第004話○まさかこんなに早く

「好きです。俺と付き合ってください。」


 高倉さんの雰囲気が急に変わったから、なんとなく告白されるかな、とは思っていたけど。思っていたけど!いざされてみると心の底から熱いものがこみ上げてきて全然言葉が出なくなってしまう。ああ、だめだ、嬉しすぎて涙が出ちゃう!


「……グスッ。」

「えっ!?あっ、西脇さん!?」


 心配そうにする彼の眼をしっかりと見て一回頷く。大丈夫、あとは返事をするだけなんだから。頑張れ、ちゃんとOKだって返事をするんだ。


「……えへへ、嬉しくて泣いちゃった……。私も高倉さんのことが好きです。こちらこそよろしくお願いします。」


 そのまま、高倉さんに抱きついちゃえ!


「嬉しい!本当に嬉しい!こんな私に告白してくれてありがとう!」

「こちらこそ、こんな俺にOKしてくれてありがとう。」

「えへへー。嬉しいなあ……。ねえ、恋人同士になれたんだし、名前で呼んでもいいかな?」

「えっ!?……う、うん、わかった!」

「圭司!大好きだよ!」

「俺も未亜のことが大好きだよ!」

「……ねえ……手、つなご?」


 圭司が手を出してくれる。その手に指を絡めて、頭を軽く彼の肩に乗せる。海がとてもきれい。


「未亜のことは絶対に傷つけない。」

「ありがとう。私も圭司のこと大切にする。」


 そういってから圭司の方を向くと圭司が素敵な笑顔で見つめてくれる。しばらく見つめあってから、目を閉じてそっと顔を近づける。圭司の唇と私の唇が重なる。しばらく重ねて、そっと離れる。


「ファーストキス、嬉しいな。えへへ……。」


 海を眺めてはたまに圭司の頬へキスをしてしまう。私ってこんなに大胆だったかな?自分でも驚くくらい積極的になっている!


 ずっとこうしていたいけど、そろそろ帰る時間になっちゃった。一人暮らしだったらまだまだ一緒にいられるのになあ。


「そうだ、未亜は連休中忙しい?」

「あー、うん……。明日からはちょっと忙しいんだよね……。本当は一緒に過ごしたいんだけど……。」

「元々予定があったなら仕方ないよ。じゃあ、毎日RINEで話をしよう。」

「そだねー!しばらく会えないけど、お互い頑張ろうね!」


 二人で桜木町の駅まで歩いて行って帰る。圭司は最寄り駅まで送ってくるといってくれたけど、帰りたくなくなっちゃうから遠慮した。それにしてもこんなに早く彼氏ができるとは思わなかったなあ。


 電車を乗り継ぎ、バスに乗り換えて、家に帰ると両親が揃っていた。


「未亜ちゃん、おかえり、デートはどうだったの?」


 帰宅するなり、いきなりお母さんに聴かれた!


「うん、告白された!」

「そうか、おめでとう。今度、彼を連れてきなさい。」


 お父さん!?それはいきなりすぎませんか!?


「あなた、いきなりね。」

「浮いた話が全くなかった未亜に彼氏が出来たんだぞ。興味ないのか?」

「いやあ、お父さん、さすがに付き合い始めでいきなり両親に会ってっていうのは重いかなあ、と。あはは……。」

「そうね。こういうのは本人同士の関係もあるから。ゆっくりでいいわよ。」

「そうか。早く未亜の彼氏と話をしてみたかったんだがなあ。」

「お父さんがそんなに乗り気な家庭うちって珍しいと思うよ!?」

「未亜ちゃん、お風呂入ってきなさいね。」

「はーい、お風呂入ってきまーす。」


 お風呂から出て部屋でのんびりしていると圭司からRINEが飛んできた。


{いま話せる?]


 返事をする前にこちらから掛けちゃえ!


『もしもーし!』

『いきなりびっくりした!』

『へへー、だって、そんなメッセージ送られたらすぐ話したくなっちゃうじゃん。』

『そうだな。うん。』

『どうしたの?』

『いや、なんかあらためて付き合い始めたんだなって実感してたとこ。』

『そだよー、圭司と私はもう恋人だからねー!』

『高校時代は女性に全然興味もてなかったんだけど出会ってから3週間で告白までしちゃうなんて、我ながらびっくりしたよ。』

『それは私も同じ。高校の頃なんか地味子だったからね。』

『そうなの!?その頃の未亜、見てみたいな。』

『幻滅しないならスマホに入れてある写真見せるよ!かわりに圭司の高校ん時の写真も見せてね。』

『それはいわれると思ったよ。もちろんちゃんと見せるよ。』


 なんでもない通話だけど、心があたたかくなる。彼氏が出来るって、こういうことなんだなあ。とても名残惜しかったけど、明日は朝が早いので日付が変わったくらいで通話を終える。よし、明日からいろいろと忙しいけど頑張るぞ!

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