第41話 いざ、草原エリアへ!


 マキナ達はアスガルド家の屋敷を後にし、とりあえず用意された宿屋へと向かう。

 最上級のスイートルームだけあって4人で過ごすには充分すぎるほどの広さと設備、窓からは大きな街を一望できた。


「わぁー綺麗!!」


「アタシらにはもったいないって思っちゃうわ」


 アリアとステラは外の景色を見て思わず口を開く。


「せっかく俺達の為に用意してくれたんだ、ありがたく使わせて貰おう」


 とはいえマキナ自身、シャンデリアがあるような豪華な部屋で過ごしたことはないため少し緊張していた。


「日没までまだ時間がある。マキナ、この後はどうする?」


「そうだな……少し休んだら探索エリアでも行ってみないか?」


「賛成〜!」


「いいわよ」


「今日のところは草原エリアだけにして、地下水脈、鉱山エリアは後日に回そう」


 マキナ達4人は宿を出発した。

 試験会場だったギルドが居住区エリアと探索エリアの境目となっており、そこを抜けると、辺り一面に緑が広がる。


 探索エリアの1つ目、草原エリアだ。


「見て見てマー兄、何あのモンスター!?」


 アリアはマキナの腕をぐいぐい引っ張りながら指を指す。


「凄い、全部見たことないや!」


「大陸の20%のモンスターがこの楽園竜アイランド・ドラゴンでしか生息してないって言われてるらしいぞ」


 マキナは小さな冊子を開く。


「マキナ、それさっき露店で買ってた奴?」


「ああ、楽園竜アイランド・ドラゴンのモンスター全てが載っている図鑑だ。もう失敗はしたくないからな」


「グラルコンガの件ね、あれは凄惨な出来事だったわ」


「今受注した討伐クエストのモンスターの姿も分からないしな」


 楽園竜アイランド・ドラゴンのギルドは他とは違い所属する事が出来ない。その代わりフリー問わず全ての冒険者がクエストを受けられる。

 いわばクエスト斡旋専門のギルドなのだ。


 今回マキナ達が受けたクエストは、


 ・ホワイトウルフの討伐。

 ・ヤーゴクックの討伐

 ・フォレストホーンの討伐。


 この3つ、最初に遭遇したのはホワイトウルフだ。


 「いたぞ、10体いる」


 マキナは図鑑と照らし合わせ、目標を確認。

 狼の姿をしたモンスターの中では大型の部類に入り、黒いハウンドウルフと違って白い体毛が特徴だ。


 ウオオーン!

 ホワイトウルフは口を開き、その大きな牙を光らせた。


 4人は即座に散り、それぞれが武器を構える。


「任せて!」


 まずはアリアが先行。

 目の前のホワイトウルフ6体に対し、オルトロスによる攻撃を仕掛ける。


 使い始めの頃よりも技の練度が上がっており、的確に急所を見極めていた。

 疾風の如き速さであっという間に退け、残りは4体。

 その内の2体が前後からステラに襲いかかる。


 「やるわねアリア、アタシだって負けない!」


 ステラはリンドヴルムを頭上で振り回す。

 長いリーチを持つ槍の特性を生かし、ホワイトウルフの同時攻撃を防ぎつつ2体を倒した。


 最後は2体。

 マキナはイフリート、ベローネはストームブリンガーを構えながら背中合わせになる。


「なぁマキナ、突然で悪いがイフリートを貸してくれないだろうか?」


「本当に突然だな」


「私も剣士の端くれだ、前からその剣の使い心地が気になって仕方がなかったんだ」


「そういうことなら喜んで貸すぞ」


 2匹のホワイトウルフが飛び掛かる。


 ウオオーンッ!!

 2人は背を合わせたままお互いに武器を投げ渡した。


 マキナはストームブリンガーの黒き剣身を怪しく輝かせ、ベローネはイフリートの赤き剣身を燃え上がらせる。


「恩に着る、マキナ!」


 そしてマキナとベローネはそれぞれの剣による一撃でホワイトウルフを討伐した。


「いえーい、まずは1つ目!」


 アリアはオルトロスを両腰の鞘に仕舞うと、元気よくピースをした。


「他愛もないわね」


 ステラの方も、表情を見るにまだまだ余裕そうだった。


「2人とも良かったぞ」


「えへへ、そうでしょ〜」


「ま、当然よね! もっと歯応えがあってもいいくらいよ」


 マキナの言葉に対し、2人は笑顔で応えた。


「マキナ、数ある君の魔導武器の中でもイフリートは特に凄いな」


「使い心地は悪くなかったみたいだな」


「ああ、だが炎剣はやはり君が使った方が似合うな」


 ベローネとマキナはお互いに武器を返却する。


「また使いたくなったら遠慮なく言ってくれ、他の魔導武器でもいいぞ」


「そういえばマー兄って基本的に使う武器はイフリートが多いよね、何か理由でもあるの?」


 アリアがきょとんとした顔を浮かべた。


「俺が初めて作った魔導武器だからな。何だかんだ愛着があるんだ」


 最初はマキナの鍛冶スキルでも魔導武器は簡単に作ることは出来なかった。

 度重なる試作品を作り続け、ようやく完成したのがこの炎魔剣イフリートだったのだ。

 『白銀の翼』のリーダーであるジュダルの為の武器ではあったが、イフリートに注がれた愛情と手間隙はどんな武器よりも大きかった。


「ふぅん、そうなんだ」


「まさか1番最初の武器とは思わなかったわ」


「ちなみにステラのリンドヴルムは7番目の武器だ」


「え、そうなの?」


「アリアとベローネの武器と違って、唯一俺が使ってた武器だからな」


「……ふぅん」


「もし嫌だったら新しいの作ろうか?」


「これがいい!」


 ステラはリンドヴルムを庇うように背中の鞘に仕舞った。


「あとオルトロスは105番目、ストームブリンガーは110番目だ」


「ひゃ、ひゃく!?」


 予想もしてない数に、アリアは思わず叫ぶのだった。

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