「雑魚には鍛冶がお似合いだwww」と言われた鍛冶レベル9999の俺、追放されたので冒険者に転職する〜最強武器で無双しながらギルドで楽しく暮らします〜
第28話 その頃『白銀の翼』は(8)(追放者side)
第28話 その頃『白銀の翼』は(8)(追放者side)
「くそぅ、畜生、なんなんだよ……!」
あれからジュダルは街近辺の武器屋をしらみ潰しに当たったが、全て門前払いにあっていた。
『白銀の翼』がサルマ武具店で起こした騒ぎの件が、武器屋ヘルメス以外のお店にも共有されていたのだ。
「これじゃあ何も倒せねぇじゃねぇかよぉぉ」
街の時計台前広場をトボトボと歩く。
一応、ダンジョンでのドロップアイテムで武器を手に入れるという方法もある。
しかし今の戦闘力0のジュダルではダンジョン攻略は不可能、そのためお店で購入するのが唯一の方法だった。
「採取クエストでも流してもらうか? いや場所によってはモンスターとの戦闘は避けらんねぇしな……ん?」
ジュダルは露店前で販売中の新聞の見出しが目に入る。
――「闇ギルド『影の悪魔』壊滅!」――
「!?」
慌てて新聞を取り、喰い入るように内容を読む。
「迷いの森を拠点として活動していた『影の悪魔』、その漆黒の闇を払ったのは七色を持つ蝶の
ジュダルは新聞をグシャグシャにし、地面に叩きつける。
「クソッ! クソッ! クソッ!」
そして感情のままに踏みつけた。
『虹の蝶』だと、あんな歴史の浅いポッと出のギルド如きが潰したってゆうのかよ!?
そんなジュダルのすぐ側を、
「今日もクエスト達成だな!」
「ランドベアの時の魔法アシスト凄く良かったぞ、遅くまで練習してたのってあれのことか?」
「ま、どうかしらね〜」
「今の私達なら1ランク上のクエストでもいけるかもね!」
「よし、ギルドに戻ったら作戦会議だ!」
全員の胸に光る、七色の蝶の紋章。
「虹の……蝶!!」
ジュダルの歯軋りがギリギリと響く。
思えば、最近街中で『虹の蝶』の団員を見る頻度が増えた気がした。
一人一人覚えているわけではないが「何度も見た顔」とならないため、それだけ人数が多いということだろう。
自分の達成する予定のクエストを横取りした憎き集団『虹の蝶』。彼にとって、優雅に舞う蝶は害虫と何も変わらなかった。
「調子に乗りやがって……! 俺にも武器がありゃあ!!」
しかし、どんなに感情的になっても事態は変わらない。『虹の蝶』を見返すにしても、これからの生活の為にも武器は必ずいる。
「それもガラクタじゃダメだ、壊れない武器じゃねぇとな」
その場で少し考える。
そしてすぐに一つの案を思いつくと、不気味な笑みを浮かべた。
「簡単じゃねぇか、実際に今使われてる武器を奪えばいい……」
ジュダルの考えはこうだ。
現在進行形で使用されている武器ならば、耐久性は保証されたようなもの、壊れる心配はない。
今の彼には、窃盗など些細なことにしか思っていなかった。
「やるなら1人でいる奴だな、お?」
遠くから歩いてくる1人の女冒険者がジュダルの視界に入る。
金髪をポニーテールで綺麗に纏めており、竜の意匠が施された槍を装備、そして胸には『虹の蝶』の紋章。
あの女『虹の蝶』の団員か、中々良さそうな武器を持ってやがる。
おまけに……結構な上玉じゃねぇか。
「あんなに肌を晒してんじゃ、襲ってくださいって言ってるようなもんだぜ」
ハーフパンツから伸びた健康的な太腿を下品な目付きで見つめ、舌舐めずりをするジュダル。
彼のお金の使い道は基本的に酒と女だ。
しかし、立て続けのクエスト失敗で武器分のお金しか持ち合わせていなかった。
そのため通っていた娼館にもここ数日行く余裕が無かったのだ。
「ずいぶんご無沙汰してたからな、良い思いもさせてもらうとするか……!」
そしてジュダルは広場を後にする槍使い、ステラを見失わないように追うのだった。
◇
ステラはそのまま街の路地裏へと入っていった。
――おいおいおい、まさかまさかの路地裏かよ!
バレちゃまずいことをする絶好の場所じゃねぇかよ!
ニヤニヤが止まらないジュダル。
自分の計画が上手くいきやすい状況に向かっていく。
そして後を追うように路地裏に入り、背中を捉える。彼女との距離は数十メートルほどだ。
へへ、見れば見るほどいい体してんな、ゆっくり楽しんでやるよ。
そのまま少し歩き、大通りからなるべく離れたのを確認すると、ジュダルは背後から仕掛ける。
「その武器貰ったぁぁぁ!!!!」
しかし、
ステラはすぐにこちらを向くと、槍の石突きを思い切りジュダルの身体に振り下ろす。
バチィンッ!!
「――ぶべええええええ!?!?」
そしてジュダルを地面に強く叩きつけた。
「アンタね、さっきからアタシを付けてたのは!!」
「ぐごおおおお!?」
「まさか気付いてないとでも思ったの? それと今、アタシの武器を貰うとか言ったわよね?」
予想外の一撃の重さに呼吸がままならない。
「お生憎様、この槍は私の大切な人から貰った大事な物なの。本当はアンタを退けることなんかに使いたくないくらいなの、軽々しく触れようとしないで!!」
「こ、このアマ……言わせておけば!」
「……はぁ、やっぱり女子1人で街歩いてるとロクなことがないわ。この前でアリアも絡まれたって言ってたし、勇気出してアイツでも誘ってみるかな?」
うずくまったジュダルの横を通り過ぎ、ステラは元の大通りへと向かう。
畜生畜生畜生!!
こんな無様な姿は俺らしくねぇ!!
女冒険者に不意打ちをかけた挙げ句、敗北。
それは武闘派ギルドのリーダーだったジュダルのプライドをズタズタにするのに充分だった。
どん底の最中、ジュダルにとある策が浮かんだ。
いや、これまでも何度も頭にはちらついていたが、出来るだけ避けたかったのだ。
「アイツだ。アイツの武器なら、唯一壊れなかった……」
その人物は、
自分が追い出した『白銀の翼』切っての天才鍛冶師。
「マキナを連れ戻す……それしかねぇ!」
朦朧とする意識の中、ジュダルは決意するのだった。
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