第42話 ヤーゴクック討伐


 マキナ達は次にヤーゴクックに狙いを定めた。

 鳥型のモンスターだが翼は有しておらず、2本の発達した脚で駆けるのが特徴だ。

 見通しの良い平原へ出ると、早速その姿を見る事が出来た。


「巨大な鶏冠とさかに長い首、三日月の様なくちばし。図鑑の姿と同じだ、間違いない」


 ヤーゴクックが20体以上の群れで大地を蹴る音が響き渡る。


 とにかくスピードが速いのが特徴的だが、直線的で急な方向転換が出来ないため、動きを見極めればさほど対処は難しくない。


 キュロロロッ!!

 ヤーゴクックの一体がマキナ達を視界に捉えると、甲高い鳴き声を上げた。

 すると群れの残りが一斉に首をぐるんとマキナ達に向け、一目散に突き進む。


「わああ、こっち来るよ!?」


「みんな、合図したら俺から離れてくれ」


「どうするつもりよ?」


「まずは数を大きく減らす」


「どうやらこの状況に適した武器があるようだな」


「その通りだ」


 マキナはヤーゴクックの群れを引きつける、そして。


「――今だ!!」


 3人は合図と共にマキナから一目散に離れる。


 キュロロロ!!!!!!

 ヤーゴクックの群れがマキナに迫る。

 マキナはスキルを発動させ、武器を装備した。


 ――炎岩砲バハムート。

 くじらの怪物の頭を模した砲身を持つ、大砲型の武器だ。

 それは右腕の下部に装備され、左手で砲身部のグリップを握る。

 マキナは照準を合わせ、引き金を引く。


「砲撃!!」

 

 砲弾が巨竜の炎の如く撃ち出され、ヤーゴクックの群れに炸裂すると同時に爆発する。

 群れは凄まじい爆炎と煙に包まれていく。


 キュロロロ!?!?

 その煙の中から直撃を免れた数体のヤーゴクックが、おぼつかない足取りのまま姿を現す。


「よし、残りを頼む」


「なるほど、そーゆーことね」


「これで多勢を相手取る必要は無くなるということか」


「まっかせて〜!!」


 バハムートは砲弾が炸裂した地点から最大半径50メートルまでが攻撃範囲となる。今のヤーゴクックの群れの様な集団相手を一網打尽に出来るのだ。

 3人は残りのヤーゴクックを討伐、無事に2つ目のクエストを成功させた。


 そして、残るクエストは1つ。


「後はフォレストホーンだけだな」


 4人は草原エリア奥の森に向かっていた。

 フォレストホーンは大きな2本角を持つ4足歩行のモンスターであり、その名の示す通り森に生息している。


 普段は大人しいが、刺激を与え過ぎると額から新たに角が生え、3本の角で暴れ回る。

 その姿は激昂状態と言われ討伐ランクが2段階上がってしまう、いわゆるランク変動種と言われるモンスターだ。

 

「暴れる前に急所を狙って確実に仕留めないとな」


 マキナはフォレストホーンの姿の特徴を確認し、図鑑を閉じる。


「そういえばさ、楽園竜アイランド・ドラゴンって今この瞬間も歩いてるんだよね? 振動とか一切感じないけど何でだろ??」


「歩行の揺れと衝撃に対して、背中の甲羅自体がそれを和らげる様に躍動している為らしい」 


「へぇ〜ベローネさん物知り!」


「ふふふ、もっと褒めてもいいぞ」


 ベローネがドヤ顔を浮かべる。

 すると、マキナ達の目の前に甲冑姿の男達が姿を現した。


「ややっ! 貴方達は『虹の蝶』の皆様!」


 男達はマキナ達を目にするや否や、礼儀正しく敬礼をした。


「特にマキナ殿、お会い出来て光栄でございます!」


「……俺にですか?」


「はい! 屋敷内はマキナ殿が我らアスガルド家騎士団団長を撃破したという話で持ちきりなのですから! きっと何処からか街にも話が広まるでしょう!!」


「あ、あはは、どうも」


 マキナの脳裏に白目を剥いたベルフェムトの姿が浮かび上がる。


「流石マー兄だね〜このこの〜」


 アリアが肘でマキナの腕をぐいぐい押す。


「ところで、騎士団の皆様は定時見回りをされていたのですか?」


「それが、送迎用のワイバーンが帰還する際にこの探索エリアに迷い込んでしまったのです」


「ワイバーン、ですか」


「はい、少しずつ高度が下がっていくのを確認したので草原エリアにいるのは間違いないのですが……」


「なるほど、もしや……」


 ベローネは顎に手を乗せる。


「アタシ達の時の足りなかったワイバーンが戻って来たんじゃない?」


「……どういうことでしょうか?」


「手紙に記されていたワイバーンの数と、実際に来た数が1頭足りなかったんです」


「そ、それは大変失礼致しました!! この場を借りてお詫び申し上げます!!」


 騎士団員は一斉に頭を下げる。


「いいんですよ、こうして楽園竜アイランド・ドラゴンに来れたんですから」


「きっと来る途中で迷っちゃってあえなく戻って来たって感じかな?」


 アリアは首を傾げながら言った。


「もしそのワイバーンと遭遇したら知らせますね」

 

「まさかご協力までして頂けるとは……ありがとうございます!」


 騎士団員達と別れたマキナ達は、再び森に向かって歩き出した。

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