。」

「それは会心のアイデアだね!」

「ボイチェン使えば地声もわかりにくくなるから女の子になった先生にも私の配信に出てもらえる!」

「雨東さんが悲しそうな顔をしています。」

「雨東先生の実況してくれってコメあるけど!」

「あー、雨東さん、ものすごい首を横に振っているなあ。」

「本人がいやみたいなので却下で。」


 あたりまえだって!結局、最後まで雑談が続いて、1時間になった。雑談枠って本当に雑談しかしないんだね!?


「おっと、もう1時間だね。それでは、ゲストの」

「早緑美愛と」

「日向夏へべすやった!みんな」

「「さじーなら!」」


 配信は無事?に終わった。


「はい、配信切れました。お疲れ様でした!」

「お疲れ様!」

「じゃあ部屋出ようか。」

「片付けとかしなくていい?」

「うん、大丈夫だよ。」


 配信部屋を出てリビングに戻る。


「せっかくだから一緒にご飯食べよう。」

「おおっ!声色が戻っているね!」

「もう慣れたんであの声でずっとしゃべることも出来るけど、まあやっぱり地声の方が楽だからね。ちょっと着替えてきちゃうね。未亜はどうする?」

「私も着替えて来ちゃうかな。」

「そうしたら圭司くんはそこに座って待ってる?」

「ありがとう。待たせてもらうね。」


 寝室の方へ向かった日向夏さん、もとい、朋夏さんが少しして戻ってくる。未亜もしばらくしてから戻ってきた。


「おまたせー!」


 すっかり通常モードで、いつものかわいい未亜になった。さみあんモードもいいけど、やっぱりこれだよね。


「ご飯はこれから作るの?」

「いや、多分届くと思う。」

「あっ、出前か。」


 ピンポーン


「ちょっと待ってね。」


 出前かと思ったら違うのかな?


「みんなお疲れ!」


 あっ、彩春さんと紗和さんだ!手に重箱を持っている。


「三人ともお疲れ様。みんなでご飯食べよう!」

「二人でおかずを作って持ってきたよ。」

「ちなみにご飯はあらかじめ炊いてあるよ!」


 五人で美味しくご飯を食べた。なんかやっぱりこういう関係いいよなあ。ほんと、大事にしていきたい。

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